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HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<Ⅻ>

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「『俺のもの』か。……そうだね。そうかもしれないな。いままではまだちょっとお互いに遠慮してたところもあったよね」
 
 真剣な表情で語る彼の言葉を逃すまいと耳をそちらへ傾ける。
 
「ナマでセックスしたってだけじゃなくて、赤ちゃんのこととか、トラウマとこととか……これまで話してこなかったことも話せたし、きみもいろいろ聞かせてくれたね。最高のクリスマスになったよ♡♡ ありがとう♡」

 眩しい笑顔を向けられ、胸がつきりと痛んだ。恋の疼きのように甘くはない、れっきとした罪悪感。ごめんなさい。わたしにはまだあなたに伝えていないことがある。途中で気付いたのに、言わずにずるずると引き延ばして、有耶無耶にしてしまいたくて、ここまで来てしまった真実が。

「わたしこそありがとう♡ あなたのこと好きでいるだけでも幸せなのに、いつでもわたしの気持ちに寄り添ってくれて、目一杯愛してくれて。それから……完璧に作り変えてくれて♡」

 暗い気持ちを振り切りたくて明るい声でそう告げれば、彼は数時間前に願ったことを覚えていてくれたようで、意味ありげに左の口端を上げた。抱かれているときに何度も見た意地悪な顔。

「元から誰より近くにいたつもりだけど、今日一日でいままで以上に近い存在になれた気がするよ。もう一段階きみを深く知ることができたっていうか……」

「あ、それわたしも思ってた! あなたの知らなかったところ、まだまだいっぱいあるなぁって♡」

 普段は隠そうとする脆い部分も。意外と嫉妬深い部分も、行為中の雄の表情も。
 
「やっぱり? かなり長いこと一緒にいる気でいたけど、もしそうだとしても『知り尽くしてる』と思っちゃうのはよくないね。俺だって、きみにはかっこいいとこ見せたくて、なるべく見せないようにしてるとこもあるし……。まぁ今日はそれも結構出しちゃった気がするけど」

 頬を染めた彼に抱き締められた。いまさら隠したって、もうわたしの目はあなたのかわいい顔が紅潮したのを捉えているのに。ときめきが止まらなくて、自分からも身体を預ける。

「それに、人って変わっていくものだしね。良くも悪くもさ。どんなに一緒にいても、知らないことが増えていくほうが普通なのかもしれない」

「そうだね。わたしもあなたのこと全部知りたいって思いながら、全部知ることができたら、やっぱりそれはそれで怖いなぁって思ってるし」

脳内に流れ出したのは、二十年ほど前のヒット曲。あの歌のような悲しい恋にも愛にもしたくない。わたしたちのあいだに生まれたかけがえのない想いを、歩んできた日々を、これから先の未来を。そのためにわたしにできることがあるとしたら――――……。
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