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序章

はじめに言っておきたいことがある

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まずそうだな、異世界転生のテンプレートでも言ってみる事にしよう。
「どうして、こうなった?」
 俺は確かに、転生した。
 元の世界は、まぁこれもありきたりすぎてなんなんだが、生粋の日本からの転生。
 転移じゃなくてよかった。
異世界チートとかあっても、まず言語が通じないせいで詰んでいただろう。
 小学五年生から足掛け8年以上英語の授業を受けていても、世界言語に近い言葉が覚えられなかった俺だ。
 発音も判らない異世界言語を覚えるのに数年かけていたら、良くて餓死か、悪ければ魔物や怪物と同列の扱いとして殺されていただろう。
 ん?そんなの異世界チートのターンで神様にねだれば良かっただろうって?
 残念ながら、俺が日本国からこっちの世界に転生してきた時に、いわゆる神様との出会いってシチュエーションは含まれていなかったんだな、これが。
 だが、チートスキル獲得ターンはあった、多分。あったらしい・・・。
 だってよぉ、良く良く考えてみてくれよ、
 確かに日本で死んだときはアラフォーとか呼ばれる世代で、ある程度の分別はつく年頃さ。
 突然死んで異世界転生、うんうん、信じてなかったけどあるんだ~へぇ~
ってノリで、多分チートスキル選んで転生を決定したんだよ、恐らくな。
だけど、転生ってさ、つまり、アラフォーが一気に0歳児になるわけよ。
生まれた瞬間で、おぎゃぁぁな訳だよな。
アラフォーの理性なんか一気に吹っ飛んで、0歳児の思考に支配されるんだこれが。
体も0歳、思考も0歳。そうなるとよ、自分が何かのスキルを選んだって事はおぼろげながらに覚えていたし、その空間には神様らしきアドバイザーはいなかった事も覚えていたけど、それ以上の事はあるきっかけが来るまでは、全く忘れていた。
 ともすれば、自分が少年ではなく、中身がおっさんだってのも忘れがちだ。
 まぁ昔の話をしても仕方がない。
 俺が、今、言いたいのはっ!
「どうしてこうなった・・・」
 手首も足首も死ぬほど痛い。
 ひんやりとした、恐らく何かの金属の輪っかが手首足首を拘束しているのが判る。
 輪っかは燻し銀の輝きを持つ鎖で、部屋の壁にめり込む様に固定されている。
 うん、俺の知識的に言えば、この状態は悪者に囚われて、これから一枚一枚衣服をはぎ取られるお姫様ヒロインのポジション。
 いわゆる、中世人質拷問スタイルだ。
 俺って、紆余曲折あったけど、それでも確か国から公式の勇者って事になっていたよなぁ。
 小盗賊から、大盗賊まで結構な悪者を倒したり、魔物が襲い掛かってくるから薙ぎ払ったりしていた筈。
 いつだったか、魔王の幹部軍が攻め寄せた地方都市を守った時には、領主一族、男も女も全力で感謝を表してくれていたっけ。
 それに、俺が勇者だって公式に国に認められたと同時に、まだ竜とか魔王とかにさらわれていない姉姫様が婚約者にもなった。
 どっかのゲームのオープニングみたいに、攫われることなく結局この姉姫様は一度も城を出ることなく、きっちり俺が守った。
 彼女が人質にならない様に、がっつり魔王討伐も果たしたから、これで彼女が攫われたり、人質になる事はもはやないだろう。
うん?魔王討伐・・・?
その辺りから、記憶が怪しいぞ。
確かに魔王討伐は成功した。
魔王城とか呼ばれている、どっかの城に乗り込んで、そこで一番偉い奴出せや~とかって、めっさクレーマーみたいなこと言っていたら、怪しい術で操られた元人間の騎士とか、怪しい宗教にのめり込んだような服装の悪の大神官とかを蹴散らし、肌の色が青っぽいせいで差別されていた人たちを救出する事もした。うん、やっぱり人種とか肌の色とか、性癖とかで差別しちゃいけないよね。俺は勇者だし。
最後にボスとして残っていた魔王の首を、必殺の勇者スキルを使って飛ばしたのは間違いない。
その後で、何故か魔王戦には一緒に居なかった、王国戦士と、婚約者である姉姫様の妹で、救世の巫女とか呼ばれている回復担当の妹姫様が魔王城の外で、笑顔で出迎えてくれたことまでは覚えている。
次の記憶が、貼り付け状態の今だ。
「何故だ、どうしてこうなった!!!」
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