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彼と彼女の放課後
彼と彼女の放課後<XXXVI>
しおりを挟む予定の時刻きっかりに、寝息の漏れる唇にそっと口付けた。
仰向けになり、胸の上で両手を組んでいる彼は、絵画に描かれた天使のように安らかで、思わず耳を近付けて呼吸音を確認してしまった。
「……おはよう」
縁起でもない寝相はやめてほしいなんて本音は心の奥底に閉じ込めて、その日会っていちばん最初にする挨拶をもう一度。
「おはようのキスありがとう、お姫様♡♡」
彼はすぐには起き上がらず、手を伸ばしてわたしの頭を撫でた。
「最高の目覚めだったなぁ♡ できれば、これから毎日これがいい♡♡」
そのあと、胸を反らせて伸びをして、反動と腹筋の力で身体を起こす。
「…………それって、プロポーズ?♡」
「かも♡♡」
「一緒に暮らすようになったら、毎日一緒に寝られるね♡」
――――と口にして、ふと思う。先ほども同じことを言ってしまった気がする。わたしはどれだけ彼と一緒にいることを願っているんだろう。
「当たり前のこと何回も言ってごめんね? 恥ずかしいなぁ……」
「なんでなんで♡♡ 俺も嬉しいよ♡ 毎晩きみと一緒に寝られるの♡ その日いちばん最後に見たり話したりする相手がきみになるってだけでも幸せだし、おやすみのキスとおはようのキスもできるもんね?♡」
彼がぽんぽんと前腿を叩いた。寝起きの彼はいつにもまして甘えんぼさんみたい。
「……うん♡ 君は『いってきます』と『ただいま』のタイミングでもしたいって言ってた……よね?♡♡」
誘われるままに掛ける。大胆に向かい合って彼の脚を跨ぐのもいいかと思ったけれど、いまは少しだけ我慢して、スカートを着用してメリーゴーランドの馬に座るときのように。優雅に箒に掛ける魔女のように。
「覚えててくれたの?♡ 嬉しいけど恥ずかしいな♡♡」
白馬の似合う彼が照れくさそうにはにかんだ。
「恥ずかしいの?♡ どうして?♡」
「わがままだし、ちょっときみに甘えすぎかなぁって」
「わたしもしたいから、わがままでも甘えすぎでもないよ?♡♡」
「ふふ、そっか♡ じゃあ、いまから約束ね?♡♡」
立てた小指を絡め合って、どちらからともなくしたキスは、今日いちばんの甘さだった。
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