我々はうさぎではないので、乙女座の我が子にはまだ巡り逢えない

HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CCCXI>

「うん、どうしてかなぁ……」　
　
「さっきのが効いたのかも？♡ 我慢して飲んだ甲斐あったね♡ もうお口の中も大丈夫そうかな？♡♡」

　しかし、いちいち恥じらいを見せている余裕もなくて、同じ方向に首を傾ければ、彼は額をこつんとくっつけて。
　
「うん♡♡ あなたのお手伝いできたから、効かなくてもいいかなぁって思ってたけど嬉しい♡♡ ……喉は……まだちょっとひりひりしてるけど…………♡」

　『舌を絡め合うキスをちょうだい』と、それとなく匂わせるけれど、長い睫毛が肌を擽っただけで。

「……なーんて、たぶんそ・う・じ・ゃ・な・い・けど♡ 健気なきみらしいかわいい台詞まで聞けちゃった♡ 思わぬ収穫だなぁ♡♡」

　よく回る舌は、物欲しそうに開いた口を無視してお喋りを続ける。　

「俺の計・画・ど・お・り・に・育・っ・て・く・れ・た・ね♡♡ いいこいいこ♡♡」

　顔に感じる吐息に性的なニュアンスはないのに、研ぎ澄まされた触覚が勝手に性感を見出して、ほとんど無意識に彼の咥内を貪っていた。

「…………ふ、ぅ……っ♡♡」
　
　触れたらたちまち引っ込んでしまう舌を一心不乱に追い回しているせいで、決して無視できない意味深な発言も遠く遠くなっていく。
　
「ん……♡ ははっ♡♡ じょうずじょうず♡♡」

　やや強引に押し返され、追・い・か・け・っ・こ・はお開きになる。
　
　熱せられた空気を取り込むこと数回、再び彼の声がはっきり聞こえて、出かけた文句を飲み込んだ。

「何回も言ってるけどさ、したかったらど・ん・な・こ・と・で・も・きみからしてくれて構わないんだよ？♡ いま、大人のキスしてくれたみたいにね♡♡」
　
　二回同じ言葉を繰り返す褒め方は、幼い子どもへ見せる態度を思わせて、少しだけもやもやした思いが顔を出したけれど、すぐに沈んで見えなくなったどこかへきえた。