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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<CDXXXVIII>
しおりを挟む「…………あ、ごめん。まだ痛むよね……。『きみの血、初めて舐めさせてもらっちゃったなぁ……♡♡』なんて喜んでる場合じゃなかったね」
ずきん、と走った痛みに顔を顰めれば、彼は思い出したように気遣わしげな表情を浮かべた。
しかし、平常より少しだけ低い声から伝わってきたのは、身の危険を感じるほどの高揚感だった。
「よ、喜んでたの……? 血なんて、綺麗なものじゃないし…………その、無理して飲まなくても……」
負傷した口は咄嗟に動揺を装ったけれど、わたしはわたしで奇妙な興奮をおぼえていた。
咥内を満たした塩気の発生元、赤い赤い血の含まれる唾液を、彼はすべて奪い尽くし、自らの体内に収めた。
傷口を舐める行為以上の意味はなかったのかもしれないし、傷口が塞がるまでキスを我慢できなかっただけかもしれない。
それでも、一生わからないかもしれないと諦めていた彼の気持ちを理解できた気がした。
――――最愛のひとが自分の体液を欲し、積極的に取り込んでくれる歓びを。
「それだって立派な情報だよ?♡♡ 『好きなひとのことはなんでも把握したい』気持ち、一滴残らずごっくんしてくれるきみならわかってくれるんじゃないかなって期待してたんだけど、違った?♡♡ 精液なんておいしいはずないし、喉につっかかって飲めたものじゃないだろうに…………」
奇しくも同じことを考えていた彼に顎を持ち上げられ、口を開かされた。
「…………ううん。あなたの気持ち、すっごくわかる♡ お口の中で出されるとね、あなたの香りが広がって……♡♡ それだけでもいいけど、飲んだら喉のところに残って、わたしの手とか舌とかで気持ちよくなってくれた証拠が残るみたいで好きなの♡♡」
今度は苦味が恋しくなって、唾液が溜まっていくのがわかった。
「証拠か♡ なんかいいね、その考え方♡♡」
「あと、嘘っぽく聞こえちゃうかもしれないけど、味も、その……結構好きだから、無理して飲んでるわけじゃないよ……?♡♡」
気まぐれな舌に呆れながら、嘘のない気持ちを言葉に乗せていくと。
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