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HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CXXVI>

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「そう……だね?」

 『独り占めしたい』のも『ひとつになりたい』のも同根の願い。

 ようやくわかった。謙虚な人魚姫ではないわたしは、あなたの世界の一部などではなく、あなたの世界のすべてになりたいと願っている。
 
「なんで疑問形なの?♡ そういうことじゃなかった?」

 あたたかい声には寂寥感が潜んでいた。それだけでも『こころはひとつ』だと満足できていたならどれだけよかっただろう。
 
「そのふたつが繋がってるって気付いてなくて。なんか変なこと言っちゃってごめんね」

「確かにどっちも現実的には難しいことだけど、変ってことはないよ。『好きすぎて離れたくない』気持ちが大きくなりすぎたってだけでしょ?♡ いまなら邪魔もされないし、もっとくっついてられるよ♡♡」
 
 抱き寄せられたときに、彼の腹筋の溝にわたしの柔らかいお腹がぴったり組み合わさる錯覚をおぼえることがある。

 いまがまさにそうだった。肌と肌はよく馴染んで、長い時間触れ合っていても不快感が生じない。境界線がぼやけ、溶けていくようですらある。

「そうだね♡♡」

 気のせいだとわかっていても、お互いが対になるように生まれてきたように思え、また他者の入り込む隙なんてないと感じられる、幸せな勘違いが好きだった。

 ――――けれど、大きく膨らんだお腹では、決してそうは思えないだろう。

 いくら尋常ならざる独占欲と嫉妬心を持ったわたしといえど、彼とのあいだに出来た我が子を邪魔者扱いするのは本意ではない。
 
「…………ごめんなさい。今日ので妊娠してたらちゃんと生んで育てるけど、してなかったら、やっぱり当分はふたりでいたい。大好きなあなたとふたりっきりがいいの……」

 本当の本当は『当分』ではなく『一生』だけれど、これはあくまで隠し事であって、決して嘘ではない。そのうち気が変わる可能性だってあるのだから。

「元からそういう話だったし、謝らなくていいんだよ。……でも、もう終わりだと思って油断してないよね?♡♡ ここからが本番だってわかってる?♡♡ 俺は手加減する気ないし、妊娠してもしなくてもどっちでも恨みっこなしね?♡」

 掠れた声で予告して、ぺろりとひとつ、舌なめずり。矛盾だらけのわたしたちは、それでも愛し合うことをやめられない。
 
「大丈夫♡ 前言撤回なんてしないから、本気できてね……♡♡」

 見え隠れする男の人の表情かおに誘われて、勝手に口が動いていた。
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