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Interlude
Interlude<XX>
しおりを挟む「……ま、いいや! アタシはこれからもアンタのこと『お嬢』って呼び続けるかんな!」
夕日をバックにしているはずなのに、カズミンの歯と愛用の携帯電話を彩るラインストーンがやけに眩しかったのを、いまでもよく覚えている。
ボディガードのみなさんには、高校に進学してからもお世話になった。カズミンとも学校は離れたけれど、メールのやりとりをしたり、たまに会ったりとご縁は続いていた。
(彼と付き合うようになってからは『もう心配ない』ってことで、登下校もふたりでするようになって……♡)
それも彼から言い出してくれたことだった。
(ふたりっきりで帰りたかっただけだとしても、『この子のことは、俺が守ります』って宣言したときの彼、ほんと頼もしくてかっこよかったなぁ♡♡ いつもかっこいいけどね♡♡)
騎士のような宣言をした彼は、誰もが認める王子様キャラで――――。
(……わたしのこと『姫』って呼ぶひとがカズミン以外にもいるなんて、あの頃は想像もしてなかったなぁ。カズミンは『お嬢』で妥協してくれたし、彼がわたしを『お姫様』って言うのは、ふたりっきりのときだけだから別にいいけど……♡♡)
ここには誰もいないのだから素直になってしまえばいいのに、そう呼ばれて喜んでいる自分を受け入れるのは、いまのわたしにはまだ難しかった。
――――そんなことを考えていると、急に目の前が明るくなった。
目を開けてすぐに飛び込んできたのは、自室に設置してある空気清浄機のセンサーだった。
「……ん。もう朝……?」
なまじ意識があったので、ぐっすり寝た実感はないけれど、最近めっきり会えていない友人が登場してくれたおかげで、この前の夢よりも格段に目覚めはよかった。
いつもと同じように、洗顔と歯磨きを済ませてキッチンに降りていくと、朝食の準備が整っていた。隣にはお弁当の包みがちんまりと乗っている。
「ふたりともすごいなぁ。特にお母さん…………」
見慣れた朝の風景だけれど、作ってくれた本人の姿はない。ついでに言うと、父の姿もない。
ふたりともわたしが起床する前には家を出ており、帰りも遅いので、何日も顔を合わせないなんてこともざらにあった。
「いただきます」
忘れないうちに包みをサブバッグに入れてから、静かに手を合わせる。
(……もうちょっと早く起きてたら、あったかいうちに食べられたよね。でも、いまは再加熱する気になれないや)
トーストの上に乗せたバターはいつまでも形を残したままで、目覚めたときのもやついた気持ちと重なった。
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