上 下
76 / 92

第75話 第三王女様ですね

しおりを挟む
「妹は別の国で魔法を学んでいてね。今は休暇で帰って来ている」
「別の国で勉強なんて熱心なのね?」

 イーサンの妹ならばこの国の王女と言う事になる。
 他国で勉強などよっぽどの事だろうとレイナは思う。

「まだ幼いが思うところがあるらしい。自分から進んで学園に行くことを望んだんだ」
「へえ凄いのね。年齢はいくつなの?」
「12歳だ。わが妹ながらなかなかに気が強くてね」
「12歳! ニコラ様の一つ上ね」

 環境に流されることが多い自分からしたら、12歳で自分の意思を持って行動出来るのは凄いとレイナは思う。
 留学してでも叶えたいものがあると言う事なのだろう。

「あら、気が強いって誰の事かしらお兄様?」

 部屋に入ってきた可愛らしい人物はそんな事を言う。

「やあエリス。レイナ紹介するよ。彼女が妹のエリスだ」
「初めましてエリス様、レイナと申します」
「エリスです」
 
 イーサンの話によるとエリスは第三王女なので上に二人姉がいるらしい。
 まだ会った事は無いけれど王族とは子沢山なのだなとレイナは関心する。

 可愛らしい容姿のエリスは見た目とは違い随分と素っ気ない印象をレイナは受けた。
 顔立ちは年齢が近いニコラに似ているので、将来は美人になるだろう事が予想できる。
 イーサンもそうだが、この家族は美形一族なのだろう。
 美男美女が揃っている。

「貴女が今回護衛に参加される方ね?」
「はい。回復要員として参加させていただきます」

 エリスがレイナに言う。
 正直なところ王族の護衛など荷が重いとレイナは感じているので、後方支援として参加する事をレイナは強調する。
  
「ふーん。随分と頼りない感じね」

 エリスはレイナの雰囲気からそう判断する。
 護衛として考えれば貧弱そうに見えてしまう事はレイナも自覚しているので、エリスの言う通りと言わざるを得ない。

 只、イーサンとしては今のレイナの力量が正確に測れていないのは、エリスが未熟である証拠だろうと考えている。

「ですが、お兄様の言い付けですから仕方ありませんわ。同行する事を許可します」
「あ、ありがとうございます」

 戸惑いながらもレイナは答えを返す。
 ニコラといいエリスといい、こんなに幼くても王族であり流石は王女様的な言い回しだと、レイナは感心する。
 
「少々生意気な所があるけれどよろしく頼むよレイナ」
「はい。しっかり務めさせていただきます」
「生意気なんて心外ですわ、お兄様」

 ひと睨み効かせるあたりイーサンの言う通りエリスは気が強いだろう印象をレイナは受ける。

「しかし貴女、お兄様と随分と仲が良いみたいね」

 レイナとイーサンの短いやり取りと雰囲気からエリスは何かある事を察する辺りは年齢的には幼くても女性であるのだろう。
 感性が鋭い。

「は、はい。イーサン様には良くしていただいています」

 押され気味のレイナはいつも通りの回答を返す。

「ふーん。まあいいわ。道中時間があるから、その時にでも聞かせて貰うわ」
「よろしくお願いいたします」

 根掘り葉掘り聞かれそうだなと思うが、レイナはしっかりとこの少女を安全に学園まで送り届けなければと決心する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

悪妻と噂の彼女は、前世を思い出したら吹っ切れた

下菊みこと
恋愛
自分のために生きると決めたら早かった。 小説家になろう様でも投稿しています。

魔力即時回復スキルでダンジョン攻略無双 〜規格外のスキルで爆速レベルアップ→超一流探索者も引くほど最強に〜

Josse.T
ファンタジー
悲運な貯金の溶かし方をした主人公・古谷浩二が100万円を溶かした代わりに手に入れたのは、ダンジョン内で魔力が無制限に即時回復するスキルだった。 せっかくなので、浩二はそれまで敬遠していたダンジョン探索で一攫千金を狙うことに。 その過程で浩二は、規格外のスキルで、世界トップレベルと言われていた探索者たちの度肝を抜くほど強くなっていく。

え?そちらが有責ですよね?

碧桜 汐香
恋愛
婚約者に浮気をされているはずなのに、声の大きい婚約者たちが真実の愛だともてはやされ、罵倒される日々を送る公爵令嬢。 卒業パーティーで全てを明らかにしてやります!

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。

処理中です...