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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<LXI>
しおりを挟む「……ふたつめは何色にする?」
あるときはなみなみと注がれたコップを渡され、またあるときは口移しで……。今日に至っては、毎回口移しで飲ませてくれていたはずだ。喉を潤していった水のぬるさが思い起こされて、ついつい声が小さくなる。
「そうこなくっちゃ♡ 色はなんでもいいけど……そうだな、最後まで迷って選ばなかったほうにしない? 脱衣所に置くならちょうどいい色合いだと思うし」
「うん、それがいい♡」
件のウォーターピッチャーはサイズ展開もカラーバリエーションも豊富だ。サイズは彼の猛プッシュで一番大きいものに即決したけれど、ふたりとも同じ二色のあいだで揺れていたのが懐かしい。
「決まりだね♡ またデートの予定増やしちゃったけど」
「一日で全部回れるかなぁ?」
「無理に一日に収めることもないんじゃない? 多くて困るものでもないし♡」
「そうだね♡」
「……ところで、きみはいつまでそこにいて俺を見上げてるつもり? ここ空いてるけど座らない?♡♡」
わたしを膝の上に乗せたいらしい彼にちゃっかり前腿に置いたままの手を引かれる。
「座っていいなら♡」
「もちろん。おいでよ♡♡」
「お邪魔します♡」
大胆すぎるかと思ったけれど、大好きな顔が見たくて向かい合う形で腰を下ろした。
「…………さっきは脱水じゃないかと思ってそれどころじゃなかったけどさ、喉渇いたからお口に出してほしいなんて反則だよね。ドキドキしちゃった♡♡」
見つめ合った彼が突然なにを言い出すのかと思えば、それはあのときのわたしが求めていた感想で。
「でも、喉渇いてなくても飲みたいよ?♡」
表には出さなかっただけでしっかり興奮してくれていたという事実に気分をよくして、うっかり口を滑らせると、彼は愉快そうに口端を吊り上げた。
「こっちの気も知らないで……。きみって油断してるとすぐ煽ってくるよね。小悪魔だなぁ♡♡」
「隙あらば煽ってくるのはあなたもでしょ?♡ わたしは思ってること言ってるだけで煽るつもりなんてないもん」
「俺だっていつも思ってること言ってるだけだよ?♡ ちなみにいまはどんなこと考えてるかわかる?♡♡」
と問うてくる彼がなにかを企んでいることは明白なのに、湧き出る好奇心には勝てなかった。簡単に悟らせてはくれない大好きなあなたの内面に興味がないはずがない。
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