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第5章 ここからは内政のターン!! だがプレイヤーは代理でってルールはOK?
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重い。
体の全方位から圧力を感じる。潰されるほどの圧力ではないが、全周囲が重いと言うのはなかなかにイラっと来るものがある。
感覚としては、美人な女性の情熱的な抱擁ではなく、そうあの姉姫様旧バージョンの様な肉の壁に全身が埋葬されているかのような感覚。
不快なんだが、ここで気を許してしまえば妥協して、これも悪くないと持ってしまう自分を恐怖して、さらに不快になる感覚だ。
そういえば、今俺はどうなっているんだろう。城に戻されて、またなんちゃらの輪っかで拘束されていたりするんだろうか?
あれはきつかった。肉体的な痛みよりも、精神的な攻撃がつらかった。
精神崩壊を目指すやり方だったら、当たりかもしれないな。何せ勇者はただの人に殺される存在じゃない。呪いにも似た再生能力が勇者スキルにはあるのだから。
だが、全方位からの圧力となると、なんちゃらの輪っかの効果ではない。あれはあくまでも手首足首に装着して勇者スキルを害するものだったからだが、今の圧力は体に圧力を変えているだけで、害意は感じない。
イメージだが、なんか体の中にある良くない物をじっくりと絞り出すために、圧力をかけている気がする。
「おい、勇者さまよ~そろそろ目が見えるくらいには回復しているだろうから、ちょっと前を見てみろや」
懐かしい声。可愛らしくも精悍さもなく、くたびれた40代のおっさんの声が脳に響く。
勇者スキルさんだ。消えてはいないと確信していたが、こうやって語り掛けてくると懐かしさと共に、やはり美少女系かクール系にチェンジは効かない物だろうかと考えてしまう。だって渋くも格好よくもないただのおっさんの声だぜ。
存在は確認したかったが、長く聞きたい声と言うわけでもない。
「ああ?なんだよ、外にか弱い美少女でも俺の事を待っているってのか?大体、外ってなんだよ?今の俺の状態ってどうなってんだ」
「あ~相変わらず面倒くせぇ勇者さまだな、おい、いいから外見ろってんだ、後悔しても知らんからな」
「んん?っと誰だありゃ?」
なんか三徹後にやって寝ようとしている中、無理やり瞼を押し上げようとするくらいの努力でもって目を開く。
全体的に黄色っぽい世界の向こう側。
そこではほっそりとした十代中盤くらいの少女戦士が、男にしては細身でありながら筋肉のつきかたから、黒豹を思わせる相手と斬り合っていた。
パット見少女の方は全力だが、黒豹男は手加減しているのがみえみえだった。
「なんであいつら戦ってるんだ、ってまさか優勝賞品は俺とかか?いや、少女戦士が勝つならいいが、おっさん黒豹戦士が勝っちまったら、俺の身は一体どうなるん?あの男はそっち系なん?差別とかじゃなくて、俺はそっちの趣味とかは無いぞ、尻肉とかは柔らかいのが好みだが、あの黒豹男の尻は、絶対ガチガチで殴ったらこっちの手が居たくなるレベルだな、っていうかすみません俺には性別を超えた云々は出来ん!」
「あ~あ~あ~、まったくうるせぇなこの勇者様はよ、そう言うこと言ってる場合なんかお前、ちょっと考えりゃあ、あれが誰で、なんでお前を守ってるか判るだろうによ」
「もちろん判ってる、だがなんであいつは俺を守るとかやってるんだ?あれって姫様なんだからさ、俺なんか放っておけばいいんじゃない?だって確か俺は王族の敵で、人間の敵認定とかされてそうだし、だからって魔族も殺してるから、魔族側になるって事も出来ないただの疫病ネタだぞ、勇者スキルもなんか妹姫さんの呪いみたいなので、ボロボロだったし、良いところないじゃないか」
そう、俺が調子に乗って、勇者ならばこうするとか、勇者の道はこうだとか、勝手に妄想した挙句の今なのだ。姿かたちは以前の10分の1程度になってしまったがそれでも王族の一人だ。王家に戻るのは妹姫と王国戦士との関係でうまくは行かないだろうが、第三勢力として、それこそ教皇領とか、槍の聖騎士の協力を得るとかの方法はある。王国の敵認定された上、足手まといレベルの力しか出せない俺なんか見捨てて、自分の人生をなんであいつは歩まないのだろうか?
俺だったらどうするだろう?
うん、見捨てるな、こんな勇者。
偉そうだし、昔は強かったかも知れんが、今は弱いし、我儘だし、女性にだらしがないし、はっきり言って役立たずなだけじゃなく、足手まといでしかない。
「まぁそんなに自分を卑下しなさんなよ、俺のせいでもあるんだからよ、だが前にも伝えた通り、後1年待てば、以前と同じくらいの勇者スキルは発揮できるようになる、これは長くも短くも出来ない厳然たる事実だ、あの妹姫の使った呪いはそれだけ協力で、一般人なら発狂して自殺するレベルの代物だった、それを解呪するのに時間はかかったがもう少しだ」
「却下!
「ああん?」
「だから却下だ、終了終了、はい終わり、撤収作業に入ってよし、後1年待てだ?お前はあほぉか、今目の前で嬲られている、一応現在でも俺の!俺様の婚約者の女がいる前で、1年?馬鹿言ってんじゃねぇ、どうせ俺の中に居て、こうなるって判って起こしたんだろうが?はっきり言いやがれ、どうなるってんだ?」
「ははは、やっぱりな、お前さんは馬鹿で馬鹿で、どうしようもない、これは救いも何もない、事実として受け止めろ、やり直しなんか効かない、この先で責任転嫁もできねぇぞ、それでもいいなら、教えてやる、今すぐに覚醒すれば勇者スキルの復活は永遠にお預けだ、もうお前の体での勇者スキルの完全復活はありえねぇ、そうなればこの世界は勇者を失い、魔王たちに対して、抵抗するすべを失うだろうな、んでだ、覚醒しても勇者スキルが全くつかえねぇんじゃただの口だけ悪い襤褸カス小僧だ、そこで特別に勇者スキルの今でも使える残滓を調整して、凡そ20%程度の能力を付与してやろう、普段はやらんが、あのお嬢さんに免じてだ、だがな言っとくが20%はずっと20%だ。訓練を重ねたとしても、経験を積んだとしてもお前さんの勇者スキルは20%どまりとなる、それでいいなら、行けばいい」
「ごちゃごちゃと、うるさい、つまりは今戦える体が合って、戦える能力もあって、どうしてか俺を守ろうとしている姉姫様を助けられるんなら、ごちゃごちゃ言っている暇はねぇ、とっとと行かせやがれ!」
あいつはエルフの秘石を使って生き伸びている。それがこうも簡単に死んだりしたら、エルフが可哀そうじゃないか。
全身を包んでいた圧力がふわっと消えていき、代りに空気の流れとか、日差しの温かさとかが感じられるようになる。
鎧も衣服もなく、真っ裸だ。
勇者スキルを使って戦っていたので、筋肉とかは鬱する見えるかな?程度で、こっちの世界の常識だと農夫のも劣る体つきしかない。しかも日本人平均値の物しかついていないので、誰かに自慢できる体では決してない。
正直言えば、悲鳴こそ上げない物のどこか物陰に隠れて服を調達したいと言う欲求が体を支配しそうになるが、それは流石に情けない。姉姫様を救うタイミングで出てきて、すぐに物陰に潜む勇者とか、勇者って言う前に人として、かなり情けなくない?
「勇者様!」
剣を握ったままで、姉姫様が俺に向かって突進してくる。
以前の姉姫様の突進ならば重量級のオーガでも吹き飛ばしそうだが、今は10分の1の圧力しかない。そのおかげでひ弱な俺の体でも受け止めることは出来そうだ。出来そうなんだが、剣は怖い。後先考えず剣もった相手がすぐそばまで走ってくれば。うん、避けるよなぁ普通。
「ああ、感動の場面ではなかったんですの?」
ひらりと避けた俺の足元に、姉姫様のか弱く小さな肢体が転がっている。
耳が僅かに紅潮しているところを見ると、酷い扱いがまんざらでもないらしい。まったくこの姉姫様は姿かたちは違っても変態の素質だけはしっかりと持っていなさる。
「それはまた今度で、今はなんか知らんがこいつらがさきなんだろう?」
「色付き水晶から人が出て来ただと?魔法でもなさそうだが、意味が分からん、どうせこいつも王国の関係者だろう、斬ってしまえ」
なんか今や遥か昔の時代劇悪役定番のセリフ。いや~本当に久しぶりに聞いたな~ってか悪役って似たような事ばっかり言ってるなぁ、演出がもう少し勉強しないから、テンプレばかりになってしまった時代劇は衰退していったんだろうなぁ。とか偉そうに批評していた俺だが、すみません、やっぱり悪者はテンプレで動く生き物らしいです。異世界まできてやっと判りました、すみません時代劇の演出家さんたち。
「えっと、戦っていた人とは違うみたいだけど、こっちが本当の悪役?」
「はい勇者様、勇者様が仰るならばこの方が悪役です!教皇庁のエリートである事を鼻にかけて、随分と偉そうな態度と言動、勇者様を斬ろうだなんて発想はもう最悪のごみクズからでもうまれるはずがございませんわ、と言う事は、教皇庁直属のこの辺りを纏める地区長とは名ばかりの、虫以下の存在の分際ですが、悪い人で間違いないのです」
実は姉姫様にとって、この地区長を騙る偽物が善の人か、悪の人かなどはどうでも良くて、俺が悪い奴と言えば悪い奴で、良い奴じゃないかと言えば良い奴になるのではなかろうか?ちょっとどっかの任侠映画で、親父が白いと言えば烏も白いってセリフに繋がるヤバさだ。
ヤクザは一人一人が怖い訳じゃない。その組織力と、結束力が一般では敵わないから恐ろしいのだ。常識を曲げるくらいの忠誠は、カルトにもつながりかねない。
「んん、じゃあちょっと地区長を騙る偽物さん?なんか知らないけれど、俺の恩人ってか、俺の初めてを奪った人ってか、バーサクしたイエティも裸足で逃げ出す重装甲突撃女をどうしようってんだ?」
うん、そんな女が目の前に居たら逃げよう・・・。前は逃げられずに、美味しく頂かれてしまったからな。あの状態から復帰するには妹姫の力と、貴族の奥さんとメイドさんの尽力があってやっと払しょくされたのだ。
って、この偽物地区長さんそれ、判って襲ってるのかい。この女にちょっかいかけたりしたら、絶対最後に泣きを見るのは自分だぞ?
「何を言っている、そのような女など何処にもいないではないか、居るのはか弱き乙女のみ、お前はいきなり出てきて何を言っているのだ、我は間違いなく教皇庁が認めた正規の地区長であるぞ」
偽物地区長の、か弱き乙女と言う言葉に、姉姫様がそーだそーだと手を挙げて主張しているが、面倒くさそうだったので、デコピン一発で昏倒させておく。
さすが勇者スキル、最大で20%しか使えないらしいが、手加減しても姉姫様をデコピン1発で鎮めることが出来る。。
これなら、偽物地区長が標的だったら、全力デコピンで首から上が空へと登ってしまうかもしれないな。
ってあれ?俺は何で寝てたのに起きたんだっけか。姉姫様が騎士っぽい誰かと戦ってて、そいつに勝っても、人数差で酷い結果になる事確定だったから、後1年が我慢できずに強制的に起きてしまったんだっけか?。
「そういう事は、この偽物地区長さんも悪者だけど、もっと危ないのは騎士の方ってことになるな」
とりあえず、目端に移った騎士たちに対して、片手で1本ずつのデコピンスタイル。別にデコピンでなくても構わないのだけれど、力をうまく調整できないから、昔から慣れたスタイルでやらせてもらう。
高校生の時に部活内デコピン王を二連覇した実力を見るが良い。
「ぎゃ~」「ぐわ~」「おっおい」等等
天性のサディストが聞いても喜ぶかどうか怪しいが、おっさんの悲鳴が木霊する。
俺だって嫌だ。だが、こいつらを全力ぐーぱんなんかしたら、それこそ首から上がばいば~いって逃げ出してしまう。
人を殺す事を躊躇っているわけでもないけれど、無駄に殺していい物だとも思ってない、所詮俺の偽善であって、なんとかなんちゃら団体とかからは販売差し止めとかきそうだけれど、今日のところは大丈夫だろう。知らんけど。
命の尊さとか言われても、前世で40年以上、こっちで20年近く、合わせて60年近く生きているけれど、やっぱり判らない。自分が死にたくないとか、誰かに死んでほしくないとかは良く判る。当たり前だよな、俺は死にたくないし、本当はエルフにだって死んで欲しくはなかった。だけどそれって結局俺個人の想い故の恐怖だったり悲しみだったりするわけだろう。どっかの知らないおっさんが偶然死んでも可哀そうとか、欠片も思わない。非道で人外の生き物なんだろうか俺は・・・。少しだけ思ったけれど、答えなんか出ないまま、なんとなく殺すし、なんとなく殺さないを続けて今に来ている。
異世界は人の命だけでなく、すべての命が軽い。世界を変えて人族を悠久に栄えさせる存在だった勇者の命も軽そうだ。
「さて、偽物さん以外はお前だけだな」
「早いな、俺と同じただの人族の割には強くて速い、しかも圧倒的な実力差で昏倒させられているだけとはな」
「だって、おっさん殺して血とか浴びたくないし、頭ぐしゃっとか見た目も気持ち悪いし感触とか最悪だぞ?だからまぁ死なないなら、死なないんだ、それだけだよ」
「それは良かった、だがここでお前は止めさせておらう」
姉姫様と戦っていた時は背中に装備していた大剣を、今は右手に持ち、それよりも細い量産品の剣は左手に持っている。
大剣と量産品の剣の二刀流、かなり腕力が強くなければ虚仮脅しにもならない。どっちの世界でも、剣技なんて詳しく学ばなかったので、それが珍しいのか、よくある事なのかは判らない、。ただ、舐めちゃいけないことだけは判る。
「勇者と聞いたが、本当か?」
「ああ、恐らく本当だが、今はその力もない、ちょっと訳アリでね、だから見逃してくれるって話にはならんかな?どうせ証人とか皆伸びちゃってるし、停戦合意とかどうよ?」
「大変魅力的な話だが、証人になる人間ならばまだ一人残っているな、あれが居る限り停戦は無しだ、それに無様に昏倒させられた騎士たちの名誉も少しは守ってやらねばな」
「そうかい、なんかつまらないな、無理やり戦わされるとか俺は嫌いなんだけど、気に入らないからぶっ飛ばすとかで、相手を倒せば爽快じゃね?窮屈な世界で窮屈に生きてて楽しいかい」
「戦いは神の教えを広め守るために行う、遊興座興とはもとより次元が違う話だ、戦いを楽しむと言うお前には負けられぬな」
大剣で大ぶりの一撃が来るかと思ったら、来たのは大剣の突き。刃渡りも長く、その切裂くのに有用な刃も使わず、頭上からの斬り降ろしにも便利な重量も使わずに、大剣で突きだと?誘いと見るべきだろうな。
難なく大剣を回避し、次に繰り出される中厚の量産剣は握り部分に、デコピンを放つ。
デコピンってデコじゃない部分に使っても、デコピンって名前でいいのだろうか?手元に放つならデコピンではなくテモピンとかになるのか?
だが、そんな分類化した本とかあるんだろうか?図説デコピンの真価と歴史。正しく学ぶ額指打ちとか?全然読みたくないな・・・。
さて、そんなこんなで俺の動きを捕らえられないおっさん騎士。二刀流とか一瞬ビビったが、結局のところ見た目だけ。
二刀流の熟練者でもなかったようで、全然怖くなかった。見た時の印象通り、大剣と量産型の剣ではバランスが取れなくて、連撃につなげずに、せっかくの二刀流が死んでしまっている。
こいつ、一刀流のが断然強いだろうな。それも大剣なんて色物ではなく、普通の剣で戦えば普通以上に強くなる。因みに今の見た目だけ二刀流は一刀流の普通以下にも負ける。
それでどうやって姉姫を追い詰めていたかと言えば、その時は大剣は使わず量産型の剣のみで戦っていたからだった。
奥の手を出せば出すほど弱くなるって、最低なボスキャラだな。
「おっおい、もう終わりか?」
相手は既に大剣を振る力もなく、ぐったりと今にも倒れそうだ。
慣れているのかいないのか、力いっぱい大剣と量産型の剣を振っていたら、10分もしないで息が切れるのは当たり前だ。
勇者スキル万全の俺だったら、何時間でも全力の一撃を振るうことが出来たが、今では全力それ自体を出すと、骨が折れる気しかしない。
今までどれだけ勇者スキルに助けられてきたか・・・。今となってはうざいアラフォーな声で喋る勇者スキルさんが懐かしい。
もう俺の代では勇者スキル100%は実現しないそうだ。最高で20%の覚醒率。俺が5人いないと本当の勇者には勝てないって事か。
「うるせぇ、ぜぇ、ぜぇ、今日は許すが次回は無いと思え、いいなっ!」
「?いまいち意味が呑み込めんのだが、まっまぁ、判った」
「よぉしっ、戦いは終わりっ、仕切り直しすんぞ!」
倒されてはいたが、致命傷を貰ったわけでもない騎士たちがゾンビの様にわらわらと起き出して来て、大剣遣いに指示を受けて、村の外へと去っていく。
そのゾンビみたいな騎士たちを迎えに千人近くが出迎えているから、まだまだ向こうの戦力には余裕があるって感じかな。
「勇者様・・・あの。先ほどは申し訳ありません、わたくしとしたことが、ついつい嬉しさの衝動に負けてしまいまして、はしたなくも拳を宙に上げて声を出すなんて事・・・」
己の行状を思い出して赤面する姉姫様。この人って見た目超重量級重装甲オーガみたいだったから、やることなす事すべて化け物にしか見えなかったんだが、こうもサイズ感が変わると、少しは可愛く見えるから不思議だ。いや不思議じゃないのか?
所詮、人間なんて心とかどうとか言うけれど、それはまずは見た目が許容範囲に入ってからの話だ。見た目が野生のカバとイボイノシシのあいの子みたいな顔だったら、どんなに心が綺麗でも、そのことに気づく前に排除しているだろうよ。
ただしフツメン以上、イケメンに限るって奴だ。
しかし女性がブスを庇護する時の熱量ってなんだろうな。男がオタク文化を愛するぐらいの熱量が合ったりしないか?あれはいつの日にか自分が落ちていく場所だからとか?最低な見方で言えば、自分達は彼女たちの様なブスじゃないと、そう思いたいからこそ必死で彼女たちを擁護するのだろうか?俺は女の子になった事が無いから、あくまでも想像だ。
「まあいさ、とにかく俺も突然眠りについて、突然起きたんで、事情が全く分からない、何がどうなってるのか、あいつらは一体何で襲い掛かってきたのか、その辺りを知りたいが、なんで一人なんだ?姉姫様ともあろう人が・・・」
城から抜け出した時じは青肌獣耳が数人一緒にいて、個々に逃げてくる時も姉姫様は一人ぼっちと言うことはなかった。いっそ城で腫物に触られる的な扱いをされていた頃よりも、周囲に人はいたんじゃないかと思っていたが。この姫様ぼっち系の呪いでも受けているんだろうか?ランチは便所で食べないと呪いがきつくなるとか?
「ええと、この村の為にですわ、彼等教皇領巡回騎士団が攻めてきまして、正面から戦えば負ける戦など勇者様の教えを受けたわたくしたちがするはずもありません、まずは戦力を保持して、盆地を囲む三か所の簡易砦に分散配置しました。
この村を明け渡しても3ケ月は生きていける準備がしてあります。そのうちに畑に生育中の食料以外に何もない村を諦めてどっかに行くのを待つ計画でしたの」
「それがなんで、ガチンコで一騎打ちしてるんだよ?」
「はぁ、わたくしったらうっかりしてまして、皆を移動させて一息ついた時に、この場所に勇者様を包む琥珀水晶を置いてきてしまったことに気づいたのです。誰かが傷をつけて勇者様の覚醒を損なったり、ましてや珍しいと持って帰って彫刻家にでも売られてしまったらどうしましょう、そう思い戻ってきたのですわ」
覚醒前に削られ、砕かれて研磨までされて指輪状態にでもなってたら、五体満足で復活できたかは怪しいし、彫刻として王国の美術館に展示とかも気分が悪い。
それにどのみち俺の姿を知っている妹姫や王国戦士が、そんな彫刻を無事に飾っておくとも思えない。首を落として、なんとか島のニケ像みたいに首無しになっていたかもと思うと姉姫様を責める謂れはなく、むしろ感謝するべきなのだが。
「馬鹿か!復活するかもわからない相手を守って討ち死にとか、そんな事を俺は教えたつもりはねぇぞ、いつだって生きて生きて生き抜いてから目的を果たす、それが俺の教えだって忘れるな!俺は勇者なんだから、守られるんじゃねぇ、お前らを守る存在なんだからよ、そこんとこ、マジで覚えておけ」
素直に感謝の言葉を述べると言う事も考えたが、それではこいつの褒美にはならない。無理やりにでも罵倒成分を含んでいた方が、この受けも責めも大好物な姉姫様にはご褒
美だろう。ついでに紅潮し始めていた両耳を引っ張って立たせてやる。
うん、ほら、姉姫様、ちょっと恍惚とした表情で身悶えしているし、褒美にはなったな。「それで、今の状況は?」
「はぇ? あっ、あっはい、今の状況ですわよね、今の状況は、王国が不肖わたくしの妹姫と、王国戦士が対立して内乱一歩手前状況ですの、軍部を抑えた王国戦士と、政や貴族を抑え、さらに国の外から力を得ようとしている妹姫派は、実力伯仲で表立っての争いには発展していなかったようですけれど、今回、妹姫派に唆された教皇領の一派が騎士団をここに派遣したことによって、争いの火蓋はきられたようなものですわ」
「なるほどな・・・、ってかあいつらは馬鹿か?なんで俺を監禁した黒幕が対立とか馬鹿としか言いようもないだろう、対立したらどうなるとか考えなかったのか?あれでも一応婚約者同士だろうに」
王国が弱まれば、魔族側が有利になる。良くは知らんが王国以外にも国はあるんだろうが、対魔族戦や対魔王戦の主力は王国だろう。その権力でもって勇者を所属させ、魔王討伐までやらせようとしたんだし。結果はなんかお家騒動の一幕にしかならんかったが。
「青肌獣耳たちは?」
「彼らは一度捕虜になった事で魔族側から疎まれて出奔したのは以前のまま、現在はこの村を拠点にして各地に潜伏し、情報を集めさせてもおりますの」
彼らは魔力さえ尽きなければ、肌の色は自在に変えられる能力を持っている。魔族の町だろうが、人間の街だろうが、種族を偽って潜入しやすいという特性持ちで、それゆえに見つかれば各国各勢力からはスパイとして嫌われる宿命なのだとか。
俺が倒した魔王、と呼ばれていた王国の第一王位継承者、いわゆる王太子に捕まっていたのはその辺りが理由らしい。彼らは一応魔族生まれで、魔族の味方を自負していたらしいが、捕まった際に助けに来たのは俺で、魔族側は助けるそぶりさえなかった。
その時点で魔族ではなく、助けてくれた俺に恩返しする事に決めて、救出作戦までやってくれた。
こいつらにも恩がある。正しい日本人の俺としては、恩には恩を返し、仇には仇を返すを信条としている。気がする。今考えたけど・・・。
「まあ、あいつらにはその内、何かしてやるとして、さっき攻めてきてたあいつらはなんだ?なんか神がどうとか言ってたけど、あいつら狂信者かなにかか?」
「はい、そうですね勇者様を信じることが出来ない哀れな狂信者でしょうね、この青の村の近隣にある教皇領からきた巡回騎士団とか言う狂信者の集団であり、信者たちの鉾と盾と言った所でしょうか?」
「ふ~ん、教皇領の連中ね~別に神様を否定する気はないけども、無理やりはいかんよなぁ、信じたいなら信じればいいし、信じたくなければそれでも構わないってんなら仲良くできなくもないけど、ん?そういえば、教皇領とかってなんかあったような・・・」
まだ大手を振って王国公認勇者をやっていたころに、なんかとても可愛らしい少女を助けた事があったような・・・。その後何度か会って、それなりの仲になったんだっけか。
あいつは元気にしているんだろうか?最後の方では結構過激な事を教えちゃったし、監禁されていた時に妹姫が、何か俺のせいだとかなんとか言ってたな。
「そうですね、信仰は本来自由であり、誰かに強制されるものではない、はい、それも勇者様の教えとして広めていきますわね、それと彼女、ですわね・・・、彼女も勇者様にとても会いたいと言っておりますわ」
思い出した、思い出した。姫巫女様だ。白服金髪でなかなかなプロポーションと綺麗なお目目の可愛い少女。そうそう、あいつは教会関係の人間だった。だが教会の教えに対して反旗を翻す抵抗運動をやって、各国の軍隊に追いつめられたとか聞いたな。
そっか生きていたんだ。良かった。
これ以上、知り合いが死んでいるとは聞かされたくはない。
「彼等は明日にでもまた攻めてくるでしょう、当初の予定通り砦に退いて諦めるのを待ちますか?それとも」
「答えは簡単だ、それともだよ」
体の全方位から圧力を感じる。潰されるほどの圧力ではないが、全周囲が重いと言うのはなかなかにイラっと来るものがある。
感覚としては、美人な女性の情熱的な抱擁ではなく、そうあの姉姫様旧バージョンの様な肉の壁に全身が埋葬されているかのような感覚。
不快なんだが、ここで気を許してしまえば妥協して、これも悪くないと持ってしまう自分を恐怖して、さらに不快になる感覚だ。
そういえば、今俺はどうなっているんだろう。城に戻されて、またなんちゃらの輪っかで拘束されていたりするんだろうか?
あれはきつかった。肉体的な痛みよりも、精神的な攻撃がつらかった。
精神崩壊を目指すやり方だったら、当たりかもしれないな。何せ勇者はただの人に殺される存在じゃない。呪いにも似た再生能力が勇者スキルにはあるのだから。
だが、全方位からの圧力となると、なんちゃらの輪っかの効果ではない。あれはあくまでも手首足首に装着して勇者スキルを害するものだったからだが、今の圧力は体に圧力を変えているだけで、害意は感じない。
イメージだが、なんか体の中にある良くない物をじっくりと絞り出すために、圧力をかけている気がする。
「おい、勇者さまよ~そろそろ目が見えるくらいには回復しているだろうから、ちょっと前を見てみろや」
懐かしい声。可愛らしくも精悍さもなく、くたびれた40代のおっさんの声が脳に響く。
勇者スキルさんだ。消えてはいないと確信していたが、こうやって語り掛けてくると懐かしさと共に、やはり美少女系かクール系にチェンジは効かない物だろうかと考えてしまう。だって渋くも格好よくもないただのおっさんの声だぜ。
存在は確認したかったが、長く聞きたい声と言うわけでもない。
「ああ?なんだよ、外にか弱い美少女でも俺の事を待っているってのか?大体、外ってなんだよ?今の俺の状態ってどうなってんだ」
「あ~相変わらず面倒くせぇ勇者さまだな、おい、いいから外見ろってんだ、後悔しても知らんからな」
「んん?っと誰だありゃ?」
なんか三徹後にやって寝ようとしている中、無理やり瞼を押し上げようとするくらいの努力でもって目を開く。
全体的に黄色っぽい世界の向こう側。
そこではほっそりとした十代中盤くらいの少女戦士が、男にしては細身でありながら筋肉のつきかたから、黒豹を思わせる相手と斬り合っていた。
パット見少女の方は全力だが、黒豹男は手加減しているのがみえみえだった。
「なんであいつら戦ってるんだ、ってまさか優勝賞品は俺とかか?いや、少女戦士が勝つならいいが、おっさん黒豹戦士が勝っちまったら、俺の身は一体どうなるん?あの男はそっち系なん?差別とかじゃなくて、俺はそっちの趣味とかは無いぞ、尻肉とかは柔らかいのが好みだが、あの黒豹男の尻は、絶対ガチガチで殴ったらこっちの手が居たくなるレベルだな、っていうかすみません俺には性別を超えた云々は出来ん!」
「あ~あ~あ~、まったくうるせぇなこの勇者様はよ、そう言うこと言ってる場合なんかお前、ちょっと考えりゃあ、あれが誰で、なんでお前を守ってるか判るだろうによ」
「もちろん判ってる、だがなんであいつは俺を守るとかやってるんだ?あれって姫様なんだからさ、俺なんか放っておけばいいんじゃない?だって確か俺は王族の敵で、人間の敵認定とかされてそうだし、だからって魔族も殺してるから、魔族側になるって事も出来ないただの疫病ネタだぞ、勇者スキルもなんか妹姫さんの呪いみたいなので、ボロボロだったし、良いところないじゃないか」
そう、俺が調子に乗って、勇者ならばこうするとか、勇者の道はこうだとか、勝手に妄想した挙句の今なのだ。姿かたちは以前の10分の1程度になってしまったがそれでも王族の一人だ。王家に戻るのは妹姫と王国戦士との関係でうまくは行かないだろうが、第三勢力として、それこそ教皇領とか、槍の聖騎士の協力を得るとかの方法はある。王国の敵認定された上、足手まといレベルの力しか出せない俺なんか見捨てて、自分の人生をなんであいつは歩まないのだろうか?
俺だったらどうするだろう?
うん、見捨てるな、こんな勇者。
偉そうだし、昔は強かったかも知れんが、今は弱いし、我儘だし、女性にだらしがないし、はっきり言って役立たずなだけじゃなく、足手まといでしかない。
「まぁそんなに自分を卑下しなさんなよ、俺のせいでもあるんだからよ、だが前にも伝えた通り、後1年待てば、以前と同じくらいの勇者スキルは発揮できるようになる、これは長くも短くも出来ない厳然たる事実だ、あの妹姫の使った呪いはそれだけ協力で、一般人なら発狂して自殺するレベルの代物だった、それを解呪するのに時間はかかったがもう少しだ」
「却下!
「ああん?」
「だから却下だ、終了終了、はい終わり、撤収作業に入ってよし、後1年待てだ?お前はあほぉか、今目の前で嬲られている、一応現在でも俺の!俺様の婚約者の女がいる前で、1年?馬鹿言ってんじゃねぇ、どうせ俺の中に居て、こうなるって判って起こしたんだろうが?はっきり言いやがれ、どうなるってんだ?」
「ははは、やっぱりな、お前さんは馬鹿で馬鹿で、どうしようもない、これは救いも何もない、事実として受け止めろ、やり直しなんか効かない、この先で責任転嫁もできねぇぞ、それでもいいなら、教えてやる、今すぐに覚醒すれば勇者スキルの復活は永遠にお預けだ、もうお前の体での勇者スキルの完全復活はありえねぇ、そうなればこの世界は勇者を失い、魔王たちに対して、抵抗するすべを失うだろうな、んでだ、覚醒しても勇者スキルが全くつかえねぇんじゃただの口だけ悪い襤褸カス小僧だ、そこで特別に勇者スキルの今でも使える残滓を調整して、凡そ20%程度の能力を付与してやろう、普段はやらんが、あのお嬢さんに免じてだ、だがな言っとくが20%はずっと20%だ。訓練を重ねたとしても、経験を積んだとしてもお前さんの勇者スキルは20%どまりとなる、それでいいなら、行けばいい」
「ごちゃごちゃと、うるさい、つまりは今戦える体が合って、戦える能力もあって、どうしてか俺を守ろうとしている姉姫様を助けられるんなら、ごちゃごちゃ言っている暇はねぇ、とっとと行かせやがれ!」
あいつはエルフの秘石を使って生き伸びている。それがこうも簡単に死んだりしたら、エルフが可哀そうじゃないか。
全身を包んでいた圧力がふわっと消えていき、代りに空気の流れとか、日差しの温かさとかが感じられるようになる。
鎧も衣服もなく、真っ裸だ。
勇者スキルを使って戦っていたので、筋肉とかは鬱する見えるかな?程度で、こっちの世界の常識だと農夫のも劣る体つきしかない。しかも日本人平均値の物しかついていないので、誰かに自慢できる体では決してない。
正直言えば、悲鳴こそ上げない物のどこか物陰に隠れて服を調達したいと言う欲求が体を支配しそうになるが、それは流石に情けない。姉姫様を救うタイミングで出てきて、すぐに物陰に潜む勇者とか、勇者って言う前に人として、かなり情けなくない?
「勇者様!」
剣を握ったままで、姉姫様が俺に向かって突進してくる。
以前の姉姫様の突進ならば重量級のオーガでも吹き飛ばしそうだが、今は10分の1の圧力しかない。そのおかげでひ弱な俺の体でも受け止めることは出来そうだ。出来そうなんだが、剣は怖い。後先考えず剣もった相手がすぐそばまで走ってくれば。うん、避けるよなぁ普通。
「ああ、感動の場面ではなかったんですの?」
ひらりと避けた俺の足元に、姉姫様のか弱く小さな肢体が転がっている。
耳が僅かに紅潮しているところを見ると、酷い扱いがまんざらでもないらしい。まったくこの姉姫様は姿かたちは違っても変態の素質だけはしっかりと持っていなさる。
「それはまた今度で、今はなんか知らんがこいつらがさきなんだろう?」
「色付き水晶から人が出て来ただと?魔法でもなさそうだが、意味が分からん、どうせこいつも王国の関係者だろう、斬ってしまえ」
なんか今や遥か昔の時代劇悪役定番のセリフ。いや~本当に久しぶりに聞いたな~ってか悪役って似たような事ばっかり言ってるなぁ、演出がもう少し勉強しないから、テンプレばかりになってしまった時代劇は衰退していったんだろうなぁ。とか偉そうに批評していた俺だが、すみません、やっぱり悪者はテンプレで動く生き物らしいです。異世界まできてやっと判りました、すみません時代劇の演出家さんたち。
「えっと、戦っていた人とは違うみたいだけど、こっちが本当の悪役?」
「はい勇者様、勇者様が仰るならばこの方が悪役です!教皇庁のエリートである事を鼻にかけて、随分と偉そうな態度と言動、勇者様を斬ろうだなんて発想はもう最悪のごみクズからでもうまれるはずがございませんわ、と言う事は、教皇庁直属のこの辺りを纏める地区長とは名ばかりの、虫以下の存在の分際ですが、悪い人で間違いないのです」
実は姉姫様にとって、この地区長を騙る偽物が善の人か、悪の人かなどはどうでも良くて、俺が悪い奴と言えば悪い奴で、良い奴じゃないかと言えば良い奴になるのではなかろうか?ちょっとどっかの任侠映画で、親父が白いと言えば烏も白いってセリフに繋がるヤバさだ。
ヤクザは一人一人が怖い訳じゃない。その組織力と、結束力が一般では敵わないから恐ろしいのだ。常識を曲げるくらいの忠誠は、カルトにもつながりかねない。
「んん、じゃあちょっと地区長を騙る偽物さん?なんか知らないけれど、俺の恩人ってか、俺の初めてを奪った人ってか、バーサクしたイエティも裸足で逃げ出す重装甲突撃女をどうしようってんだ?」
うん、そんな女が目の前に居たら逃げよう・・・。前は逃げられずに、美味しく頂かれてしまったからな。あの状態から復帰するには妹姫の力と、貴族の奥さんとメイドさんの尽力があってやっと払しょくされたのだ。
って、この偽物地区長さんそれ、判って襲ってるのかい。この女にちょっかいかけたりしたら、絶対最後に泣きを見るのは自分だぞ?
「何を言っている、そのような女など何処にもいないではないか、居るのはか弱き乙女のみ、お前はいきなり出てきて何を言っているのだ、我は間違いなく教皇庁が認めた正規の地区長であるぞ」
偽物地区長の、か弱き乙女と言う言葉に、姉姫様がそーだそーだと手を挙げて主張しているが、面倒くさそうだったので、デコピン一発で昏倒させておく。
さすが勇者スキル、最大で20%しか使えないらしいが、手加減しても姉姫様をデコピン1発で鎮めることが出来る。。
これなら、偽物地区長が標的だったら、全力デコピンで首から上が空へと登ってしまうかもしれないな。
ってあれ?俺は何で寝てたのに起きたんだっけか。姉姫様が騎士っぽい誰かと戦ってて、そいつに勝っても、人数差で酷い結果になる事確定だったから、後1年が我慢できずに強制的に起きてしまったんだっけか?。
「そういう事は、この偽物地区長さんも悪者だけど、もっと危ないのは騎士の方ってことになるな」
とりあえず、目端に移った騎士たちに対して、片手で1本ずつのデコピンスタイル。別にデコピンでなくても構わないのだけれど、力をうまく調整できないから、昔から慣れたスタイルでやらせてもらう。
高校生の時に部活内デコピン王を二連覇した実力を見るが良い。
「ぎゃ~」「ぐわ~」「おっおい」等等
天性のサディストが聞いても喜ぶかどうか怪しいが、おっさんの悲鳴が木霊する。
俺だって嫌だ。だが、こいつらを全力ぐーぱんなんかしたら、それこそ首から上がばいば~いって逃げ出してしまう。
人を殺す事を躊躇っているわけでもないけれど、無駄に殺していい物だとも思ってない、所詮俺の偽善であって、なんとかなんちゃら団体とかからは販売差し止めとかきそうだけれど、今日のところは大丈夫だろう。知らんけど。
命の尊さとか言われても、前世で40年以上、こっちで20年近く、合わせて60年近く生きているけれど、やっぱり判らない。自分が死にたくないとか、誰かに死んでほしくないとかは良く判る。当たり前だよな、俺は死にたくないし、本当はエルフにだって死んで欲しくはなかった。だけどそれって結局俺個人の想い故の恐怖だったり悲しみだったりするわけだろう。どっかの知らないおっさんが偶然死んでも可哀そうとか、欠片も思わない。非道で人外の生き物なんだろうか俺は・・・。少しだけ思ったけれど、答えなんか出ないまま、なんとなく殺すし、なんとなく殺さないを続けて今に来ている。
異世界は人の命だけでなく、すべての命が軽い。世界を変えて人族を悠久に栄えさせる存在だった勇者の命も軽そうだ。
「さて、偽物さん以外はお前だけだな」
「早いな、俺と同じただの人族の割には強くて速い、しかも圧倒的な実力差で昏倒させられているだけとはな」
「だって、おっさん殺して血とか浴びたくないし、頭ぐしゃっとか見た目も気持ち悪いし感触とか最悪だぞ?だからまぁ死なないなら、死なないんだ、それだけだよ」
「それは良かった、だがここでお前は止めさせておらう」
姉姫様と戦っていた時は背中に装備していた大剣を、今は右手に持ち、それよりも細い量産品の剣は左手に持っている。
大剣と量産品の剣の二刀流、かなり腕力が強くなければ虚仮脅しにもならない。どっちの世界でも、剣技なんて詳しく学ばなかったので、それが珍しいのか、よくある事なのかは判らない、。ただ、舐めちゃいけないことだけは判る。
「勇者と聞いたが、本当か?」
「ああ、恐らく本当だが、今はその力もない、ちょっと訳アリでね、だから見逃してくれるって話にはならんかな?どうせ証人とか皆伸びちゃってるし、停戦合意とかどうよ?」
「大変魅力的な話だが、証人になる人間ならばまだ一人残っているな、あれが居る限り停戦は無しだ、それに無様に昏倒させられた騎士たちの名誉も少しは守ってやらねばな」
「そうかい、なんかつまらないな、無理やり戦わされるとか俺は嫌いなんだけど、気に入らないからぶっ飛ばすとかで、相手を倒せば爽快じゃね?窮屈な世界で窮屈に生きてて楽しいかい」
「戦いは神の教えを広め守るために行う、遊興座興とはもとより次元が違う話だ、戦いを楽しむと言うお前には負けられぬな」
大剣で大ぶりの一撃が来るかと思ったら、来たのは大剣の突き。刃渡りも長く、その切裂くのに有用な刃も使わず、頭上からの斬り降ろしにも便利な重量も使わずに、大剣で突きだと?誘いと見るべきだろうな。
難なく大剣を回避し、次に繰り出される中厚の量産剣は握り部分に、デコピンを放つ。
デコピンってデコじゃない部分に使っても、デコピンって名前でいいのだろうか?手元に放つならデコピンではなくテモピンとかになるのか?
だが、そんな分類化した本とかあるんだろうか?図説デコピンの真価と歴史。正しく学ぶ額指打ちとか?全然読みたくないな・・・。
さて、そんなこんなで俺の動きを捕らえられないおっさん騎士。二刀流とか一瞬ビビったが、結局のところ見た目だけ。
二刀流の熟練者でもなかったようで、全然怖くなかった。見た時の印象通り、大剣と量産型の剣ではバランスが取れなくて、連撃につなげずに、せっかくの二刀流が死んでしまっている。
こいつ、一刀流のが断然強いだろうな。それも大剣なんて色物ではなく、普通の剣で戦えば普通以上に強くなる。因みに今の見た目だけ二刀流は一刀流の普通以下にも負ける。
それでどうやって姉姫を追い詰めていたかと言えば、その時は大剣は使わず量産型の剣のみで戦っていたからだった。
奥の手を出せば出すほど弱くなるって、最低なボスキャラだな。
「おっおい、もう終わりか?」
相手は既に大剣を振る力もなく、ぐったりと今にも倒れそうだ。
慣れているのかいないのか、力いっぱい大剣と量産型の剣を振っていたら、10分もしないで息が切れるのは当たり前だ。
勇者スキル万全の俺だったら、何時間でも全力の一撃を振るうことが出来たが、今では全力それ自体を出すと、骨が折れる気しかしない。
今までどれだけ勇者スキルに助けられてきたか・・・。今となってはうざいアラフォーな声で喋る勇者スキルさんが懐かしい。
もう俺の代では勇者スキル100%は実現しないそうだ。最高で20%の覚醒率。俺が5人いないと本当の勇者には勝てないって事か。
「うるせぇ、ぜぇ、ぜぇ、今日は許すが次回は無いと思え、いいなっ!」
「?いまいち意味が呑み込めんのだが、まっまぁ、判った」
「よぉしっ、戦いは終わりっ、仕切り直しすんぞ!」
倒されてはいたが、致命傷を貰ったわけでもない騎士たちがゾンビの様にわらわらと起き出して来て、大剣遣いに指示を受けて、村の外へと去っていく。
そのゾンビみたいな騎士たちを迎えに千人近くが出迎えているから、まだまだ向こうの戦力には余裕があるって感じかな。
「勇者様・・・あの。先ほどは申し訳ありません、わたくしとしたことが、ついつい嬉しさの衝動に負けてしまいまして、はしたなくも拳を宙に上げて声を出すなんて事・・・」
己の行状を思い出して赤面する姉姫様。この人って見た目超重量級重装甲オーガみたいだったから、やることなす事すべて化け物にしか見えなかったんだが、こうもサイズ感が変わると、少しは可愛く見えるから不思議だ。いや不思議じゃないのか?
所詮、人間なんて心とかどうとか言うけれど、それはまずは見た目が許容範囲に入ってからの話だ。見た目が野生のカバとイボイノシシのあいの子みたいな顔だったら、どんなに心が綺麗でも、そのことに気づく前に排除しているだろうよ。
ただしフツメン以上、イケメンに限るって奴だ。
しかし女性がブスを庇護する時の熱量ってなんだろうな。男がオタク文化を愛するぐらいの熱量が合ったりしないか?あれはいつの日にか自分が落ちていく場所だからとか?最低な見方で言えば、自分達は彼女たちの様なブスじゃないと、そう思いたいからこそ必死で彼女たちを擁護するのだろうか?俺は女の子になった事が無いから、あくまでも想像だ。
「まあいさ、とにかく俺も突然眠りについて、突然起きたんで、事情が全く分からない、何がどうなってるのか、あいつらは一体何で襲い掛かってきたのか、その辺りを知りたいが、なんで一人なんだ?姉姫様ともあろう人が・・・」
城から抜け出した時じは青肌獣耳が数人一緒にいて、個々に逃げてくる時も姉姫様は一人ぼっちと言うことはなかった。いっそ城で腫物に触られる的な扱いをされていた頃よりも、周囲に人はいたんじゃないかと思っていたが。この姫様ぼっち系の呪いでも受けているんだろうか?ランチは便所で食べないと呪いがきつくなるとか?
「ええと、この村の為にですわ、彼等教皇領巡回騎士団が攻めてきまして、正面から戦えば負ける戦など勇者様の教えを受けたわたくしたちがするはずもありません、まずは戦力を保持して、盆地を囲む三か所の簡易砦に分散配置しました。
この村を明け渡しても3ケ月は生きていける準備がしてあります。そのうちに畑に生育中の食料以外に何もない村を諦めてどっかに行くのを待つ計画でしたの」
「それがなんで、ガチンコで一騎打ちしてるんだよ?」
「はぁ、わたくしったらうっかりしてまして、皆を移動させて一息ついた時に、この場所に勇者様を包む琥珀水晶を置いてきてしまったことに気づいたのです。誰かが傷をつけて勇者様の覚醒を損なったり、ましてや珍しいと持って帰って彫刻家にでも売られてしまったらどうしましょう、そう思い戻ってきたのですわ」
覚醒前に削られ、砕かれて研磨までされて指輪状態にでもなってたら、五体満足で復活できたかは怪しいし、彫刻として王国の美術館に展示とかも気分が悪い。
それにどのみち俺の姿を知っている妹姫や王国戦士が、そんな彫刻を無事に飾っておくとも思えない。首を落として、なんとか島のニケ像みたいに首無しになっていたかもと思うと姉姫様を責める謂れはなく、むしろ感謝するべきなのだが。
「馬鹿か!復活するかもわからない相手を守って討ち死にとか、そんな事を俺は教えたつもりはねぇぞ、いつだって生きて生きて生き抜いてから目的を果たす、それが俺の教えだって忘れるな!俺は勇者なんだから、守られるんじゃねぇ、お前らを守る存在なんだからよ、そこんとこ、マジで覚えておけ」
素直に感謝の言葉を述べると言う事も考えたが、それではこいつの褒美にはならない。無理やりにでも罵倒成分を含んでいた方が、この受けも責めも大好物な姉姫様にはご褒
美だろう。ついでに紅潮し始めていた両耳を引っ張って立たせてやる。
うん、ほら、姉姫様、ちょっと恍惚とした表情で身悶えしているし、褒美にはなったな。「それで、今の状況は?」
「はぇ? あっ、あっはい、今の状況ですわよね、今の状況は、王国が不肖わたくしの妹姫と、王国戦士が対立して内乱一歩手前状況ですの、軍部を抑えた王国戦士と、政や貴族を抑え、さらに国の外から力を得ようとしている妹姫派は、実力伯仲で表立っての争いには発展していなかったようですけれど、今回、妹姫派に唆された教皇領の一派が騎士団をここに派遣したことによって、争いの火蓋はきられたようなものですわ」
「なるほどな・・・、ってかあいつらは馬鹿か?なんで俺を監禁した黒幕が対立とか馬鹿としか言いようもないだろう、対立したらどうなるとか考えなかったのか?あれでも一応婚約者同士だろうに」
王国が弱まれば、魔族側が有利になる。良くは知らんが王国以外にも国はあるんだろうが、対魔族戦や対魔王戦の主力は王国だろう。その権力でもって勇者を所属させ、魔王討伐までやらせようとしたんだし。結果はなんかお家騒動の一幕にしかならんかったが。
「青肌獣耳たちは?」
「彼らは一度捕虜になった事で魔族側から疎まれて出奔したのは以前のまま、現在はこの村を拠点にして各地に潜伏し、情報を集めさせてもおりますの」
彼らは魔力さえ尽きなければ、肌の色は自在に変えられる能力を持っている。魔族の町だろうが、人間の街だろうが、種族を偽って潜入しやすいという特性持ちで、それゆえに見つかれば各国各勢力からはスパイとして嫌われる宿命なのだとか。
俺が倒した魔王、と呼ばれていた王国の第一王位継承者、いわゆる王太子に捕まっていたのはその辺りが理由らしい。彼らは一応魔族生まれで、魔族の味方を自負していたらしいが、捕まった際に助けに来たのは俺で、魔族側は助けるそぶりさえなかった。
その時点で魔族ではなく、助けてくれた俺に恩返しする事に決めて、救出作戦までやってくれた。
こいつらにも恩がある。正しい日本人の俺としては、恩には恩を返し、仇には仇を返すを信条としている。気がする。今考えたけど・・・。
「まあ、あいつらにはその内、何かしてやるとして、さっき攻めてきてたあいつらはなんだ?なんか神がどうとか言ってたけど、あいつら狂信者かなにかか?」
「はい、そうですね勇者様を信じることが出来ない哀れな狂信者でしょうね、この青の村の近隣にある教皇領からきた巡回騎士団とか言う狂信者の集団であり、信者たちの鉾と盾と言った所でしょうか?」
「ふ~ん、教皇領の連中ね~別に神様を否定する気はないけども、無理やりはいかんよなぁ、信じたいなら信じればいいし、信じたくなければそれでも構わないってんなら仲良くできなくもないけど、ん?そういえば、教皇領とかってなんかあったような・・・」
まだ大手を振って王国公認勇者をやっていたころに、なんかとても可愛らしい少女を助けた事があったような・・・。その後何度か会って、それなりの仲になったんだっけか。
あいつは元気にしているんだろうか?最後の方では結構過激な事を教えちゃったし、監禁されていた時に妹姫が、何か俺のせいだとかなんとか言ってたな。
「そうですね、信仰は本来自由であり、誰かに強制されるものではない、はい、それも勇者様の教えとして広めていきますわね、それと彼女、ですわね・・・、彼女も勇者様にとても会いたいと言っておりますわ」
思い出した、思い出した。姫巫女様だ。白服金髪でなかなかなプロポーションと綺麗なお目目の可愛い少女。そうそう、あいつは教会関係の人間だった。だが教会の教えに対して反旗を翻す抵抗運動をやって、各国の軍隊に追いつめられたとか聞いたな。
そっか生きていたんだ。良かった。
これ以上、知り合いが死んでいるとは聞かされたくはない。
「彼等は明日にでもまた攻めてくるでしょう、当初の予定通り砦に退いて諦めるのを待ちますか?それとも」
「答えは簡単だ、それともだよ」
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