上 下
62 / 92

第61話 お肌のトラブル解決ですね

しおりを挟む
「そんな訳でこちらにお邪魔する事になりました」
「おいおい、どんな訳だよレイナ嬢」

 突然そう切り出したレイナに第二騎士団の団長であるバレンは困惑する。
 
「つまり私の魔法が肌に効果があるのか確かめたいのです」
「ああ」
「しかしそれには肌に問題がある人の方が確認しやすいと思いまして」
「ああ……」
「そこで普段から過剰に太陽に当たられていそうな第二騎士団の方達なら適任かと思いまして」
「……」
「実験にお付き合い願えないかと」
「うーん。確かに毎日の様に日光には当たっているし俺達の中に肌を気にするような奴はいないけどな」
「はい。是非協力お願いします!」

 お前らの肌は汚いから実験台にさせろと言っている事にレイナは気付いていないのかバレンは苦笑いをするしかない。
 当然バレンの返事も曖昧になる。

「まあ、女性と比べれば肌質は悪いかもしれんな」

 レイナとしては日の光に毎日当たっている人間の方が肌のダメージが多いのではないかと思っただけなのだが。
 しかしレイナは以前から回復魔法要員として来ているので、ここでのレイナの人気は高い。
 第二騎士団の団員達は実験台になる事を快く引き受ける。

 ここに来る時のレイナの格好は茶髪に茶色の瞳でメイド服だ。
 最近は銀髪と赤い瞳が人に見られてもいいかなとレイナは思い始めてはいるが、王宮内では気を付ける様にしているので、この出で立ちとなった。
 強くなるまでは仕方がないだろう。

「それでレイナ嬢、我々はどうすればいい?」
「そうですね。並んでいただいて顔を見せて貰ってもよろしいでしょうか?」

 いきなり顔かとも思うが【キュア】の魔法自体、人体に影響のないものだ。
 レイナもそこら辺を考え、顔にすることに決めた。
 どうぜなら分かりやすい方がいいだろうというのがレイナの理屈だ。 

 並んだ団員達にレイナは近づいていく。
 髪と瞳の色は変えているがレイナの美少女っぷりは隠せていない。
 自分の前に来て顔を見上げるレイナの近さに、顔が赤くなる団員がいるのも仕方がない事だろう。
 
 そんな事はお構い無しに団員の顔をレイナはまじまじと見つめ、あーでもないこーでもないと言っている。
 若い団員には刺激が強い。

「しゃがんでいただいてもよろしいですか?」
「は、はい」
「少し触らせて貰いますね」
「!?」

 選ばれた団員はよく日焼けして精悍な顔立ち。
 しかし日に焼け過ぎたのか顔には赤みと出来物があった。
 実験には丁度いいとレイナは判断する。

 緊張で体が固くなっている若い団員。
 そんな団員にレイナは優しく声を掛ける。

「直ぐに済みますので我慢してくださいね」
「は、はい」

 レイナは団員の顔に触れ魔法を唱える。

「【キュア】!」

 毒素やダメージを抜く様なイメージで魔法を行使。
 ニコラが魔法はイメージだというのを思いだしレイナは実践してみる。
 更に肌細胞が活性化するイメージを追加。
 現代人であったレイナならではの【キュア】の使い方が奇跡を生む。

「終わりました」
「「「おおっ!」」」

 皮膚のダメージが無くなり赤みも治り明らかに肌がつるつるになったのが周りから見ても分かる。

「成功ですね!」

 この結果を受け、結局全員に魔法を掛けることになりレイナは大忙しとなる。
 しかし魔力的には余裕があるのはニコラに鍛えられたお陰だろう。

 実際には【キュア】だけでなく【ヒール】の要素も含まれていたがレイナとしては肌が綺麗になったのだからどちらでも良いだろうと言う結論に至る。

 途中から顔に直接触れなくてもいけるのでは無いかとレイナは思ったが、団員達は頑なに拒んだので仕方がなく顔に触れて【キュア】を掛け続けた。
 見目麗しい女性に男なら触れて欲しいと思うのは仕方がない事なので許して欲しい。

 レイナとしても無理を言ってお願いしているので団員の意見は尊重しようと思った様だ。

「お疲れさまレイナ嬢」
「ご協力ありがとうございましたバレン様。お陰様で自信がつきました!」
「それは良かった。しかしレイナ嬢は色々とやるんだな」
「そうなんですよね」

 メイドに魔法、剣術、薬草、野菜作りと、この王宮にやって来てからレイナは色々な経験をした。
 そしてそれに関わる人々とも仲良くなれた事がレイナは一番嬉しいと感じている。
 あのまま追放されなければ、この人達に会えなかったと思うとレイナは不思議な気持ちになった。

「薬草も問題無かった様じゃないか」
「はい。無事に納品出来ました」
「今頃回復薬として精製されてる頃か?」
「そうですね」
「まあ、レイナ嬢の薬草が材料なら間違いないだろう」

 その時何故かレイナは言葉には表せない嫌な感じを受けた。
 バレンからでは無く予感の様な何かを……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。 ――というのは表向きの話。 婚約破棄大成功! 追放万歳!!  辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。 ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19) 第四王子の元許嫁で転生者。 悪女のうわさを流されて、王都から去る   × アル(24) 街でリリィを助けてくれたなぞの剣士 三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ 「さすが稀代の悪女様だな」 「手玉に取ってもらおうか」 「お手並み拝見だな」 「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」 ********** ※他サイトからの転載。 ※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。

【完結済】悪役になりきれなかったので、そろそろ引退したいと思います。

木嶋うめ香
恋愛
私、突然思い出しました。 前世は日本という国に住む高校生だったのです。 現在の私、乙女ゲームの世界に転生し、お先真っ暗な人生しかないなんて。 いっそ、悪役として散ってみましょうか? 悲劇のヒロイン気分な主人公を目指して書いております。 以前他サイトに掲載していたものに加筆しました。 サクッと読んでいただける内容です。 マリア→マリアーナに変更しました。

悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛
恋愛
 ある日現実世界で車に撥ねられ死んでしまった主人公。    しかし、目が覚めるとそこは好きなゲームの世界で!?  しかもその悪役令嬢になっちゃった!?    困惑する主人公だが、大好きなヒロインのために頑張っていたら、なぜかヒロインの兄に溺愛されちゃって!?    不定期です。趣味で描いてます。  あくまでも創作として、なんでも許せる方のみ、ご覧ください。

【完結】悲劇のヒロインぶっているみたいですけれど、よく周りをご覧になって?

珊瑚
恋愛
学園の卒業パーティーで婚約者のオリバーに突然婚約破棄を告げられた公爵令嬢アリシア。男爵令嬢のメアリーをいじめたとかなんとか。でもね、よく周りをご覧下さいませ、誰も貴方の話をまともに受け取っていませんよ。 よくある婚約破棄ざまぁ系を書いてみました。初投稿ですので色々と多めに見ていただけると嬉しいです。 また、些細なことでも感想を下さるととても嬉しいです(*^^*)大切に読ませて頂きますm(_ _)m

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

裁判を無効にせよ! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!

サイコちゃん
恋愛
十二歳の少女が男を殴って犯した……その裁判が、平民用の裁判所で始まった。被告はハリオット伯爵家の女中クララ。幼い彼女は、自分がハリオット伯爵に陥れられたことを知らない。裁判は被告に証言が許されないまま進み、クララは絞首刑を言い渡される。彼女が恐怖のあまり泣き出したその時、裁判所に美しき紳士と美少年が飛び込んできた。 「裁判を無効にせよ! 被告クララは八年前に失踪した私の娘だ! 真の名前はクラリッサ・エーメナー・ユクル! クラリッサは紛れもないユクル公爵家の嫡女であり、王家の血を引く者である! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!」 飛び込んできたのは、クラリッサの父であるユクル公爵と婚約者である第二王子サイラスであった。王家と公爵家を敵に回したハリオット伯爵家は、やがて破滅へ向かう―― ※作中の裁判・法律・刑罰などは、歴史を参考にした架空のもの及び完全に架空のものです。

私が消えたその後で(完結)

毛蟹葵葉
恋愛
シビルは、代々聖女を輩出しているヘンウッド家の娘だ。 シビルは生まれながらに不吉な外見をしていたために、幼少期は辺境で生活することになる。 皇太子との婚約のために家族から呼び戻されることになる。 シビルの王都での生活は地獄そのものだった。 なぜなら、ヘンウッド家の血縁そのものの外見をした異母妹のルシンダが、家族としてそこに溶け込んでいたから。 家族はルシンダ可愛さに、シビルを身代わりにしたのだ。

処理中です...