商い幼女と猫侍

和紗かをる

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第一章「とりさんのはなし 壱」

とりさんのおはなし 壱

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藤兵衛が去ってから二日後の朝。
 けたたましい音で正嗣は起きる事になった。
 季節はようやく春を迎えようかと言う日で、朝の空気はひんやりと冷たく薄い夜着ではきついのだが、自身の衣食よりも動物たちを優先する正嗣は夜着などに金をかけてはいない。
 ダンダンと戸を叩く音がする。
 仕方なく布団をめくり立ち上がろうとする正嗣に迷惑そうな顔をする猫二匹。暖かいところ等他になく、正嗣と猫たち、お互いがお互いを温めていたのだ。
 刀を探して手を伸ばすと柔らかな感触。犬達の当主役、白犬のミツキがのっそりと座って正嗣の目覚めを待っている。その背後では十二匹の犬たちが揃いもそろって黙って座り、当主であるミツキの動きを見つめている。
 本来であれば吼えて騒いでもおかしくない状況なのだが、どの犬も一声も出さない。
 別に特別な訓練などしていないのだが、正嗣が父親の死後、夜には屋敷内に犬たちを入れるようなってから、彼らはいつもこんな感じだ。
 屋敷内を汚されては敵わないと、三日に一度は体を洗うのだが、その時も吼えたりはしゃいだりはしない。
 少しははしゃいで甘えてきてもよいのにとは思う正嗣である。
「昨日は伊勢屋さんがうまくやったと思っていたのだがな」
 伊勢屋さんの話では、本来借財関係の商い人が大挙して押し寄せるのは昨日の予定だったが、それは朱桜の槍と引き換えに伊勢屋さんが何とかしてくれたと安心していた正嗣だった。
 ダンダンダン、ドンドンドンと音は更に苛烈に打ち鳴らされている。
 この調子で戸を叩けば、戸か手のどちらかを傷めてしまうのだが、音がやむことはない。
 ミツキの守る刀を腰にさし、正嗣、ゆっくり表に向かう。その動きに合わせ、ミツキ以下十二匹の犬たちも二列縦隊でつづく。
 猫たちはそんな動きに惑わされること無く、布団の上で丸くなることを選んでいた。
「そんなに叩かんでも逃げはしないぞ」
 正面の入り口に出る。
 正嗣の家には門などという大層なものは無く、入り口も簡素で人が二人もたてば窮屈になる。それが正嗣が顔出した時には六人の人が、すし詰め状態で並んで立っていた。
「遅い!殿様よりのお達しである、渡会兵衛尉正嗣、この度、動物を弄び奉公を懈怠せし事、はなはだ武士の道にあらずと断ず、ついては藤堂の家を出、久居所払いと致す、以上きっと申し渡す、謹んで承るよう」
 正面にいる武士と目があった瞬間に、殿様の紋、藤堂蔦が押された文を見せ付けられ、すたばやく膝をつき頭をたれる。関が原での勲功から渡会家は殿の言上にも両膝を地面につけること無く聞く事が許されている。これは戦場でのすばやい往来を賞した藤堂高虎様からのじきじきの沙汰だ。なので片膝たちの正嗣は決して非礼ではない。
「ははっ謹んで拝命致します」
 間髪いれず答える正嗣。
 心中、いきなりそんな事言われても即退去など出来ない、とか、これは某だけか、他家はどうなっている、親類縁者まで巻き込まれてはおるまいな、とか聞きたい事もあるのだが、それは武士の習い。とにかく上意は承り、細かい実際は補佐役に後で聞くしかない。
 ちらりと見た所、正使である武士は知り人ではないが、補佐役に顔見知りが一人いた。
「よろしい、追って沙汰するゆえ、、今はこれまで、蔵役は残り、手配り抜かりなきよう進めるように」
 言い切ると正嗣の返答など待たずに正使と取り巻き四人は帰っていった。残った補佐役がこちらを見て頭を掻いている。
 こやつは藤堂正之助。
 藤堂姓ではあるが、久居の殿様や藤堂高虎様との血の繋がりは無い。
 渡会家同様の外様武士だ。大阪の陣で活躍し、危うく長宗我部勢に陣を崩されそうだった殿様を守り、その功で藤堂姓の名乗りを許された家である。
 その家の長男であり、代々の蔵奉行を務める家柄の為、父親の下で蔵に関する仕事を仰せつかっている。ちなみに武芸方で槍持ち奉行であった父に認められず。庭方として働いていた正嗣とは旧知の仲だ。
 仕事ぶりは良くも悪くも及第で、人並みな酒すき、少しの皮肉屋が特徴の男だが、正嗣は嫌いではない。
 好きでもないが
「正嗣、おぬしやってしまったな、これで渡会の家もおしまいぞ、長々続いてきたおぬしの家と、我の家との関係もこれまで、それもこれもおぬしの畜生好きが原因なのだぞ、前から言っていた通り、山にでも放っておけば目をつけられることもなかったのにのう」
「おぬしの言うとおりかも知れぬが、もはや決まった事、御定を覆すことも出来ぬさ、それにこやつらを山に放てば大いなる災いになるやも知れぬ、これでよかったのだ」
 背後にはミツキを先頭に犬が並んでいる。それを嫌そうに見る正之助。世が世なら賞賛されるのは正嗣で、犬嫌いの正之助は追放されていたかもしれない。
 動物たちが悪いのではない、一方的に人の決まりごとを押し付ける人が悪いのだ。そう思うしかない正嗣である。
 もしミツキ達を山に放てばこれだけ統率の取れた完成された群だ。山を瞬く間に支配し人の立ち入れぬ領域を作るか、人里に降りて来て合戦に及ぶやもしれない。そうなったら犬も人も不幸以外の何者でもない。
「とはいえ、これからどうする、結局は山に放つしかないのではないか、そうなれば前におぬしが言っていたように不幸をうむだけだぞ」
「ううむ、確かにな、蔵方としては今回の件、どれぐらいの日を予定しておるのだ、それが切れる前に対処しないといけないからな」
 まだよき方法は見えぬが、期限は知っておくべきで、罪人でもない、裏切って他家に奔るわけでもない。少しは余裕があるかもしれぬと正嗣は考えていたのだが
「そうさな、長く見積もっても一月、勘定方が本気になれば半月と言う所か、そもそもこの地はおぬしの家が長らく住んでいるが公用地でな、貸しているだけの地だ。藩財政から考えても期限はこんなものだろうよ」
「長くて一月とな、短い、短すぎる、それでは他家であったとしてもなんとも出来ぬではないか、ましてや当家などどうしたら良いのか見当もつかぬぞ」 
一月では、次の落ち着き先も簡単には決まらぬ。
なんの保証も無い浪人を迎えてくれる地など簡単ではない。親類縁者に身を寄せようにも、すでに見限られている身の上だ。頼れる人もいない。
「それもこれも黒船のせいだ、あれで一気に世の中が変わりやがった、江戸も京も大騒ぎで、主家筋の津藩だって目の色変えてるって噂だ、支藩の久居藩でも取り残されるわけにはいかないって寸法さ、あっ我が家は頼るなよ、猫も犬も近寄っただけで蕁麻疹が出るからな」
 そうだ、正之助は犬猫の毛が苦手で、触れると蕁麻疹が出る体質だ。可哀想なやつ、あの毛並みに触れる事ができないなんて。
 もちろんそんな正之助の家に頼るという選択は最初から考えてもいなかった。犬や猫、それに鳥たちの事を考えていかねばならない。
「それは知っておるよ、だから正之助に頼るつもりは最初から無かった、しかしそんなに藩は大変なのか?」
 噂話程度ならば庭方の正嗣にも聞こえてくるが、基本役務の間は人と話すことが稀なのが庭方の仕事だ。
主な役目は外からの侵入者に備えることと、不用意に侵入してくる鳥獣や、虫の類への対応だ。
 弓や火縄などは持ち込めないし、城中で刀を抜くと死罪なので、もっぱら体を使って追い出す事になる。人よりも動物や虫が相手の仕事となる。。
 藩の動きなど大評定でもなければ詳しくなりようが無い。
「ああ、彦根の殿様が全ての責を負って苦渋の決断をするだとか聞いておるぞ、実は黒船は二度目との話もあり、一度目は幕府のお偉い方々だけで話して帰したとかも、漏れ聞こえておる、大変な世の中よ」
 大変な世の中か・・・。
 しかし、いかに世が大変なことになろうとも、この正嗣一身の回りことだけで言えば、明日からの日々が大変よ。どんなに遠くで大火が起ころうとも、目の前の囲炉裏の火を心配するのが人と言う物。
「そういえば、おぬし確か大きな鶏も飼っておったの、唐渡りの一品とか」
「おう居るぞ、しかしそれがどうした、まさか犬猫は無理だが鶏ならば引き取って面倒見てくれると言うことか?」
 屋敷の裏手に独立した小屋を中心に鶏専用の領域がある。大変気性が強く、正嗣以外の人間を嫌うため、特別に屋敷の裏の、元は薪を置いておいた小屋を改装して使わせているのだ。
 朝日が昇るとその周囲を巡回し、縄張りを主張する姿をよく見る。えさは麦や粟などの雑穀で、時には正嗣よりも金のかかる餌を食べている事もある。
 ミツキと鶏には何かの協定でもあるのか、ミツキは鶏の縄張りだけは自分たちの巡回路から外している。
「あの鶏ならば確かに貰ってもよいぞ、良き卵でも産めば妻も喜ぼうしな」
「あの鶏は雄だぞ、卵は産まぬと思うがな」
「ほほう、そうか、卵も産まぬ鶏を飼っておぬしは何をしようしておるのだ、裏にいるのであろう、少し見せてみろ」
 これから退去までの期間を左右する正之助の言葉に一応従って裏に案内する正嗣。もう同格でも同じ藩の仲間でもなく上下関係がうっすらと出来ていることを感じる正嗣であった。
 こやつが鶏たちを面倒見てくれるならば、それはそれでかまわぬがなと思いながら。
「おっこれはこれはでかい鶏だな、もはや鶏ではなくて鷹の生まれ変わりなのではないか
不適な面構えは飼い主のおぬしよりよほど精悍だな」
 ずんずんと裏庭に進み、何も注意することなく鶏の縄張りに入り込む正之助。鶏達は警戒の声を上げるも、すぐそばに正嗣が居るので暴れるまではしない。
「見たら満足であろう、それで面倒をみるのか正之助」
「う~む」
 腕を組み、真剣な表情で鶏を吟味する正之助。本当に飼うか悩んでいるのだろうか。
「正嗣よ、この鶏を貰ってもよいならこちらで処理をする、江戸勤め以来久しく鶏は食っていないが、久しぶりに味わいたいものだ、それで正嗣、金はいるのか?」
「むむ・・・」
 こやつ、何を言ってる?
 この鶏達を殺して食うと、今そう言ったのか?
 この渡会家の、この正嗣が手塩にかけた鶏を食うだと
「どうだ、一両もあれば十分であろう、これからの日々には一両一両大事にせねばならぬ身、どうだ」
「・・・・・・」
「それにしても見事な体よ、あれだけ大きければ卵など生まなくともきゅっと締まった肉さえあればのぅ」
 すでに舌なめずりまでしそうな勢いだ。
 もしかしたらこの正之助、最初から鶏を鍋にして食ってやろうと画策してここに来たのかもしれん。友として心配する振りなどしおってからに。我が家に立派な鶏が居ることを承知の上でだ。
「売らん」
「はっ、もう一度言って見ろ正嗣、おぬしはもはや藩の者ではないも同然なんだぞ、それが蔵方であり、奉行の家柄である我が家の意にも反するというのか」
 目線は鶏たちから離さずに、腰の刀に手を伸ばす正之助。
 いきなりこの様に居丈高に物を言う男ではなかった筈なのだが、親切にも先ほど藩を取り巻く状況を饒舌に語っていたのと同じ男には見えなかった。
「委細承知の上でだ、鶏を食う事しか考えぬおぬしには売らぬ、どこぞの山にでも放つか、そうでなければ商い人に相談するさ」
「そんな事を言っておぬし、どうせ自分で食べるつもりであろう、いざとなって惜しくなったのではないか、いいから黙って献上しろ、沙汰の引き延ばしには力を貸してやろうほどにな」
 この男!
 こぶしがぶるぶる震える位に怒りがこみ上げてくる。
 殴るか、斬るか。
 どちらも身の破滅であることは承知の上で、そんな気持ちになる。しかしここで正之助を害してしまえば、鶏はおろか、多数の犬も、おそらくはまだ布団で惰眠をむさぼっている猫も生きる道を断たれてしまう。
 ならぬ堪忍、するが堪忍ぞ。
 遠い日に父が言っていた言葉を思い出す。あれは確か御前試合で津藩の指南役と対戦しなければならず、また負けることが求められていた夜に聞いた言葉だ。
 その言葉通り父はわざと試合に負け、槍の渡会もここまでかとの世評を受けることとなった。あの時に豪快に勝ってしまったならば、主筋の藩の指南役を辱めたとして、なんだかんだ別の理由をつけられ切腹申し付かっていただろう。
 そこを堪忍して家を守った父。
 自分は家は守れなかったが、大切に思う者は守りたい。
「鶏は売れませぬ、武士が一度出した言葉を簡単には引っ込められぬは道理、何卒この正嗣が、この通り詫びますゆえ、何卒」
 鶏が踏みならした地に膝をつける。昨日までは同格であった男にだ。心の奥では熱くて黒い物がどろどろと渦巻くが、これで守れるのならばそれに越したことは無い。
「ふっ、ならばそこで見ていろ正嗣、どうなるかをな」
 言うと正之助、刀を抜いて鶏に迫る。
 何を言われたのか理解するまでに時間がかかった正嗣だったが、正之助が刀を抜いて鶏に迫る後姿を見て動けなくなった。
 あれは、まずい。
 あのままではもっと酷い事が起こるかもしれない。
「でぇいっ」
 大振りに引き上げた刀を、勢いよく振り下ろす正之助。
 太平三百年の武士の姿がそこにあった。へっぴり腰で振り降ろした刀は鶏に届くことも無く、がちっと土に突き刺さって止まった。
 鶏の中でも一際大きい一羽が、じとっと正之助を見ている。
 あ、まずいなこれは
 直後、鶏は刀が抜けずに四苦八苦している正之助の耳元ちかくまで飛び、全力で鳴いた。
 雷が落ちたようその音は、戦国時代、勇将の大喝のように轟き、その場に居る人間の肝を凍りつかせた。
 一番近くでそれを浴びた正之助は刀を持ったまま白目を剥いて気絶。
 人間と鶏の勝負は、鶏の圧勝となった。
「まったく迷惑な話よ」
 気絶している正之助を引きずり、とにかく縄張りから表へと引きずる正嗣であった。



 渡会家に豪雷の様な音が響いた時、それをこっそり見ていたふたみは吃驚仰天。その場でコロンとひっくり返ってしまった。
 即座に起き上がり、失禁などしていないか確認し、どうやら乙女の嗜みは守られたと、昨今父親が仕入れた南蛮文化を思い出しながら土のついた服を叩いた。
 本日のふたみの服は乙女を演出するべく淡い色の花をあしらい、帯もおとなしくて気に入らないがこちらも淡い水色で纏めている。簪は一本木の先に紅珊瑚が小さくあしらわれている物でなんとか中流にも見える格好に纏めている。
 着る物は身分を表すとは姉であるいちのから聞いた。いちのはふたみの七つも上で今年十六。上方商人との婚約が決まっており、近いうちに京に行ってしまう。
「さてと、しかし凄い音だったわね、雷様でもいらっしゃるのかしらこの家」
 ふたみが渡会正嗣の屋敷近くに潜んでいたのは訳がある。本当はもっと早く着たかったのだが、あやか殿のいぶかしげな目と、何人もの侍が先に訪れていたせいだ。中流の子供を演じているふたみだが、それで大人の侍大勢を前に演技しいれるほどの自信はない。それも今はという注釈つきで、いつかは誰も彼もが一目置く女主人になる予定だ。
 さて、そんなふたみがこの場所に来た理由は、先日見た朱桜の槍のせいだ。厳重に布で包まれていた槍だが、その枝の部分に施された見事な流水の桜は久居では有名すぎる程だ。
 槍の渡会家所有の、東照大権現様の一番槍たる藤堂先方衆名誉の槍として。
 そのことは九つのふたみでさえ知っていることで、だからこそ父は布で包んで人の目を避けて持ち運んだのだろう。
 では何故武士でもない父が、そんな業物を持ち運んでいたのか?
 ふたみはすぐにピンと来た。
 闘鶏の借金が酷くなっている、だから有名な槍を騙し取り、一儲けして借金を返そうと、そういうことだと勘付き、すぐに動くことに決めたのだ。
 父と一緒に家につくと、即刻裏手に回り、以前助けになってくれた妙華寺の小僧に使いを出し、住職に渡会家のことを教えてもらえる様に依頼を出す。
 さらに、お茶の先生、お花の先生などの周辺に居る知り人達にも協力を願い、朱桜の槍の価値を調べてもらう。動くならばそこまで知ってから動かないと商い人として失格だ。知らないと知っているとでは雲泥の差が出る。父から伝授された商いの教えだ。
 その結果、狭い町である久居なので夜のうちに返書がふたみの元に集まってきた。
「ふむふむ、これはこれは、ちょっとちょっと、ほうほう、なるほどっ」
 集まった返書は五通以上。それ等を一気に読むと、ほぅっと可愛くふたみはため息を吐いた。
 今この町で殿様が知り得る以上の情報に触れたふたみは、一番の事情通になっていた。
「こうなったら、直接乗り込んで交渉するのが商いの道だよね、よしっと」
 そういった訳でふたみは一人で渡会家に向かうこととなった。
「まずは私が求める大成功、成功、失敗を想定する事」
 これも父の伝授にあった商いの交渉に於ける心構えだ。誰かと商いの話をする時にこちらの成功の場所をしっかり確定させた上で話すことが重要、らしい。さすがにふたみではも誰かと直接に商いの話などしたことが無い。耳学問だけは一流かもしれないが、実践ははじめてなのである。
 あれ、、あれれ、ちょっと何が起こったのかな。
 ふたみが隠れていた草むらから顔を出すと、ちょうど正嗣と思わしき男が一人の男を抱えてこちらに歩いてくる。先ほどの音から考えて雷に撃たれたの?と少しだけ考えたけれど、見上げてみれば空は快晴で薄く棚引く雲が見えるだけ。これで雷なんか落ちて来そうにない。
 もしこれで雷が落ちたのなら、よっぽどあの人は罰当たりな事をして雷様に怒られたのね。
 でも、これで入っていった男たちは皆帰った、次はわたしの番、慎重に行動しなきゃ。
「きゃっ」
 草むらから出て、いざ渡会家を訪問しようとしたふたみ。ぴしっと姿勢を正して余裕がたっぷりに見えるように歩こうとした時、目の前に悲鳴を上げて当然の者が現れた。
 鼻と耳から血が出ている青白い顔だ。
 この辺りは古戦場とかではないから、迷い出た幽霊ではなかろうし、ましてや今は昼前だ。あやかしの類ではない筈。
 くっ何、この人いきなりこんな顔して
「邪魔だっ、どけっ」
 青白い顔をしていた男がどかっとふたみを押し退け、ふらうふらしながら行ってしまう。残されたのはせっかく余裕を持った少女を演じようとした幼女が草むらに尻餅をつき、半べの顔で泣くのをこらえている姿だった。
 まっ負けないんだから・・・。



「おや、あれは」
 正之助を表まで連れてくると、何があったのか良くわかっていない様子ながら、それでも苛立ちを隠せず自分の足で出て行ってしまった。
 これで頭に来て明日にも立ち退いてもらおうと言われたら窮地だが、あの様子だとすぐに行動する気にならないと信じたい。
 人の家で刀まで抜いてあの結果では恥ずかしくて騒ぎ立てるなどは侍の刷ることではない。あやつはさておき、家としての名誉からそのよう事は無いと思う。
 そんな正之助を見送ると、屋敷から本陣に向かう道で、誰かがペタンと座り込んでいる。
 かなり小さく、人というより着物のまん丸お化けの様だ。その着物の色味が淡い色調で揃えられているのもその様に思わせる。
「おっおいおい、ミツキ」
 そんないぶかしい目で見ていたら、背後にひっそりと付いていたミツキがスッと加速すると、一足飛びに着物の塊まで行ってしまった。
 こうなれば仕方ない。放置して部屋に戻ろうと思っていた正嗣は、まったく警戒することなく近づいていった。
 なにかあれば、犬たちがいる。
 先ほどの鶏に対してもそうだが、正嗣は自身に危険が及んだりした時には、彼らが助けてくれると信じている。
 先ほどは結果的に助かったが、鶏に取ってはただの自己防衛だけだったかも知れぬがな。
「おや、なんだ子供か・・・」
 近づけば小さな少女が草むらに座り込んで、目に涙を浮かべながら鋭い目でこちらをにらんでいる。睨んでいるのだが、その横で同じくらいの大きさのミツキが座り込み、その頬を舐めている姿は微笑ましい。
「なによ、何見てるのっ」
 泣きそうな声。ミツキがクゥンと喉を鳴らす。
 この少女に哀れみをあらわしているようで、実は気が強く睨んで口調も強いこの少女は救いを求めているのかと、ミツキの声から勝手に解釈した正嗣は少女の体を抱き上げ、そのまま屋敷にまで連れて帰ろうとした。
 傍目から見れば少女を拐かすかの様に見えたかもしれないが、幸いここは人通りも少なく、町からも遠い、騒ぎ出し番所に訴え出る人もいない。
「ちょっと、いきなり何するの、いきなり女の体に触れるとか無礼じゃないっ」 
 抱き上げられた少女は口では抗うが、体はぐったりと正嗣に預けている。どうやら腰でも抜けているのだろうな。 
と、これまた勝手に解釈して、正嗣は気にせず屋敷の玄関先で少女を降ろすと
「少し待て、水と布でも持ってくるから、時間はあるか?」
「えっ」
「時間はあるのか?」
「あっある、あります、時間、あります」
「そうか、なら良い」
 少女のそばを離れないミツキとその群れ達にその場を任せると、正嗣は奥に入っていった。用意するのは手ぬぐいと湯だ。
 犬や猫を洗うのは手馴れている。大きさならば少女も大した違いは無いとこれも勝手に考えた。泥だらけで半べそかいてる少女にできる事と言えば、身奇麗にしてやることぐらいしか正嗣には無い。
 玄関まで戻ると、少女は大人しく待っていた。
 立ち去ろうにも周囲に犬が満ちていれば、逃げようも無いだろうが。
「ほれ、立って、まずは泥と草を払わねばな」
 言うと素直に少女は立ち上がる。目つきだけは鋭いが、それ以外は感情の抜けきった表情で少し心配になるが、洗ってやるとたまにそんな顔をする犬や猫もいるので気にしない事にする。
 手ぬぐいを湯につけ、泥と草を払った後の染みに押し付けとんとんと軽くたたく。汚れる事が多い正嗣は汚れ落としにも慣れている。
「ううむ、しかし着たままだとやりにくいな」
 普段の汚れ落としは脱いでから床に置いて叩く。少女が着たままだと、力加減がわからなくて本領が発揮できない。
「むむ、仕方なし、少し我慢せよ」
 帯に手を伸ばし、するっと少女の着物を脱がしていく。少女は肌着姿になってしまうが羞恥の表情は浮かべない。この時代、混浴が常識で、町であれば庭で行水するのも常識であるので、肌着姿を見られることよりも、汚れた着物で歩くほうが女子にとってはよほど恥ずかしい事なのである。
 しかし、ふと少女が肌着姿であることに気づいた正嗣のほうが顔を赤くした。結婚していたとはいえ正嗣、妻にはまったく興味も示さず、肌に触れたこともなかった。それが少女の着物を脱がしてしまい、久しぶりの人の体温をうっすらと感じて頬を赤くしたのだ。
「むむ、これでは良くないな、お前は時間があると言ったな、しばし待て」
 手に少女の着物を持ったまま、肌着姿の少女を玄関先に放置する正嗣。
 本当に他人に見られたら危ない行動だ。もし藤兵衛が知れば殴りかかってくる事は間違いない。
 しかし正嗣はそんな事には気づかずに、少しだけ浮かれたような心持で風呂を沸かす為に裏手に回る。
 鶏たちはすでに小屋に戻り、姿は見えなかった。
 いつもの調子で手早く水と薪を用意し、火を起こす。四半刻もしないうちに水は湯に変り湯気が昇る。
「よしっ」
 玄関に取って返すと、少女は寒いのかミツキに抱きつき、眠っていた。その周囲を犬達が囲み、温かそう。
 動物は基本的にか弱い子供に優しいというが、これがそうかと得心し、それでも寝かしたままにはできぬと正嗣は少女を抱き上げ湯殿に連れて行く。
 犬たちも少女に付き添うように一緒に移動。
「湯の使い方はわかるな、ならばそれも脱ぐ必要がある」
 表情の無いままこっくりとうなづくと少女は、身に糸ひとつ無い状態で湯殿へ入っていった。床に置かれた肌着を持つと正嗣は、ちょうど泥で汚れた部分を気遣いつつ湯殿の外へ。ミツキ達は湯殿の前で隊列を組み、少女を守る形で待機する。
 まったく誰に教わったわけでもないのに、こいつらは利口だ。雌だけでは無いのに母性本能なのだろうか。
 かく思う正嗣も見知らぬ少女の着物汚れを落とす為に湯を沸かし、尚且つしつこい汚れの為に米ぬかを用意してもいる。米ぬかで繊維の汚れが綺麗になるのはミツキや猫たちの毛で実証済みである。
「まあ良いか」
 迷い猫や迷い犬の世話も、迷い子の世話もたいして変わらぬ。
 役目である本陣周りの庭を警戒する必要ももう無い。考えなければならない事はたくさんあるが、すぐに行動に移す事が思いつかない正嗣は、少女以上に時間があったのだ。
「うむ、これならば何とかなりそうだな」
 米ぬかを使用し、汚れを落とした着物に陽をあててみると、場所を知らなければ汚れに気づかない状態にはなった。
 満足そうに微笑んだ正嗣は、着物を干した所ではたと気づく。
「着替えが無いではないか」
 肌着まで洗ってしまった。このままでは少女は湯文字一枚で着物が乾くまでいなければならない。さすがにそれが不味いことであるのは、正嗣でもわかる。しかし女物の着物があるのかさえ判らない正嗣。妻であった女性が実家に帰る際にすべて持って帰った可能性もある。母や祖母の着物があれば、それなりの資産になった時代だ。離縁の慰謝料としては十分だろう。
「何かあったかな」
 部屋の中を引っ掻き回す。箪笥の中には男物の粗末な着物ばかりで、女性の肌にそのまま着せたらそれだけで肌に傷がつきそうなくらい固くごわごわしている。
 だめか・・・。
 自分の部屋を引っ掻き回し、猫たちに文句を言われ、それでも止まる訳にはいかない正嗣。洗濯にかかった時間を差し引けば、少女が風呂から出る時間はもう僅かしかない。
 ふと思い立ち、昔妻が使っていた部屋へ。
 この部屋は昔に正嗣自身が幼少期を過ごした部屋でもある。その際に使っていた子供用の布であれば残っている可能性がある。装飾も無い男の着物は価値が無いに等しいし、さすがに夫であった者の子供のころの物までは持って行かないだろう。
「よしっ、あった」
 古ぼけた箪笥の下に収められていた、子供用の着物を引きずり出す。
 どれも使い古しばかりだが、その中に唯一菖蒲の式に使った着物が出てきた。触ってみると先ほどの少女の肌着ほどではないが、まま柔らかさがある。
 これ以上探しても、この着物以上の物はみつからぬだろうと、正嗣は滑りそうなほどの急いだ足捌きで湯殿に急行し、中も見ずに着物を投げ入れた。
 犬をどかすのが邪魔だったという事情もあったが。
「着物はすべて洗ってしまった、乾くまではすまぬがこれで過ごしてほしい、これでもわが屋敷にある中では上等なほうだが、我慢してほしい」
 言うだけ言い切ると、正嗣はすぐに自分の部屋に戻った。
「ああ・・・」
 部屋の中は荒れ放題。自分が荒らしたのも事実だが、その荒れ具合をさらに猫たちが助長している。
 これでは武士の屋敷と言えるだろうか。
 もしや武士ではなくなるかも知れぬが、最後まで見栄は張りたいもの。
 ぐっと両手に力を入れ、出した着物を丸めて箪笥の中や、行李の中に仕舞い込む。
 猫たちの頭を抑え、どこからか出てきた飾りヒモを奪いそれも行李の中に放り込む。
 畳を手のひらでこすると、猫や犬の毛が出てくる出てくる。
 いかぬな。
 片手でも、両手でも足りないと判断した正嗣はもろ肌脱ぎになって上半身全体を使い畳にからむ毛を集めて丸めて玉にすると、ぽいっと外に投げる。
 それを十回も続けると、
 うむ、良き塩梅であるな
 陽光を浴びて畳が光って見えてきた。決して皮脂で磨いたせいであるとは正嗣は気づく事なく満足気な笑顔を浮かべて、着物を調えようとして固まった。
「あ、あの、いやはやこれは、いわゆる、うむ、なんだ、鍛錬の一つでな、この様な動きは水練にもつながると聞いてるのでな・・・・・・」
 湯殿からあがり、やや頬に血色が戻った少女がそこにいた。
 心なしか鋭かった目つきはさらに細くなり、異常なものでも見たかのようで、厳しい。隣に並んでいるミツキがくぅんと主の不備を詫びるように情けなく鼻を鳴らす。先ほど少女の気持ちを代弁した時と同じ様な声なのに、なぜか居た堪れなくなる響きがある。
「え、ええと、色々あってちょっと混乱しているんですけど、ちょっと最初から仕切り直していいですか?」
 少女の真剣な表情。無表情でいた先ほどとは違い気迫が感じられる少女に、こくんとうなづく正嗣。
「失礼いたしました、私は渡会様もご存知である伊勢屋の娘、ふたみと申します、この度は父とは別の商いの話にて参りました」
 自分の幼少期の着物を着た少女、ふたみは武家の子女の様なしっかりとした正座をして挨拶をする。
「これはこちらも失礼した、某は渡会兵衛尉正嗣と申す、父殿には長きにわたり世話になっておる、それで別の商いとは?」
「それは、渡会様の知恵をお貸し願えればと、特に渡会様は動物に造詣が深いとか、もしお知恵を拝借いただいて父の闘鶏を何とかしていただければ、お預かり頂いています朱桜の槍をお返しできるかと」
「ふむ、朱桜の槍か・・・」
 この少女が伊勢屋の娘であれば朱桜の槍を質に出していることを知っているのは当然。しかし、それと闘鶏という単語がつながらぬ。
「うむ、伊勢屋の子女殿、そも闘鶏とはなんであろうか」
「へっ?」
 正嗣の予想外の返答に、ふたみが詰まる。ある程度の問答は想定していた筈のふたみだが、まさか正嗣が闘鶏を知らないとは考えていなかった。
「闘う鶏という字は見たことがあるがな、それが実際には何をするものなのかは知らぬのだ」
 裏家業も、賭場も見たことがない正嗣である。動物狂いといわれて蔑まれているのもなるほどね、とふたみは思い知る。
「闘鶏とは鶏を闘わせ、その結果に小判を賭ける一つの賭け事です」
「ふうむ、勝敗はどうつけるのだ」
 自然界の動物は生きるために獲物を狩る以外は、闘うこと自体が少ない。人の意思で闘わせたところで勝敗がつくものなのか正嗣には不思議であった。これが目の前をうろちょろする猫であればまったく闘おうなどとはせずに、丸くなって寝てしまうだろう。戦いにもならない。
「私も直接すべてを見てきたわけではないですけど、生まれたときから餌などを使って好戦的に育て、闘う事で餌を得るようにするのではないかと、その好戦的な鶏同士を狭い空間に放つと、死ぬまで闘う事も稀ではないそうです」
「なにっ、殺し合いを人の賭け事にしているだと、それは」
 許せない話だ。
 動物を人の欲望で殺すなど、断じて許せない。
 ふつふつと、怒りが湧き上がる正嗣であった。
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紫乃森統子
歴史・時代
当たり前の日々が崩れた、その日があった──。 まだほんの14歳の少年たちの日常を変えたのは、戊辰の戦火であった。 後に二本松少年隊と呼ばれた二本松藩の幼年兵、堀良輔と成田才次郎、木村丈太郎の三人の終着点。 ※本作品は昭和16年発行の「二本松少年隊秘話」を主な参考にした史実ベースの創作作品です。  

散華-二本松少年隊・岡山篤次郎-

紫乃森統子
歴史・時代
幕末、戊辰戦争。会津の東に藩境を接する奥州二本松藩は、西軍の圧倒的な戦力により多くの藩兵を失い、進退極まっていた。寡兵ながらも徹底抗戦の構えを取る二本松藩は、少年たちの予てからの出陣嘆願を受け、13歳以上の出陣を認めたのだった。後に「二本松少年隊」と呼ばれる少年隊士たちの一人、岡山篤次郎を描いた作品です。

ヴィクトリアンメイドは夕陽に素肌を晒す

矢木羽研
歴史・時代
カメラが普及し始めたヴィクトリア朝のイギリスにて。 はじめて写真のモデルになるメイドが、主人の言葉で次第に脱がされていき…… メイドと主の織りなす官能の世界です。

松前、燃ゆ

澤田慎梧
歴史・時代
【函館戦争のはじまり、松前攻防戦の前後に繰り広げられた一人の武士の苦闘】 鳥羽伏見の戦いに端を発した戊辰戦争。東北の諸大名家が次々に新政府軍に恭順する中、徳川につくか新政府軍につくか、頭を悩ます大名家があった。蝦夷地唯一の大名・松前家である。 これは、一人の武士の目を通して幕末における松前藩の顛末を描いた、歴史のこぼれ話――。 ※本作品は史実を基にしたフィクションです。 ※拙作「夜明けの空を探して」とは別視点による同時期を描いた作品となります。 ※村田小藤太氏は実在する松前の剣客ですが、作者の脚色による部分が大きいものとご理解ください。 ※参考文献:「福島町史」「北海道の口碑伝説」など、多数。

播磨守江戸人情小噺(二) 小間物屋裁断

戸沢一平
歴史・時代
 南町奉行池田播磨守頼方(いけだはりまのかみよりまさ)が下す裁断についての、江戸市民たちの評判がすこぶる良い。大見得を切って正義を振りかざすような派手さは無いのだが、胸にジンと染みる温情をサラリと加える加減が玄人好みなのだと、うるさ型の江戸っ子たちはいう。  池田播磨守頼方は、遠山の金さんこと遠山景元の後任の町奉行だ。あの、国定忠治に死罪を申し渡した鬼の奉行として恐れられていた。しかし、池田が下す裁断は、人情味に溢れる名裁断として江戸市民たちの評判を呼んでいく。  取り立て屋の市蔵が死体で発見される。  調べが進むと、小間物屋「奄美屋」の番頭清二が、借金の取りたでで市蔵に脅され理不尽な要求をされ、止むに止まれず殺したことがわかった。  世間は奄美屋に同情する。    果たして、播磨守の裁断やいかに。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

恐竜大陸サウラシア~Great Dinosaur Rush~

田代剛大
歴史・時代
 1889年西部開拓時代のアメリカ。俳優を目指し都会に出て見事に挫折したフィリップ・バックランドは、幼馴染の少女リズリーと共に巡業サーカス団「ワイルドウェストサーカス」で猛獣使いとして働いていた。巨大肉食恐竜を相手に鞭一つで戦うフィリップのショーは当初は大ウケだったものの、ある日恐竜に詳しい子どもの「あの恐竜は見た目は怖いが魚しか食べない」の一言で、彼のショーは破滅する。  しかしそんなフィリップのうそっぱちの猛獣ショーに観客席からひとり拍手を送る貴婦人がいた。彼女はワイオミングに金鉱を持つアニー・ブラウン。アニーは西部で暴れる凶暴かつ強大な恐竜と戦う勇敢な恐竜討伐人「ダイノ・スレイヤー」を探し求めていたのだ。  莫大なギャラでサーカスからフィリップを引き抜こうとするアニー。奇麗な女性の前で、すぐかっこつけるフィリップは、この依頼の恐ろしさを一切考えず二つ返事でアニーの仕事を引き受けてしまった。  どう考えても恐竜に食べられてしまうと感じた幼馴染のリズリーは、フィリップを止めようと、サーカスの恐竜たちの協力によってこっそりサーカスを抜け出し、大陸横断鉄道でふたりと合流。  かくしてフィリップ、リズリー、アニーの三人は野生の恐竜が支配するフロンティア「恐竜大陸サウラシア」に旅立ったのだが・・・

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