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第5章 救出作戦で魔王プレイとかちょっとだけ快感♪ 代償は勿論あったけど・・・

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 獣臭い臭いが充満する天蓋の中で、いくつかの燭台に照らされた先には、ちょっと想像していたのとは斜め上の状況が生まれていた。
 荒い息を吐きながら、長い金髪と白い肌を煌めかせ、胸元も含めてスレンダーなラインを持つ上級悪魔な少女が、口元を真っ赤に染め上げ自らが殺した、階級は同じ上級悪魔を見下ろしている。
 手は黒っぽい皮で作られた腕輪の様な拘束具で後ろ手にされているのは、確かにこの美しい上級悪魔な少女が囚われの身であった証拠だろう。
 一糸まとわず、装身具は腕輪だけと言う状況は、想像だけどつまり、げっへっへ、兄貴~殺す前に少しだけ味見してもいいでガスよねぇ~的な流れで襲われていたからだろう。
 砦を出る前に、聞こえないふりと理解できないふりで、こっそり聞いていた所、どうやらこの上級悪魔少女と跡継ぎ少年は双方ともに牛魔とか言う、俺的にはつまりミノタウロスだろう?みたいな奴に散々嬲られて、純潔を散らした直後だったはずだ。
 その夜に、味見で訪れた上級悪魔に拘束された状態で、唯一の武器である、口の中にある未発達な小さい八重歯の様な牙で、返り討ちにするとか、どこまで恐ろしいんだ上級悪魔って奴は。この先上級悪魔とも対峙しなければならない時に、俺はうまくやれるんだろうか?
「ん?インプ・・・えっと、えぇぇ?なんで最下級のインプがここに居るのっ、上級悪魔が私を犯そうとして入ってくるのは想像してたし、その通りに返り討ちにしてやったけど、なんでインプ?ちょっと、どういう事かしら!答え次第では即座に抹消するけどいいわよね、普通の上級悪魔ならインプに肌とか痴態を見られたら、抹消が当たり前だけどこんな状況だし、インプでも篭絡出来たらこの先役に立つかもしれないし、だから、まぁ答えによっては消してあげなくもないけど、あんたは何?」
 やっぱり、上級悪魔はインプを同じ悪魔としては見ていない。普通同格の存在相手だったら貴方は誰?と聞くのが普通だと思うのだが、あんたは何?と聞いて来た。完全に物扱いで、頭に来るけれど、だが、ここでイラついてはいけない。
 上級悪魔の小娘お嬢さんはこっちを生き物とも認識していた怪しかった。泥が服についただけで、その場にいたインプを皆殺しにしようとか考えたんだ。こっちのお嬢さんのがあからさまに身長も高く、すぐには殺さないだけの分別もあるらしい。
 ならばせいぜい高く恩を売りつけられればと思うのが、一般的な考えだろう。けど、俺はここでただこの上級悪魔のお嬢さんを救出するだけではもったいないと考える。
 元々、俺はこの世界に黒猫の力によってイレギュラーに放り込まれた存在で、その身には黒猫の呪いとまでは行かないが、使命がある。
 ただ出世してそこそこの立場から、円満に寿命を迎えるなんてことは許されていない。所詮インプだからあがいても目的達成とか無理ゲーだろうと思って今までは考えてなかったけど、ファル先生の指導と、魔石を得たことによる自信から、少しは使命についても動くことを決める。
 だから、俺は一つの賭けに出ることにした。
「おい小娘、さっきから黙ってきていれば篭絡だぁ抹消たぁ偉い言い草だが、誰に物を言っているか理解していないようだな、今は敢えてこの格好だが、それは仮の姿、真の我は魔王の1人だぞ」
 一瞬の空白。時が止まると言うのを始めてみた。何かの術式で時間が停止しのではなく、俺の言葉の意味が、俺の言葉の聞こえる範囲内の存在に与えた影響の結果だ。
「はぁ?何言ってくれてんのインプ風情がっ、こっちが少し優しくしてみればつけあがりやがって、だから最下層のインプとか嫌いなのよ、なのに世間では労働力が大事とか言ってこいつらみたいな馬鹿を家畜みたいにしてさ、さて、馬鹿でアホっぽい事しか言わない変な害虫はさくっと抹消するけど、しょうがないしょうがない、どこのインプか知らないし、敵のインプなら殺しとけば少しは嫌がらせにでもなるかも?」
 気楽な言い方で、お嬢さん悪魔が術式をゆっくりと構築する。威力が高く構築に失敗すると自身がダメージを負う程の術式の為、まだ若いお嬢さん悪魔は慎重に慎重に術市区を編んでいく。最低最弱のインプにその内容を読み解かれている、なんて事は欠片も思うことなく。
 術式で構築され導き出される破壊力は、先日の中級悪魔の比ではない。戦闘経験なんて皆無だろうに、インプを抹消するには十分すぎるほどの術式が構築されていく。
 だが、遅い。
 構築された術式に干渉するのに必要な物は、相手の術式を即座に見極め、その術式に対して改変させる式を追加する事。同じ術式を相手にぶつけて相殺するのは、それが失敗した時の最後の手だ。
 判りやすく言うと相手が必死になって構築している式に、たった1つだけ、マイナスとかプラスを書き足すだけで、その術式は崩壊する。崩壊して雲散霧消とならずに、その発生した術式の力を相手に向けて反射させるのがファル先生の教えだ。
 力が無ければ、相手の力を借りればいいじゃない?って、どっかの誰かが言ったとか言わないとか?
非力なインプが、こちらを舐めきっているその瞬間だけ使える必殺技。術式反射だ。
「ふっ」 
 すっごく緊張して、それこそ目の前のお嬢様悪魔くらい緊張しつつも、あくまでも余裕ぶって彼女の構築している術式に、術式反射の因子を飛ばす。これでまったく効果が無かったり、効果がありすぎてお嬢様悪魔が消炭になったりとかしたら最悪だ。
術式反射の効果が無ければ、俺が消炭になるだろうし、お嬢様悪魔が消炭になったら、今の今は助かるけれど、その先の未来は悲惨になる。
 俺はインプだからってあきらめずに、成りあがる必要があるんだ。
「えっ!えええぇ!」
 ファル先生の教育の賜物で、初めて使った俺の術式反射は、ちゃんとお嬢様悪魔の力を制御した。彼女の手元に溜まった魔力は書き換えられた術式の指示に従い、俺を狙う光球にはならずに、その場で四散。一部が紫色の小さな稲妻となり、彼女の体の周囲を飛んで消えた。
 唯一の失敗と言えが、飛びちった紫色の小さな稲妻の制御は全く想定しなかったため、豪奢な金髪のあちこちが焼け焦げて、とても悲惨な事になったくらいだ。
 これ、短い部分に合わせると男の子レベルのベリーショートになってしまうが、仕方がないよな?こっちがインプだからってあっさり殺しに来たんだから、それぐらいで済んでありがとうございますだろう?
「無駄なことをするでない小娘、我は元魔王ぞ、今でこそこの身だが、その方ごときを塵芥に変える事など造作も無き事だ、判ったら我に服従し、その配下となれ、さすれば逃がしてやろう」
 まだ魔王プレイ継続中でした・・・。って一度やってみたかったんだよ!いいだろう?どうせこの身では勇者なんか死んだって無理なんだし、でも魔王なら悪魔側っぽいし、見た目が弱そうでも実はものすごく強い魔王とか滾るじゃん!
 もしものもしも、上級悪魔が仲間になったりなんかしたら、これから先だいぶ楽に生きえる筈。それに魔王と言えば、浪漫だやっほいのハーレムプレイも憧れるよな。女性幹部とか集めてお風呂で湯煙で光線バリバリの見せられないよシーンとか・・・。
「何言ってんのこいつ、あたしが術式失敗したからっていい気になってバッカじゃないの、今度こそ消炭に変えてやるんだから!」
 再度お嬢様悪魔が術式の構築を開始する。今度は先ほどの術式と違い正確性重視の為か、堅実で安定の炎の術式だった。中級悪魔相手にはあっつい緑茶程度の破壊力しかないが、インプ相手なら火あぶりの刑くらいの効果がある。
 うん、このお嬢様悪魔は莫迦じゃない。最初は怒りに任せて最大級の術式を構築したけれど、それが失敗すると直ぐに、インプであれば殺せる程度の簡単な術式に即座に変えて来る。全裸で手足を皮の輪っかで拘束されているにも関わらず、もしかしたら味方かもしれない相手に対して、確認さえせずにという前提については・・・、仕方がない。それだけインプという立場が最底辺だって話だ。
「欠伸がでるな・・・」
 もちろんそんな事は全然ない。簡易な術式に変えたせいで、構築の速度も正確性も格段に跳ね上がっている。それに対して介入して反射する術式にするにはその性質を見極めて、こちらも最適な因子を打ち込む必要がある。
「ええええぇ、なんでよ!」
 間に合った。なんとかお嬢様悪魔が構築した術式に因子を打ち込んで、術式反射した。
 今度も彼女の目前で術式は崩壊四散し、余った魔力は紫電となって彼女を舐めつくした後に消えた。
「抵抗は無駄だよ小娘、しかしいくら小娘でも、一応淑女だろう?いつまでも扇情的な姿で焦りまくっているのを見ていると興がそがれる、これでも着ると良いぞ」
 実はずっと背後にいた、いつものインプがシーツを元に、なんとかワンピースと言い張れば、言い張れる様なものを作成していたのを俺は見ていた。
もちろん簡易的な物で、即席ハロウィン仮装と同程度位だけれど、無いよりはましだ。
 なにせこちとらインプだ。直径1ミリにだってドギマギする中身男子中学生なインプだぞ?禁欲生活長いって言うか、こっちの世界来てからずっと禁欲状態で、唯一癒し系はファル先生だけど、手のひらサイズになった1回以外は米粒サイズ。巨乳とか貧乳とか語れる話ではない。まっそれでも俺にとってファル先生は最愛の人だけど!俺の嫁としてなっ
「まぁもらっておくわ、って言うかアンタたち本当に何なのよ?魔王とかなんとか言ったら、大声上げて敵が来るように叫ぶからね」
 それをされたら、俺たちは大人数に囲まれて滅多刺しにされて死亡確定だ。ファル先生の教えてくれた術式に対する技は、相手が1人である事が前提で他人数との戦闘には使えない。術式を操る人間が複数いて、その1人を無力化しても残りの奴に殺されてしまう。
 例えば数十の悪魔が1つの巨大な術式を構築して極大術式を編んでいたら、それを無力化して、そこで生じた魔力を数十の悪魔に反射させることは可能だ。対応できるのは1回に1つの術式だけ。
 必殺技と言える格好よさはないけれど、最低最弱のインプが殺されないための術式としてなら十分おつりがくるほどだ。
「魔王云々は今はいい、ええと確か砦の守将のズガンだっけか?その命令であんたを救いに来た、味方だ」
「なんだ、それならそうと早く言いなさいよ、逃げるんでしょ?お父様も他国で謀殺されたみたいだし、砦に戻っても仕方がないわよ?」
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