上 下
80 / 92

第79話 難しいですね

しおりを挟む
 道路自体は整備されているとはいえ、現代日本の道よりは、でこぼこしている。
 しかし道中での馬車の振動は気にならないぐらいに小さい。
 それは足回りを魔導具で補強している為であり、魔導具作りが盛んなイブライン王国だからだろう。
 王族が使用する馬車には必ず付いており、レイナ達が乗っている馬車も例外ではない。
 ありがたい技術だとレイナは感謝する。

 車内から見た街の景色はレイナにとって新鮮だ。
 ほとんどが王宮に住んでいたので外に出る事は余りなかった。

 交易も盛んの様で行き交う人々も活気があり、この国の豊かさが見て取れる。
 賑やかさにレイナは興奮して、「おお!」とか「わあ!」と感嘆の声を上げてしまう。

「ふっ、何だか貴女、子供みたいな人ね」
「す、すみません」

 前にも同じ様な事を言われたなと思い出しつつ、年下の女の子に子供と言われたことにレイナは顔を赤らめる。

「別に謝って欲しい訳じゃないのよ。ニコラの弟子と言うからもっとこう堅物な人間なのかと思っていたわ」

 エリスが思うイメージとは違っていた様だ。

「昔のニコラ様はそんなに取っ付きにくい方だったのですか?」
「そうね。ニコラは何でも器用に出来たから周りの人間の不甲斐なさが許せなかったんじゃないかしら。どこか冷めた目をしてたわ」

 全属性持ちの魔法の天才と言われている人間なら周りが凡人に見えてしまうのも仕方がないのかもしれない。
 只、それを自慢する様な感じではなく簡単にやってのけてしまうので周りの人間はたまったものではないだろう。
 その実力を妬んだ者もいただろうし、エリスもその一人なのかもしれないとレイナは思う。

「ニコラ様もやりずらかったのでしょうね」

 自分が簡単に出来る事が他の人間は出来ない。
 理解出来ずに戸惑っただろう事がレイナにも分かる。

「そうかもね。まあ段々と周りに興味が無くなっていった感じかしら。でも兄達の事は尊敬していたみたいだけれど」
「認めた人間には心を開くのでしょうか?」
「そういうことでしょうね。兄達には素直に見えたわ」

 確かにイーサンには反発する様な態度を見せた素振りはなかったとレイナは思う。

「でも貴女を弟子にして少し変わったのかもしれないわね。昔とは何か雰囲気が少し違う感じがしたわ」
「エリス様はニコラ様とは仲が悪いのですか?」

 核心部分だがレイナは踏み込んで聞いてみる。

「さあね。あいつが私の事を良く思っていないだけじゃないかしら」

 それ以降エリスは口をつぐむ。
 やはり触れてはいけない部分であり、エリスにもわだかまりがあって初対面であるレイナに話す内容ではないと判断したのだろう。

 街から外れて暫く街道を進む。
 ここからは事前に聞いていた通り魔物がいる地域に入る。
 ある程度は駆除されているらしいが全てではない。
 
 魔物は人間を見れば襲ってくる存在。
 エリスは絶対に守らなければならない、レイナは気を引き締める。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが

天色茜
ファンタジー
普通の女子高校生、朝野明莉沙(あさのありさ)は、ある日突然異世界召喚され、勇者として戦ってくれといわれる。 だが、同じく異世界召喚された他の二人との差別的な扱いに怒りを覚える。その上冤罪にされ、魔物に襲われた際にも誰も手を差し伸べてくれず、崖から転落してしまう。 その後、自分の異常な体質に気づき...!?

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

外れスキル【建築】持ちの俺は実家を追放される。辺境で家作りをしていただけなのに、魔王城よりもすごい最強の帝国が出来上がってた

つくも
ファンタジー
「闘えもしない外れスキルを授かった貴様など必要ない! 出て行け! グラン!」 剣聖の家系に生まれた少年グランは15歳のスキル継承の儀の際に非戦闘用の外れスキルである【建築】(ビルド)を授かった。 対する義弟は当たりスキルである『剣神』を授かる。 グランは実父に用無しの無能として実家を追放される事になる。辺境に追いやられ、グランはそこで【建築】スキルを利用し、家作りを始める。家作りに没頭するグランは【建築】スキルが外れスキルなどではなく、とんでもない可能性を秘めている事に気づく。 【建築】スキルでどんどん辺境を開拓するグラン。 気づいたら魔王城よりもすごい、世界最強の帝国ができあがる。 そして、グランは家にいたまま、魔王を倒した英雄として、世界中にその名を轟かせる事となる。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~

juice
ファンタジー
過去に名家を誇った辺境貴族の生まれで貴族の三女として生まれたミラ。 しかし、才能に嫉妬した兄や姉に虐げられて、ついに家を追い出されてしまった。 彼女は森で草を食べて生き抜き、その時に食べた草がただの草ではなく、ポーションの原料だった。そうとは知らず高級な薬草を食べまくった結果、体にも異変が……。 知らないうちに高価な材料を集めていたことから、冒険者兼薬師見習いを始めるミラ。 新しい街で新しい生活を始めることになるのだが――。 新生活の中で、兄姉たちの嘘が次々と暴かれることに。 そして、聖女にまつわる、実家の兄姉が隠したとんでもない事実を知ることになる。

チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ
ファンタジー
 私は死んだ。  はずだったんだけど、 「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」  神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。  なんと幼女になっちゃいました。  まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!  エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか? *不定期更新になります *誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください! *ところどころほのぼのしてます( ^ω^ ) *小説家になろう様にも投稿させていただいています

処理中です...