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放課後の約束
放課後の約束<前編>
しおりを挟む「今日もうちくるよね?」
五限と六限のあいだの休み時間。わたしと顔を合わせるなり、大好きな彼氏がそんなことを訊いてきた。
いまは空き教室で話しているからいいけれど、彼はいつもはきはき話すうえに通りやすい声の持ち主だから、周りに人がいるときはからかわれてしまって大変だ。
でも、実はそれも全然嫌ではなかったりする。恥ずかしいのは恥ずかしいけれど。
「うん。君が迷惑じゃないなら、お邪魔させてもらえると助かるなぁ……。先生に質問したんだけど、いまいちわからなかったところがあったの……」
試験を直前に控えていたわたしたちがしているのは、放課後の勉強会の約束だった。
毎回恒例となった勉強会のおかげで、試験期間を憂鬱に感じることはなくなったけれど、そういえば今回で何回目の開催になるんだろう?
得意科目が見事に真逆だと判明したときはまだ友達同士だったけれど、教えっこ自体はその頃からしていた。
大きな変更点があるとするなら――――。付き合い始めてからは、試験前に勉強会を開く場所が空き教室や図書室、自習室などではなく、彼の家になったことくらいだと思う。
「わたしには、先生の説明より君の説明のほうがわかりやすいみたいで…………。いつも頼ってばっかりでごめんね?」
『勉強会を口実におうちデートしている』といえばそうだけれど、わたしたちの場合は、この年頃のカップルにありがちな『勉強会と銘打って、ノートなんて一回も開かずに性欲のままに貪り合う』なんてことは一切なかった。
「いやいや。俺だって十分頼ってるって。いつもありがとね」
屈託なく笑った彼がわたしの恋人だなんて、いまだに信じられない。
「んー、そうかなぁ? どういたしまして?」
わたしたちの勉強会といえば、毎回、学校終わりに大真面目に数時間、苦手な科目のわからない部分を教え合うだけの至って健全なもので、これもある意味では不健全きわまりないのかもしれない。
別れ際に『お疲れ様』、『ありがとう』、それから『ばいばい』の意味を込めたキスを交わすくらいはするけど、逆にいえば本当にそれだけだ。
(胸を揉むくらいだったら、いつでもしてくれていいのに……。なんとなくだけど、気分転換にもなりそうじゃない? 脳の活性化みたいな感じで……)
元カレたちが揃いも揃って異様に手が早かったというのももちろんあるだろうけれど、それにしたって彼は、いつになっても手を出してくる気配がないどころか、そういう雰囲気ひとつ出してこない。
ただ興味がないだけなのかもしれないし、わたしだって絶対にしたいことでもないけれど、なにもないというのも心配になるもので――――。
(付き合い始めて半年くらいにはなるはずなんだけど、わたしってそんなに色気ないかなあ……。大切にしてくれてるのはわかるよ。でも、好きなひととはそういうこともしたいもん……)
優しすぎる彼にばれないように、こっそりため息をついた。
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