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HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CDXXXII>

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「すごい説得力♡♡ だけど、わたしもおんなじかも♡♡ あなただけ特別♡ 愛してる……♡♡」

 でも、よくよく考えなくても、彼が一方的にわたしを見つめているわけではない。

 自分では確認できないのが少し残念だけれど、わたしだって、彼のことを閉じ込めているはず。

「俺も♡ 特別なひとの特別って、普通よりもさらに特別な感じがしていいね♡♡」

 無邪気な笑顔を向けられ、胸が高鳴った。
 
 大きな瞳が嘘みたいに細くなるのは同じなのに、大人の色気たっぷりに言い放った先ほどの彼とは別人のようだ。

 けれど、そんなのはいまに始まったことではないし、脳裏を過ったをなぞらえるのが先決だ。

「…………そんな短いあいだに何回『特別』って言うの?♡」

「それって、さっきの俺の真似?♡♡ かわいいことしてくれちゃって……♡♡」

 彼はすぐに気付いて、ぎゅっと抱き締めてくれた。
 
「……続き、話してもいいかな?♡」 

 こくん、と頷いた拍子に、溜まっていた唾液が喉を通過していった。

 そういえば、わたしたちは軽く触れ合わせるだけのキスばかりしてはいないか。
 
 思考が乱され、舌が疲れ切ってしまう、熱量の高いキスを最後にしたのは、何分前のことだっただろう。

「そもそもの話、天国とか地獄とか……死後に辿り着く世界が実在するかどうかなんて、誰にも証明できないわけでさ」

 深い海の底で暮らしていけるくせに、自ら浅瀬に出てきた挙げ句、そこで延々と戯れている人魚みたいだ。

 小休憩を挟んでいるつもりかもしれないけれど、わたしはもっとあなたに溺れたいし、あなたにももっとわたしに溺れてほしいのに。

「そういう場所は本当にあるかもしれないし、辿り着けた人たちだっているのかもしれないよ? もしかしたら、いい人も悪い人も関係なくみんなそこに行くような仕組みになってるかもしれないしね。……だけど、生きてる限り、それを確かめることなんて、できやしない……」

「それ、さっきも言ってたね?」
 
「大事なことだからね。確かめに行くのも…………まぁ、それはそれでひとつの手段だと思うし、きみじゃなかったら止めもしない。その人の気が済むようにしたらいいと思って送り出すよ。きみ以外のヒトがどうなろうと、知ったこっちゃないからね」

 形のいい唇は歪な愛を紡いだ。
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