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彼と彼女の放課後

彼と彼女の放課後<XX>

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「俺の希望聞いてくれるの?♡♡」 

 彼は断りを入れ、箱を片付けてきてから、もう一度隣に掛けた。

「希望…………もそうだけど、わたしに合わせて無理してないかなぁ……って思ったから……」

 ぼんやりしていたわたしはマットレスが沈むのに耐えられず、彼の膝に倒れ込んでしまったけれど、嬉しそうな顔で抱き寄せられたせいで身動きが取れない。なんて幸せな悩みなんだろう。

「無理?」
 
「本当はまだするつもりなかったんじゃない?」

 ヘッドボードまで追いやられた箱は、そこでわたしたちの会話を聞いているみたい。わざわざそこまで遠ざけなくても、ベッドの上に置いておけばよかったのに。

 綺麗好きな彼のことだから、雑然とした状態は好まないというだけで、特に深い意味もない行動だったのかもしれないけれど、他にも理由がありそうな気がした。

「どうしてそう思ったの?」
 
「結婚の話はするのに、こういうことはいままで全然話題に出さなかったから。……結婚前に相性を確かめておくのも、いまの時代は普通でしょ? でも、君は周りに流されるようなひとじゃないし…………。もしかしたら『少なくとも卒業までは待とう』とか『結婚まで手出さないのが理想』とか考えてたんじゃないかなぁって……」

 大きな目がこぼれ落ちてしまいそうなほどに見開かれても、わたしの言葉は止まらない。
 
 わがままな自覚はあるけれど、あなたの信念を曲げてまで、わたしの望みを叶えることが正しいなんて思えるほど、ふてぶてしくはなれなかったから。
 
「全部のことに対して、ちゃんと自分の意見とか基準とか持ってるひとだからそうじゃないかと思ったんだけど、わかったような口きいてごめんね」

「『わかったような口』なんかじゃないよ。…………きみは、誰よりも俺のことわかってくれてるんだね。ありがとう」

 謝罪で締め括ろうとしたけれど、感謝されて面食らう。どこまでお人好しなんだろう、君は。

「結論から言うと、きみの言ったとおりだよ。卒業までは待とうと思ってたし、結婚してからでも遅くないんじゃないかなって思ってた。……まぁ、は別としてね?」

「いまも我慢してる?」

 左耳に甘い声が吹き込まれ、身体を捻って彼のほうを向いた。

「そりゃあ、もう。……でも、試験まであと少しだ時間もないし、さすがにこのタイミングでするわけにいかないでしょ。…………それにさ…………」

 紅茶の香りが広がった。そう認識したときにはすでに唇が触れ合っていた。
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