121 / 171
夕顔別当
第三十六夜
しおりを挟む「了解」
そこが私達が最初に触れ合った場所だと気付いているのかいないのか、彼女の笑顔からは読み取れなかった。
――――触れて。触れて、塗って。触れて、触れて、また塗って。触れて、触れて触れて――――。
存外に進みが遅いのは、これまた意外な事に彼女が躍起になっているせいか。
時折漏れる息や声を耳にすると、彼女はますますやる気になって、私の肌に美しい唇を押し付けた。
「……擽ったい……」
始める前こそはシュールな絵面のイメージに引っ張られ、今までで一番濡れてしまうかもなどという文言は疑ってかかっていた。
最悪、私自身の快楽は度外視で構わないから、紅さんが満足出来さえすればそれで万々歳だとも思っていた。
――――が、なんというザマだ。
少し考えれば、物足りない位の刺激は忽ち身悶えしてしまう程の快感に変化する事にだって気付けた筈なのに、高を括って、弱点だらけの全身を投げ出して。
想像以上にじれったい上に、話をする余裕は微塵も与えられなかった。
時を戻して、大口を叩いていた自分をビンタしたい。
「…………アタシの色になってく翠、やっぱり可愛い。想像以上」
ふと顔を上げた彼女は、少し身体を離して遠くから進捗を確かめている。
絶えず色を移し続けているせいで、剥げて薄まり、輪郭もぼやけてしまっているその唇だが、彼女自身が醸し出す美しさは寧ろ凄味を増しているようだった。
「やっぱり大事なんじゃないですか。名前…………」
「だね。気付いてなかっただけみたい」
ぼやく私に、肯定する彼女。
これまでと同じ流れのやりとりだが、また一つ距離が縮まった気がして、わずかに彼女の色を移された口元が緩んだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件
楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。
※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる