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Interlude
Interlude<XXII>
しおりを挟む「んー。思うように動けないのは同じだだけど、昔の夢は見ないかなぁ。……というか、起きたときに夢の内容覚えてること自体、滅多にないかな? 俺の場合は」
当然のように恋人繋ぎをされることにも、やっと慣れてきたところだ。
相手が包容力の高い彼だからか、密着度の高いこの繋ぎ方をされているだけで、胸のなかにどっかり居座る氷のような不安がみるみるうちに小さくなっていく気がした。
「夢見ないってこと? いいなぁ……」
わたしが彼の手を軽く引っ張るのが、いつしか出発の合図になっていた。
「それはちょっと違うかも? 熟睡できてるってことなのかな。俺の感覚としても『見ない』って感じなんだけど、覚えてても覚えてなくても、人間はひと晩に何個も夢見てるんじゃなかったっけ?」
「そうなの?」
「どっかでそんな話を聞いた気がするんだけど、そのあたりはどうでもいいか。問題は『ちゃんと睡眠を取ってるのに、気持ちが休まってない』ってことだ」
歩くスピードはこちらに合わせて、彼がひとりでいるときに比べてややゆっくりのペースを保ってくれていたけれど、喋るスピードが若干早い。
最近になって気付いたけれど、これは彼が考え事をしているときの癖だ。
「気持ち? だったら、君に会って話してるうちに落ち着いてきたけど……」
「……ああ、俺の言い方が曖昧すぎたかな? 睡眠そのものも重要だよ。次の日のコンディションを左右するだけじゃない。その日の記憶が定着するのだって睡眠中だし、遅かれ早かれ成績にだって影響してくるんじゃないかと思うし、このまま放置しておくわけにもいかないでしょ」
「そう、かなぁ……」
言われてみると、以前より集中するまでに時間がかかるようにもなったし、集中力自体も途切れやすくなった気がしないでもない。
「いまはまだ、だましだましどうにかできてるのかもしれない……というか、きみには無理してる自覚もないのかもしれないね。でも、塵も積もれば山となる…………のは、いいことだけじゃない。最悪、身体壊すよ。きみ。脅しみたいで嫌だけど、きみのことが大切だから言わせてもらう。寝不足を甘く見ないほうがいい」
危機感が芽生え、次第に俯き加減になっていく。下を向いて歩いてばかりだったわたしの顔を上げさせてくれた彼が隣にいるにもかかわらず。
「…………俺たちは、まだ20年も生きてないよね。だから、きみのいう『昔』が小さい頃のことなのか、俺と出会う前のことなのかはわからないけど……」
制服の色味に合うダークブラウンのペニーローファーが歩みを止めた。
「力になれそうなことがあったら、俺のこと頼ってほしい。……話す気にはなれないかな?」
晴れた日だというのに、あたりがいやに暗いのが気になって顔を上げると、そこは人通りの少ない体育館の裏手だった。
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