我々はうさぎではないので、乙女座の我が子にはまだ巡り逢えない

HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CCCXXX>

「そんな、こと……っっ♡」

　彼は、いつもの癖で否定に走るわたしの丸みを帯びた額に、直線的な額をくっつけてきた。
　
「あるある♡ あるんだって♡♡ あんな返しがすぐに出てくるって天才的だよ？♡ かわいこぶってるんじゃなくて、思考回路が素でかわいくないと無理だもん♡ ほんとどうなってるんだろう？♡♡ きみの頭の中、覗けたらいいのになぁ♡♡」
　
「ゃっ♡ 覗いたって、あなたのことしか考えてないっ♡♡」

　骨と骨がぶつかった際の衝撃か、頭がぐらりとした直後、現実がぐにゃりと遠ざかって。

　触れている部分から、色欲一色の脳内の、とても言葉には出せそうにはない願望をひとつ残らず読み取られてしまいそうで、詳細を尋ねられる前に自白してしまえば。

「普段から俺のことだけ考えてくれてるの？♡ やっぱりめちゃくちゃい・い・子・だね、きみって……♡」

　彼は、歯の形が目視できるほどに笑んだ。

「…………！　もしかして、わたしがい・い・こ・、だ・か・ら・……お仕置きしてくれないの……？」　

　大真面目に食い付いて、ずずいと迫る姿は、滑稽に思えて仕方なかったことだろう。

「わたし、全然いい子じゃないもん……♡ 考えなきゃいけないことがあっても、すぐに忘れて、あなたのことでいっぱいになっちゃうの……。すごく悪い子でしょ？♡♡ だから、お仕置きちょうだい？♡」
　
　昼夜関係なく、あなたと過ごす夜の妄想に耽って、わたしの意識はすぐに現実を離れてしまう。
　
「…………そういうことじゃないんだけどなぁ♡♡」

　目下の悩みを打ち明けたけれど、彼は笑いを噛み殺すばかりで、お仕置きはおろか答え合わせにすら入ってくれない。

「あれ……？　違った？　いい子だから、してくれないんじゃないの……？」
　
「違う違う♡♡ おあずけしてるのは、きみじゃなくて俺の都合♡ ……でもさぁ、『悪い子だと思われれば、すぐにお仕置きしてもらえるんじゃないか』って思いついて、ノータイムで実行しちゃうとか♡♡ 手段選ばなすぎじゃない？♡」

　……なんて、思い込みに過ぎなかったのかもしれない。
　
　彼の言葉は、容赦なくわたしの羞恥を煽り立てていく。