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Have a spooktacular night!
Have a spooktacular night!【1】
しおりを挟む「さぁ、行こう行こう」
とヴィニーもルンルンしてるけど、これからどこに向かうんだろう。具体的な行き先はまだ伏せられたままだ。
「『くつろげる場所』って言ってたけど、それってここから近いの?」
「ああ。会場はそう遠くない」
「はい、具体的には五分も歩けば到着しますよ」
「よかった。もっと遠かったらどうしようかと」
典型的なインドアオタク私は、言うまでもなく万年運動不足の身だ。一日に詰め込んでいい運動量なんてとっくにオーバーしてる。ゲームなら赤ゲージだよ。瀕死じゃねぇか。
「もし動けなくても、ここにいるメンバーならカリン一人運ぶくらいどうって事ないよ? うふふふ」
「やだ頼もしい。でも、視線の集中砲火で死ねそう!」
歩行に困難をきたすレベルの疲労じゃなくてよかった。親切心からの発言とはいえ、晒し者になるのはごめんだ。
「なんだそれは」
「カリンの返しはユニークですね」
和やかな雰囲気に安心したのも束の間。次の瞬間、私はあんぐりと口を開ける事になる。
「そういえば、確認し忘れてた。カリンちゃん、目隠しされて連行されるのは嫌だよね?」
なにをおっしゃる、ヴィニーさん。なんだってそのキラキラのアイドルスマイルと釣り合わない物騒な質問をしてくれたの。
「連行て! 答えるまでもなく嫌だけど。まずはその手荒な手段を選択肢から外してもろて」
思わず心の中での平常運転が転び出たじゃないか。どうしてくれる。
マとかヤとかが頭文字につくおっかねぇ稼業の男たちじゃないんだからさ。
……違うよね? いまさら不安になってきたけど違うよね? 信じてるよ? 「僕を信じろ」なんて言われてもないけども。
「だよね~! ……ってわけで、カリンちゃんは誰と手繋ぎたい?」
『一難去って、また一難。ぶっちゃけありえない!!』ってこういう事か。完全に理解した。おかしいでしょ、その交換条件。
「手?」
て? テ? TE? なぜに? どうして? Why?
私の脳内では宇宙を背景に目をまん丸くしたネコチャンが佇んでいる。なんでこんなクッッッッソ目立つイケメンとお手々繋いで移動せにゃならんのだ!?
びっくりするほどユートピア!
「うふふ、気になる? でもねぇ、この付近はお世辞にも治安がいいとは言えないから、そのほうが安心なんだよ」
人の心読まないでよぉ!!
「ああ、僕たち相手では不満かもしれないが。それでも、徒歩で移動するあいだは誰かとカップルのふりでもしていたほうが安全だからな。女子供は恰好の餌食だが、男連れならまず狙われないはずだ」
不満なんて滅相もないけども、そういう事じゃなくてだな。
「はい、チルとスーの説明した通りです。私たちはみんなこう見えて腕っ節には自信がありますし、万が一暴漢が現れても一捻り、です♡」
パックは微笑んで力こぶを作った。
あー、うん。知ってる。他の人がどうかはわからないけど、パックさんの腕……っていうかキック力がパネェのはなんとなく。アイツ半端ないって!
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