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五章 風の吹く森

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 調査団は風の吹く森をあとにして、カリバン・クルスに帰還した。帰りは海流の関係で行きより時間がかかってしまい、カリバン・クルスに到着したのは翌日の夜だった。解散する前の最後の仕事は、捕まえた盗賊団の残党を海王軍カリバン・クルス基地まで運ぶことだった。

 馬車の中で好きなだけ寝て元気になった盗賊たちは、馬車に移すために海馬車から下ろしたとたん、やかましく騒ぎ始めた。両手両足を縛られ、止血しただけで斬られた傷も治っていないのに、近づこうとした守衛師団の兵士を脅すわ口汚くののしるわの大騒ぎだった。仕方なくライオルたちは騒いだ者の口を布で縛る作業をするはめになった。

 カリバン・クルスの門前の広場には、調査団の帰還を聞きつけてライオルやギレットを見に来た街の人々が集まっていた。街の住人たちは拘束された粗野な男たちを見て驚き、見てんじゃねえ殺すぞと罵声を浴びせられて背筋が冷えたようだった。しかし彼らが悪名高きチャティオン盗賊団の残党だとわかると、彼らを一網打尽にしたライオルとギレットを口々に賞賛した。

 そのうち逆に盗賊団にざまあみろと言い返すまでになり、ルイは海の人々の好戦的な性格に乾いた笑いを漏らした。ライオルは賞賛の言葉をかけられると笑顔で手を振り、人々を喜ばせていた。

 盗賊団を全員カリバン・クルス基地に送り、ルイとライオルはようやく屋敷に戻った。すでに真夜中近い刻限だったが、テオフィロは湯浴みの支度をして待っていてくれた。ルイは温かいお湯につかり、三日間の疲れを癒した。

 久しぶりのふかふかのベッドに嬉々として潜りこんだところで、ライオルがやってきた。

「なんだよ」
「アンドラクスの術にかからないためには一人で寝なければいいというのが、お前の持論だろ?」
「くそっ、ギレットの奴そこまで報告しているのか」

 ライオルは洗い上がりでさらさらになった紺色の髪の毛をかき上げ、ルイがかぶっている布団を無理やりはいだ。

「おっ、ちゃんと着てるな」

 ライオルはルイの着ているワンピース型の夜着を見て満足げに笑った。ルイは赤くなって太ももまでめくれていた裾をなおした。

「わざわざもう一着買ってこなくてもよかったのに」
「俺の贈り物を破いておいてよくそんなことが言えるな。素直にありがとうって言っとけよ」
「知るか」

 ライオルは以前と同じく後ろからルイを抱きしめる形で横になった。自分の部屋に帰ってくれそうもないので、ルイはあきらめて燭台の火を消した。

 暗くなったとたんにライオルの手がすっと動き、ルイの夜着の前を留めている紐をするりとほどいた。

「あっ、ちょっ」

 不届きな手に侵入され、ルイは慌てて起き上がろうとしたが、有無を言わさずベッドに押さえつけられた。ルイの上にまたがったライオルの紺の目は、どう猛な獣のように光っている。ルイは捕食者に射すくめられた獲物のように体が動かなくなった。

 ルイは戦いを終えた兵士は興奮冷めやらず娼館に行くことが多いという話を思いだした。第九部隊に入隊したときの歓迎会で聞いた話だった。

「んっ」

 両手を顔の脇に押しつけられて口づけられ、舌で口内を犯された。息ができないほど深いキスにルイは酸欠になってしまった。目がちかちかして、疲れも相まって頭がぼうっとした。

 ライオルは性急にルイの下着を脱がして敏感な部分を愛撫した。いつもより余裕がない様子で、ルイは乱暴に与えられる快楽に翻弄された。

「あ、あっ……」

 不意に首筋に吸いつかれ、刺すような痛みが走った。

「いたっ」

 ライオルはルイの首筋をなめ、ときどき強く吸った。そのまま胸元まで下りていき、あちこち吸いつかれて赤い跡を残された。独占欲の塊のような行為にルイは恥ずかしくなった。

「なんでそんなことするの……」
「誰にも取られたくないからな」

 ぎろりとにらまれた。ルイは部屋が暗くて助かったと思った。情けない顔を見られずに済む。

 ライオルはベッドサイドの引き出しから小さい容器を取り出して、とろりとした液体を指にとった。すぐにその指を後ろに突っこまれ、ルイはなぜそこにそんなものが入っているのか聞く機会を失った。

「んっ、あ……っ」

 慣れた手つきで快感を引きずり出され、ルイは白いシーツの上で身をよじった。恋人じゃないと言ったそばからこんなことになっている。もはやゾレイに言い訳することも難しくなってきてしまった。

 ライオルはルイがギレットに言い寄られていたことが気に入らないようだった。元々仲が良くなかったこともあり、対抗心をむき出しにしている。いつもよそ行きの笑みをはりつけているライオルが欲情をあらわにしていることに、ルイは背筋が震えた。

 四つんばいにさせられて背後からライオルの猛った自身に押し入られ、ルイは甘い悲鳴をあげた。暗闇でろくになにも見えない分、怪しい水音がよく聞こえた。

「あ、あっ……んっ、らい……」

 ライオルはルイの両腕をつかんで腰を打ち付けた。ルイは乱暴に中をこすられて奥を突かれ、頭が真っ白になった。もう声を抑えようという理性も働かなかった。

「ルイ……」
「あぁっ! あっ、や、あっ」

 暗い部屋に二人分の荒い息と水音が響いている。ライオルは一度自身を抜いてからルイを仰向けにし、緩んだ中に再び侵入した。ぐっと腰を進めて最奥まで貫き、ルイに覆い被さってキスをした。

「ほら、舌出せ」
「……ん」

 ルイはおずおずと言われた通りにした。舌を吸われて絡ませ合い、どちらのものとも言えない唾液がルイの口端から垂れた。ライオルはキスをしたままがつがつとルイを攻めた。あえぎ声はライオルの口の中に吸いこまれた。

 感じる場所を狙って何度もこすりあげられ、ルイは体を震わせて達した。

「あ、は……っ」
「はっ、ちゃんと中だけでイけるようになったな……」

 ライオルはルイの体を抱えこんでぎりぎりまで引き抜き、奥まで一気に貫いた。

「ひぁっ!」

 ルイはライオルの背中にしがみついた。ライオルは何度もルイの奥を突いて中で果てた。

「っは……」
「んっ、あ……」

 ルイは頬を紅潮させてとろんと目を閉じた。ライオルはルイの顔に手を伸ばしたが、飛んできた白い毛玉に邪魔をされた。

「プキュッ」
「……おい、邪魔だ」

 ぐったりする飼い主を心配したのか、ハイイロモリネズミのフェイがふらふら飛んできてルイの顔の上に着地した。ライオルはフェイをつかんでベッドのすみに放り投げた。

「あ、おい……乱暴にするなよ」
「飛べるんだから平気だろ」
「やめろよ。お前だってかわいいって言ってたじゃないか」
「毛玉とたわむれてるお前がかわいかっただけで、あいつは別に」
「む……」

 ルイは中に居座ったままのものを抜こうと身じろぎしたが、ライオルはルイの腰をがっちりつかんで離さなかった。ルイは中のものが再び質量を増したのを感じた。

「あの、ライオル……?」
「もう一回」
「えっ、もう無理っ」
「もう一回だけ」

 奥をゆるゆると突かれ、ルイの喉からこらえきれない声が漏れた。ライオルはルイの足を折り曲げて開き、ルイの大事なところが全部よく見えるようにした。

「お前もその気になってるじゃないか?」

 ルイの自身は再びやんわりと立ち上がっていた。

「ちっ違う……」
「いいだろ、お前は明日と明後日休みなんだしさ」

 ライオルはきれいな顔でほほ笑んだ。ルイに拒否権はなかった。結局またライオルの手管に翻弄され、ルイはライオルの背中に爪痕を残した。声が枯れるまであえがされ、ルイは意識を手放した。
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