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彼と彼女の放課後
彼と彼女の放課後<XXIII>
しおりを挟む「…………ごめんね。そんなに我慢してくれてるなんて知らないで……。わたしのためを思ってのことなのに、不安になって、君のこと問い……、ううん。そうじゃないね。追い詰めたりして…………」
胸に埋もれながら、もごもごと口を動かした。
「ううん。俺も最初から話してたら不安にさせなかったんだから、お互い様ってことでいいんじゃないかな?」
「そうだね。……あ、そろそろ勉強戻らない? 先にキッチンのお片付けかな?」
本当は帰る時間までこうしていたいけれど、そうも言っていられない。そっと身体を離そうとしたけれど。
「安心したら眠くなってきちゃった! きみもあったかいし♡♡」
いち早く察知した彼に、もう一度抱き寄せられた。計画失敗だ。
「子ども体温って言いたいの?♡ 君のほうがあったかいんじゃないかと思うけど……」
一日くらい休憩の多い日があってもいいかと開き直って、ちゃっかり抱き締め返したら、額と鼻先が触れ合った。骨と骨がぶつかって響いて、ふたりだけで共鳴し合っている気分。
「ああ、そういうんじゃなくて♡♡ 確かに身体もあったまるけど、どっちかっていうと心がぽかぽかする感じ!」
「わかるかも。君にぎゅーってしてもらったあとって、誰にでも優しくなれる気がする……!」
「え~? きみがみんなに優しいのはいつものことでしょ?」
彼は唇を尖らせている。不満を募らせているのかキスの催促か判断に窮して、なんにもしないことにした。したかったら彼のほうからしてくるはず。
「そんなことないよ?」
「そうかなぁ? まぁ、きみが言うなら……そういうことにしておこっかぁ…………」
いつもはきはきしている彼だけれど、ひとつひとつの発音がもにょもにょ……というより、むにゃむにゃしていて不明瞭だ。
話すスピードもゆっくりめだし、甘えたいときともまた違った感じで――――。
「…………もしかして、いま、ものすごく眠い?」
見上げれば、シャッターを半分閉めたような瞼をした彼と目が合った。
「大正解♡ 心も身体もぽかぽかになったおかげだねぇ……♡」
わたしを腕のなかに囲い込んだまま頬擦りしてくる彼は、お気に入りのぬいぐるみからいつまでも離れようとしない小さな子どものようでとても愛くるしい。
「平気? そのまま勉強戻れる?」
「うーん……。眠いままじゃ、かえって効率落ちちゃうしな……。10分…………いや、15分だけ仮眠してから勉強戻ろっかなぁ……。きみはどうする?♡」
彼はのろのろとスマートフォンを取り出して、アラームをかけようとしているところだった。
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