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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<XL>
しおりを挟むけれど、わたしだってあなたの心を鷲掴みにしたい。その手を押しのけるように顔を近付け、触れるか触れないかのキスを一度だけ。
「もちろん。でも、どういうのがいいかわからないから、ついてきてね?」
なにせ大好きな夫の好みだ。完璧に把握していると思いたいが、わかったつもりになりたくはない。そんな思惑もあった。
「ひとりで行くと目移りしちゃって、おんなじようなの選んじゃうから助けてほしいし。あなたはわたしに似合うものを見つけるのも得意でしょ?♡♡」
我ながら随分と口がうまくなったものだ。そっと腕に触れ、どさくさ紛れに次回のデートのお誘いをしてみたら、わたしに多大なる影響を及ぼした本人が豪語する。
「任せてよ。きみのかわいさは知り尽くしてるし、ポテンシャルだって誰よりも引き出せる自信ある。楽しみな予定がまたひとつ増えたなぁ♡ 絶対行こうね、近いうちに」
やはり彼のほうが一枚上手だ。デートのお誘いは約束になって、自然な流れで取り付けられていた。
「うん、約束ね♡」
昼間のデートが遠い過去の出来事のようだ。この数時間がとても濃密だったから、そう感じるのだろう。予約したケーキを取りに行って、デパ地下の総菜を覗く。そんなちょっとした用事を済ますだけの短時間の外出も、隣にいるのが彼だというだけで心躍る。
それは出掛けた先がどこであっても変わらない。もっと言えば、話したいときに話せて、触れたいときに触れられる距離にいられるのなら、場所など問わないのだ。そうでなければ、今日明日の予定におうちデートを提案したりはしない。
とはいえ、沢山の人で溢れかえる場所に彼と訪れるたび、『出会えたこと』や『お互いにお互いと一緒にいることを選び続けていること』を実感できるから、来年はあえてクリスマスに出掛けてもいいかもしれない。
「今日のお昼もすごく楽しかったなぁ。ふたりでお出掛けするの大好き♡」
感じたことをありのままに語れば、彼はよりいっそう嬉しそうに笑みを広げた。いまの言葉にそこまで喜ぶ要素はあっただろうか。不思議に思ったけれど、機嫌を損ねたり気分を害したりしてしまったのならともかく、細かいことを気にしていても仕方ない。
「……そうだね。俺もだよ♡」
完璧な笑顔にぼーっと見惚れる。食べてしまいたいくらいかわいい。そう思って、ふと振り返った。ついさっき、わたしは彼に同じようなことを言われなかっただろうか。
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