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夕顔別当

第三十二夜

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「もう一回だけ確認しますよ?」

 ショートパンツもTバックも剝ぎ取られ、素っ裸になっているにも拘らず、低過ぎる室温が特段気にならないのは、これから行われる行為に期待してしまっているせいか。

「ん」

「紅さん、本気ですか? 『使』って」

 ――――そう。

 彼女の提案した予想の斜め上を行くプレイとは、全身に私の望んだ形のキスマークを付けるという酔狂なものだった。

「嘘吐く必要、ある?」

「ないですね! でも、普通そんな事しようとも思わないじゃないですか」

「そ?」

「そうですよ。完全に『ゴム一箱使い切っちゃお』みたいなノリだったじゃないですか!」

「翠は、ある? 一晩で使い切った事」

 彼女は三個目の質問にして、突然踏み込んだ内容に切り込んできた。

「どうだったっけ? あった気もしますね。五個位のやつなら余裕……じゃなくて! それ、今する質問でした?」

 声のトーンが少しも変わらなかったせいで普通に答えてしまったが、赤面してももう遅い。

 というか、元はと言えば私が例えを出したせいなので、自業自得でしかなかった。
 
「……じゃ、なかったかも? でも、気になって」

「まあ、興味を持ってもらえるのは嬉しいですけど……。あ、そうだ紅さん。ちなみにどのリップ使う予定ですか?」

「これ」

 と彼女が寄越したのは――――。

「…………えええ!? ダメですよ、これは! 始める前で良かった~……」

「なんで?」
 
「限定品じゃないですか! というか投げるのもダメです!!」 

「投げるのはダメだね。ごめん」

「これなら……うん、やっぱり。多分、私が持ってる安いやつに似たような色あったんで、そっち使いましょう」  
 
 自分で取りに行こうとしたが拒否されたので、記憶を頼りに指示を出し、挑戦のために買ったは良いが使う機会のなかった口紅と再会する。

 安物の筈のそれは、彼女が持っているだけで高級品に見えた。

 ――――きっと私は、彼女と並んでも凡庸さが際立つだけなのに。
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