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Interlude
Interlude<Ⅲ>
しおりを挟む――――通学路の途中にある公園がわたしたちの待ち合わせ場所だった。
いつもの時間の少し前に着くようにそこへ向かうと、ちょうど逆方向の道から彼が歩いてくるところだった。
「おはよ!」
「おはよう」
「……って、さっきも言ったっけ。二回おはようするの、なんか不思議な感じだけど悪くないね?」
わたしの姿を認めた彼は、坂を駆け下りてきた。
「そうだね。君に『おはよう』って挨拶してもらうと、すごく元気出るし」
背伸びして、少しのあいだに乱れてしまった髪を整えると、彼もお辞儀をするようにすこし頭を下げてくれた。
「ほんと? じゃあ、毎日モーニングコールしてあげよっか?♡♡」
――――のに、彼はすぐに顔を上げてしまった。
「ううん。そこまではしなくて大丈夫!」
「そっかぁ…………」
慌てて遠慮したら、もう一度下を向いて。本当に喜怒哀楽がわかりやすくてかわいいひとだ。
「……あ、違うの。負担になっちゃうと思っただけで……! その、たまに…………えっと、週に一回……とか? 君の負担にならない範囲でだったら、してほしいなぁ…………なんて」
「え?♡ 俺は毎日でも負担じゃないから、毎日していいってこと?♡♡」
ひっかけ問題にも簡単に引っかからない彼らしい屁理屈だ。というか、彼はもしかしたらそういう問題を作るほうにも適性があるかもしれない。
「…………わたしも朝、君の声で起こしてもらえるのは嬉しいけど、話聞いてた?♡」
「聞いてた聞いてた♡ ……負担に思わないのは本当だけど、毎日モーニングコールなんてしたらきみが俺に気遣っちゃうもんね。数日に一回にセーブしておくよ♡♡」
「うん。よろしくね?」
「……あ、忘れるとこだった。はい、ノート! 俺んちに永住したいのは分かるけど、忘れ物には気を付けてね♡♡ ガラスの靴なんか落としていかなくても、俺の頭はきみのことでいっぱいなんだから♡♡」
彼は足元に視線を落とした。
「? うん、ありがとう?♡」
「どういたしまして♡♡ じゃあ、行こっか!」
その視線の意味がわからないながらも頷くと、彼はわたしの手を取って歩き出した。
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