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Interlude

Interlude<XXXI>

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「そういうことだったんだ?♡♡ ……言われてみれば、フロランタンってなんかかわいいかも♡」

「かわいいよね♡ 他のお菓子もかわいいから、目でも楽しんでよ……って、きみが好きなのだけ集めたから、わざわざ見なくてもわかってるか! うっかりしてた!」

 そうっとお皿をテーブルの戻すところを見守っていて思った。フロランタンもお皿もかわいいけれど、彼のかわいさには遠く及ばないと。

「他の人とお茶したり話したりするのって、こんなに楽しくて平和なことだったんだねぇ」

 連日のように見る悪夢のせいで、現実であるはずのこの光景こそ夢なのではないかと考えることがあった。
 
「なになに?♡ どしたの、急に♡♡ 他の友達とだって、休み時間におしゃべりしたり放課後お茶したりしてたでしょ?♡♡ えぇっと……。なんだっけ、きみがよく一緒にいるあの子…………」

 彼は独り言のようできっと独り言でなかった発言を拾い、顎に手を当てて考えている。

 仕草だけ見れば特に男性的でも女性的でもないけれど、集中していると尖ってくる口があまりにもかわいいことと、顎に当てた手の感じがどことなくエレガントなので、彼のするその仕草に限っては、きわめて女性的な印象だ。
 
 それに加えて、中世的な――というか、平均的な女の子より格段にかわいい――顔立ちも相俟って、たまに彼氏ではなく女友達とお茶している気分になる――――というのは、本人には伝えないほうがよさそうだ。

「窓華ちゃん?」

「そうそう、その子! 俺と付き合う前、その窓華ちゃんと映画観に行ったりファミレス行って駄弁ってたりしたって言ってなかった?」

 彼女の名前を告げると、彼はぱぁっと顔を明るくして指を鳴らした。――――前言撤回。彼はやっぱり男の子だ。

「君と付き合う前?」

 復唱しながら、記憶の糸を手繰った。

(たった数ヶ月前なのに昔のことみたい……)

 あの頃は、遠くからボディーガードさんたちに見守られながら、窓華ちゃんとさまざまな女子高生っぽい場所に赴いていた。――――当時付き合っていた、パチスロ狂いでだらしない彼氏の呼び出しがあった日以外は。

「…………うん。結構行ってたなぁ。楽しかったけど、毎回毎回奢られちゃうの! お弁当とお財布を同じ日に忘れて、お昼ご飯買ってもらったときは本当に助かったし、ありがたかったけど……。毎回はさすがに気前よすぎじゃないかなぁ?」

 彼女は学校が終わると、貴重なバイトまでの時間を使って、わたしと過ごしてくれることが多かった。
 
 だから、むしろわたしのほうが彼女に奢るべきですらあったはずなのに、お手洗いで席を立った隙にお会計を済ませていたり、知らぬ間に好きなものを注文してくれていたりと、並みの男の人よりも気の利く恋人ムーヴを見せるばかりか、彼女はそのことを楽しんでいるようにさえ見えた。

(そのあと、窓華ちゃんのことバイト先のカフェとかファストフード店とかまで送ってって、そのまま宿題終わらせちゃったりすることも多かったっけ。窓華ちゃんのことは大好きだけど、それ考えたら、いまのほうがしあわせだなぁ……)

「あはは! そうだったんだ? ……毎回奢られちゃうと、確かにちょっと肩身が狭いかもだね。友達なんて対等でなんぼなのに、負い目を感じちゃうみたいな」

 彼はわたしの気持ちに寄り添う一方で、窓華ちゃんの困った奢り癖については面白がっているようで、とうもろこし――というと黄ばんだイメージを持たれてしまうかもしれないので補足しておくと、パールホワイトやピュアホワイトといった白い品種をイメージしてほしい――のごとく整列した歯を覗かせた。
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