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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<CL>
しおりを挟む「…………ありすぎてわからない、かも」
目を閉じて考えてみたけれど、絶対にこうだと言い切れる過ごし方は見つからず。
「わからない?」
予想外の返答だったのか、裏返り気味の声で尋ね返される。
「うん。昨日と今日で、お外でもおうちでもあなたといろんなことしたけど、全部幸せだったから選べないよ……。したいことがありすぎるの。あなたとだったら、なにをしても特別になっちゃうから」
表明したとおり、ともに過ごす時間は例外なくかけがえのないものだった。
次から次へと堆積していく『大好き』を込めて、心臓の上に手を置く。
「なるほどね。すごくかわいいけど、いまいち危機感が足りないなぁ。俺も、きみと一緒なら、なにをしてても幸せだけど、時間は有限だよ? 死ぬ直前なんて特にさ。もし本当に最後なら、あれもしたいこれもしたいって欲張ってるうちに終わっちゃうだろうし、そんなに悠長なこと言ってられないと思うけどな」
「そう、だね…………」
反論の余地もないシビアな意見に、引き攣った笑みを返すことしかできなかった。
夢がないのはだめだと言ったくせに、変なところで現実を突き付けていじめてこないでほしい。分からず屋だなんて思わないけれど、突き放されると泣きたくなるから。
「……ごめん。またきつい言い方しちゃったな。きみにはどんなときでもふわふわ笑っててほしくて危険なものから遠ざけたのは俺だっていうのにね」
しゅんとしたわたしを見かねたらしい彼が、いくぶん優しい声で呟いた。
ひとたび追及すれば恐ろしい事実まで浮かび上がってきそうなそのひと言には気付かないふりで、頭を撫でる手のぬくもりに意識を集中する。
わたしのことをなにより丁重に扱ってくれるあなた。きっとわたしを害なす可能性のあるすべてを排除してきたあなた。
その手が血に塗れているのなら、わたしのことも汚してほしい。
「きみはたぶん、どういう死に方をするかまで考えてないから、したいことが絞り切れないんじゃないかな。同じ『死ぬ』でもいろいろあるよね。もし……眠るように穏やかじゃない、むごい死に方をすることが決まってるとしたら、きみが最期に俺に願うことはなんだろう?」
彼は骨張った手で喉元を押さえて問うた。
口が裂けても言えないけれど、このまま殺されても構わないなんて思ってしまったりもして。
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