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HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<XLI>

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「あ、そういえば『すべきこと』ってなんだったの? まだしなくて大丈夫?」

 偶然にも互いに抱いた感想が似通っていたおかげで、『したかったこと』と称して彼が唇を貪ってきたことを記憶の湖から掬い出した。

「ああ、そうだったね。危ない危ない。言い出しておいて忘れるところだった。まぁお風呂にいる以上はいずれは絶対することだから、遅いか早いかの差しかないけど……ほら、カラダ洗う約束してたでしょ? これからやっと全身洗おうかってときに『お湯に浸からない?』って付き合わせちゃったからさ。どうかな、そろそろあったまってきた?」

 彼は熱を測るのと同じ要領で、わたしの額に手を当てた。そんな少しずれた仕草も体温を上げる一因だと考えてみたことはないのだろうか。

「ちょっと暑いくらいかも?」

「そっかそっか、思ったより長居しちゃったもんね」

 確かに結構な長時間、湯船で話し込んでいた気がする。『時間が溶ける』といった文言を耳にする機会がとみに増えてきたけれど、彼と話していると思い知らされる。その表現がどれだけ的を射ているかを。

 ここは寝室ではないから時刻の確認には不自由しないけれど、いちいち視線を目の前の相手から外してデジタル表示を気にするのも趣に欠ける。元よりそのような余裕を持たせてはくれないが。

「そう……かもね?」

 寒いからといって下手に高温には設定されておらず、ぬるいと感じる絶妙な湯加減だったこともあり、彼が切り出してくれなければ、きっとのぼせるまで気付けなかったことだろう。

「……もしかして、それって半分くらいは俺のせいだったりする?」

「半分どころじゃないけど、あなたのせい♡♡」

 彼の振る舞いにどきどきさせられっぱなしのわたしの体温は、とっくに湯温を追い越しているに違いない。
 
「…………あ、ねぇ見て。指しわしわ」

 耳に髪をかけ直そうとしたときに目に入ったのは、お世辞にもかわいいとは言えない五本の指の先。

「ほんとだ。ふやけちゃったね」

 両の手のひらを彼の側に向けて見せる。すると、すぐさま彼も自身の手のひらをチェックした。

「やっぱり相当長湯してたんだね」

「だね。まぁ別にこれは構わないけど、どうせなら……♡」

 意味ありげに台詞を区切ったかと思えば、刹那、彼の指が秘部に挿し入れられた。

「ぁあっ!? 急になにして……っ♡♡ ゃっ♡」

 非難を込めたはずの文言も意味はない。艶めいた声色で発せされる文句なんて、男を煽る常套手段でしかないのだから。
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