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HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CCCLXIII>

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「…………ごめんなさい。いきなりこんなこと言われたら、そうだと思うよね。え……っと。そういうのにも憧れてたこともあるけど、ちょっと違うなって気付いて。うぅん、なんて言ったらいいのかなぁ……」

 嘘を吐きたいわけではないのに、突発的な衝動の奥で渋滞を起こしているさまざまな想いを言い表すにふさわしい言葉を見つける、ただそれだけのことにも難儀して。   
 
「だとしたら……不慮の事故で、とか。あとは……なんだろうな、老衰とか?」

 考えあぐねて、いよいよ涙が滲んできた頃、彼から助け舟が出された。

「…………! そう。最初にそう思ったのは、確か……。片方が亡くなって、後を追うみたいに亡くなったご夫婦の話をどこかで聞いたとき、だったかな……。他人ひとの訃報を受けた感想として間違ってるのはわかってても、『わたしもそんな最期がいいなぁ』なんて思っちゃったりして」

 それに乗っかって調子よく口から滑り出した言葉のどれも虚言そらごとではないけれど、わたしが見ているのはやはり、終わりのその先のことだった。

 『一切の痛みも苦しみもなく、愛するひととともに天に召されたい』だなんて高望みもいいところの非現実的な願望でさえも、わがままで救いようもないわたしにとっては妥協案でしかない。
 
「……ああ。その話なら、俺もどこかで聞いたな。つまり、あれか。『避けることのできない運命』みたいな感じか。…………『宿命』とでもいったほうがいいのかな」

 重い口を開いた彼がぽつりと落としたのは、抗うことの叶わぬ重い鎖を思わせる単語。

 束の間、息を止めて、明らかに普段使いでないその言葉に思いを馳せた。
 
「たぶん、そんな感じ……。何回も考えたけど、置いていかれるのも置いていくのも……やっぱりどっちも嫌だから。死ぬときもあなたと一緒がいい。ばかみたいって思われるかもしれないし、あんなの形だけの儀式ただのおままごとなのかもしれないけど、みんなの前で一緒に生きるって誓ったんだから……がいいの」

 死後その先も一緒にいたいという思いは捨てられずにいたけれど、少なくとも、いまこのときにおいては、それはさして重要ではない。

……じゃなくていいの?」

 問いかける彼は、優しい目をしていた。

 『果たせない可能性が少しでもあるなんてしてあげられない』ときっぱり断られたはずなのに。
 
 そんなふうに見つめられたら、まだ希望を捨てないでいていいのかななんて思ってしまうではないか。
 
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