74 / 134
七章 タールヴィ家とイザート家
16
しおりを挟む「パーティーのあともずっと一緒にいたじゃないか」
「シャムスにお目付役を頼まれたんだ。ユーノはしばらくカリバン・クルスに逗留して働くから、街を案内してやってくれってさ。シャムスはユーノに甘いんだよ」
「案内……でも婚約は断ったんだろ?」
「ああ。パーティーのあとにまたシャムスに会う機会があったから、そこで断った。残念がられたけど、引き下がってくれたよ。今後もしなにか言ってきても絶対に断るから」
「じゃあ」
ルイは生唾を飲みこんだ。
「お前はユーノのことが好きなんじゃないのか?」
「いや。やることがお前と似てるからかわいいなと思うことはあるけど。別に特別には思ってない」
「……ブルダ大浴場で抱き合ってたのに?」
「えっ?」
ライオルは目を見張った。
「見ていたのか……」
ライオルはオットマンから足を下ろしてルイに向き直り、ばつが悪そうに頭をかいた。
「なるほど、それで急に行ってしまったのか……。あれは、ユーノが第一部隊の馬鹿どもに言い寄られてたから助けただけだ。すごく怖がってしまったから、なぐさめただけだよ」
「……そうだろうとは思ったけど」
「え、わかってたのか? ならいいじゃないか」
「でも、その……」
ルイは口ごもったが、テオフィロに言われたとおりきちんと言葉にすることにした。
「そばにいてやるって言ってたのが、まるで結婚してずっと一緒にいようって言ってるように聞こえて、いやだったんだ……」
子供っぽいことを吐露してしまい、穴があったら入りたい気分だった。ライオルは一拍おいたあと、急に肩を震わせて笑い出した。
「ふふ……それは、悪かったな……」
「謝ってるのかそれ?」
「ごめんって」
ライオルは笑いながらルイをきつく抱きしめた。
「……そこまで思いを募らせてくれるとは予想以上だ……」
「え? なに?」
ルイは頭を抱えこまれているせいでライオルの声がよく聞こえなかった。
「やきもちやいてたんだなって」
「そんなんじゃない。今後ここを出たらどうやって暮らせばいいか心配になって……」
「お前そんなに俺のこと好きだったのか」
「違う」
「違わないだろ」
そう言ってライオルはルイに口づけた。ルイは驚いたが、そっと目を閉じてライオルの背中に手を回した。長いキスだった。ライオルはちゅっと音を立てて離れていった。
「お前、いい加減愛されることに慣れろよ」
ライオルは困ったように笑い、ルイのまぶたに口づけた。
「いやって言ったって、絶対に離してやらないからな」
ルイは嬉しくて涙が浮かんだ。
「うん……どこにも行かないよ。ここにいたい」
ルイは少し腰を浮かせて自分からライオルに口づけた。ライオルはわずかに目を見開き、ルイを抱きしめる腕に力をこめた。
「ん……痛いって」
ルイは口を離して文句を言ったが、ライオルは力を緩めるどころか、そのままひょいとルイを抱えて奥の寝室に連れて行った。ルイは暗い寝室のベッドに横たえられ、覆い被さったライオルにまた口をふさがれた。今度は深く口づけられ、舌と舌を絡まされた。ルイはつたないながらもキスに応えた。
ライオルはルイの夜着のひもをほどき、上に羽織っていたガウンごと前を開いた。ルイはライオルに見られていると思うと無性に恥ずかしくなった。今まで何度も体を重ねてきたが、心持ちが変わったせいかうまく平静が保てない。
「どうした?」
顔を手で覆ってしまったルイに、ライオルが声をかけた。
「なんか……恥ずかしくて……」
「またそんなこと言って。今さらだろ?」
「心臓が壊れそうだ……」
「は……かわいいやつ」
ライオルは笑ってルイの胸の突起を舌先でちろりとなめた。
「っあ」
ルイはぴくりと肩を震わせた。おかしな煙草の煙を吸わされたときのように、感覚が過敏になっているようだ。胸の飾りを舌で転がされ、下腹部がじわりと熱くなった。
ライオルはルイの下着をはぎとり、すでに硬度を持ち始めているルイの中心に手をはわせた。
「あっ」
「もうこんなになってるじゃないか。キスと胸だけで興奮したんだ?」
「……うるさい」
ルイは羞恥でどうにかなってしまいそうだった。それでも体は正直で、ライオルに触れられてどんどん熱が高まっていく。ルイは口を手で押さえたが、抑えきれない声が漏れ出てしまった。
「ん……んっ」
「我慢しなくていいのに」
先端を指でぐりっと押され、快感が背筋を走った。
「あ! やだ……っ」
「イけよ、ほら」
先走りがあふれる自身を水音を立ててしごかれた。ルイはあっさり陥落して白濁を散らした。
「あぁ……っ! あっ……や、今さわんないで……っ」
達しているあいだも手を動かされ、ルイは泣き声をあげてシーツを足で蹴った。
「たまってたんだろ?」
ライオルはルイの出したもので汚れた手を見てにやりと笑った。
「六人部屋じゃ自分で処理もできないしな」
「…………そうだね」
ルイは言いながらふいと横を向いた。
「……違うのか?」
ライオルが鋭く突っこんだ。ルイはあまり言いたくはなかったが、ごまかすとあとが怖いので正直に答えた。
「あの……一人部屋をもらってた」
「え!? 個室は隊長しかもらえないぞ!?」
「ギレットが一人のほうがいいだろうって、管理人に無理を通してくれたんだ。ちょうど一部屋空いていたから、少しのあいだならいいって管理人が許してくれたんだよ」
ライオルの頬がひくりと引きつった。
「……ずっとあいつと同じ二階の一人部屋にいたのか?」
「ま、まあ」
「あいつはお前の部屋に来たか? なにかされなかったか?」
「…………別に」
「嘘をついたら、わかってるな」
「キ、キスされた……でもそれだけ……」
「……あの野郎……」
ライオルはルイの首筋に額をつけて低い声をあげた。ルイはライオルの頭にそっと手を置いた。
「で、でもほら、もうあそこには行かないから!」
「当たり前だ……。くそっ、宿舎は常に人目があるから大丈夫だと思ってたのに、個室は考えてなかった。カドレックのやつ、なんでそんな大事なこと言わなかったんだ……? あぶねえ」
ライオルは再びルイに口づけた。口内を舌でかき回され、ルイは息が続かず少しくらくらした。
0
お気に入りに追加
420
あなたにおすすめの小説
買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
モブ兄に転生した俺、弟の身代わりになって婚約破棄される予定です
深凪雪花
BL
テンプレBL小説のヒロイン♂の兄に異世界転生した主人公セラフィル。可愛い弟がバカ王太子タクトスに傷物にされる上、身に覚えのない罪で婚約破棄される未来が許せず、先にタクトスの婚約者になって代わりに婚約破棄される役どころを演じ、弟を守ることを決める。
どうにか婚約に持ち込み、あとは婚約破棄される時を待つだけ、だったはずなのだが……え、いつ婚約破棄してくれるんですか?
※★は性描写あり。
柩の中の美形の公爵にうっかりキスしたら蘇っちゃったけど、キスは事故なので迫られても困ります
せりもも
BL
エクソシスト(浄霊師)× ネクロマンサー(死霊使い)
王都に怪異が続発した。怪異は王族を庇って戦死したカルダンヌ公爵の霊障であるとされた。彼には気に入った女性をさらって殺してしまうという噂まであった。
浄霊師(エクソシスト)のシグモントは、カルダンヌ公の悪霊を祓い、王都に平安を齎すように命じられる。
公爵が戦死した村を訪ねたシグモントは、ガラスの柩に横たわる美しいカルダンヌ公を発見する。彼は、死霊使い(ネクロマンサー)だった。シグモントのキスで公爵は目覚め、覚醒させた責任を取れと迫って来る。
シグモントは美しい公爵に興味を持たれるが、公爵には悪い評判があるので、素直に喜べない。
そこへ弟のアンデッドの少年や吸血鬼の執事、ゾンビの使用人たちまでもが加わり、公爵をシグモントに押し付けようとする。彼らは、公爵のシグモントへの気持ちを見抜いていた。
転生したら、ラスボス様が俺の婚約者だった!!
ミクリ21
BL
前世で、プレイしたことのあるRPGによく似た世界に転生したジオルド。
ゲームだったとしたら、ジオルドは所謂モブである。
ジオルドの婚約者は、このゲームのラスボスのシルビアだ。
笑顔で迫るヤンデレラスボスに、いろんな意味でドキドキしているよ。
「ジオルド、浮気したら………相手を拷問してから殺しちゃうぞ☆」
もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!
をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。
母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。
俺は生まれつき魔力が多い。
魔力が多い子供を産むのは命がけだという。
父も兄弟も、お腹の子を諦めるよう母を説得したらしい。
それでも母は俺を庇った。
そして…母の命と引き換えに俺が生まれた、というわけである。
こうして生を受けた俺を待っていたのは、家族からの精神的な虐待だった。
父親からは居ないものとして扱われ、兄たちには敵意を向けられ…。
最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていたのである。
後に、ある人物の悪意の介在せいだったと分かったのだが。その時の俺には分からなかった。
1人ぼっちの部屋には、時折兄弟が来た。
「お母様を返してよ」
言葉の中身はよくわからなかったが、自分に向けられる敵意と憎しみは感じた。
ただ悲しかった。辛かった。
だれでもいいから、
暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。
ただそれだけを願って毎日を過ごした。
物ごごろがつき1人で歩けるようになると、俺はひとりで部屋から出て
屋敷の中をうろついた。
だれか俺に優しくしてくれる人がいるかもしれないと思ったのだ。
召使やらに話しかけてみたが、みな俺をいないものとして扱った。
それでも、みんなの会話を聞いたりやりとりを見たりして、俺は言葉を覚えた。
そして遂に自分のおかれた厳しい状況を…理解してしまったのである。
母の元侍女だという女の人が、教えてくれたのだ。
俺は「いらない子」なのだと。
(ぼくはかあさまをころしてうまれたんだ。
だから、みんなぼくのことがきらいなんだ。
だから、みんなぼくのことをにくんでいるんだ。
ぼくは「いらないこ」だった。
ぼくがあいされることはないんだ。)
わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望しサフィ心は砕けはじめた。
そしてそんなサフィを救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったのである。
「いやいや、俺が悪いんじゃなくね?」
公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。
俺は今の家族を捨て、新たな家族と仲間を選んだのだ。
★注意★
ご都合主義です。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。みんな主人公は激甘です。みんな幸せになります。
ひたすら主人公かわいいです。
苦手な方はそっ閉じを!
憎まれ3男の無双!
初投稿です。細かな矛盾などはお許しを…
感想など、コメント頂ければ作者モチベが上がりますw
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
嫌われてたはずなのに本読んでたらなんか美形伴侶に溺愛されてます 執着の騎士団長と言語オタクの俺
野良猫のらん
BL
「本を読むのに忙しいから」
自分の伴侶フランソワの言葉を聞いた騎士団長エルムートは己の耳を疑った。
伴侶は着飾ることにしか興味のない上っ面だけの人間だったはずだからだ。
彼は顔を合わせる度にあのアクセサリーが欲しいだのあの毛皮が欲しいだの言ってくる。
だから、嫌味に到底読めないだろう古代語の書物を贈ったのだ。
それが本を読むのに忙しいだと?
愛のない結婚だったはずなのに、突如として変貌したフランソワにエルムートはだんだんと惹かれていく。
まさかフランソワが言語オタクとしての前世の記憶に目覚めているとも知らずに。
※R-18シーンの含まれる話には*マークを付けます。
書籍化決定! 2023/2/13刊行予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる