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彼と彼女の放課後

彼と彼女の放課後<XXIV>

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「…………わたしは…………」

 期待のこもった眼差しを向けられている。きっと一緒に仮眠を取りたいんだろう。

「さっき教えてもらったところの復習してよっかなぁ。15分経ったら起こそっか?」

 机の上のノートの表紙を睨んで直前の内容を思い出そうとしたけれど、透視なんて芸当は当然できないし、いま彼とくっついて横になんてなってしまったら仮眠どころではなくなってしまうのは目に見えている。

 それなら先に勉強に戻っていたほうがいい。

「いいの? 勉強の邪魔しちゃわない?」

 申し訳なく思いつつ断ったけれど、意外にも彼はけろっとしていた。

「全然平気だよ」

「じゃあ、お願い♡♡ ……あと、もしよかったらなんだけど、もうひとつお願いしたいことあって……♡」

 スマートフォンをヘッドボードに置いて隣に戻ってきた彼は、両手の指先を合わせた。
 
「なぁに?♡♡」

 雑誌の表紙を飾る新進気鋭のアイドルさながらの仕草に胸をときめかせながら、問いかけてみれば。

「声掛けるだけじゃなくて、ちゅーして起こしてくれたら、もっと嬉しいかも♡♡」

 彼ははにかんで『もうひとつのお願い』とやらの内容を明かした。
 
「…………くちびる?♡」

 仕草以上にかわいらしいお願いにノックアウト寸前になりながら、リクエストの詳細を尋ねる。

「場所はきみにおまかせするよ、お姫様♡♡ どこでも好きなところにしてほしいな♡」

 すると、彼はわたしの手を持ち上げ、唇で甲に触れた。
 
 何度言われても自分をお姫様だとは思えないけれど、かつて憧れた王子様がそこにいるようで、ぽわんとした幸福感に包まれる。

 ホイップクリームのソファに腰掛けて、苺の王冠を載せてもらって。仕上げにきらきらと銀色に輝くアラザンを散らしてもらったかのような。

「わかった。じゃあ、また15分後にね?」

 ――――と言って、ベッドから立ち上がる直前。
 
「…………ああ! その前に……。ね?

 彼がわたしの手を捕まえた。シンデレラを呼び止める王子も、彼と同じく優しい手をしていただろうか。

「あ、そっか! お昼休みの終わり頃に気付いたけど、『勉強会するからあとでもいいよね』ってなったんだっけ」

 わたしたちは毎日最低一枚、ふたりで一緒に映った写真を撮ることにしていた。

 どちらかに自撮りの習慣があったわけではなく、お互い昔の写真がほとんど残っていないことを知って、急遽そういったルールを設けることにしたのだ。
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