10 / 92
第9話 恐縮しますね
しおりを挟む
「本国と言うと、どこの国になるのでしょうか?」
そう言えば何処に行くのか、レイナはまだ聞いていなかった。
あまりアンブロウ王国から近い所だと嫌なので確認しておきたいと思いレイナは質問する。
「ああ、まだ言ってなかったね。イブライン王国ってところだよ」
イブライン王国? レイナはリーネの記憶を探る。
(んん、おー結構大きな国ね)
レイナが住んでいたアンブロウ王国より国土は大きい。
しかも距離が離れているので、これなら安心だろうとレイナは考える。
「結構大きな国ですよね。確か魔導具の生産が盛んなところだとか?」
(魔導具といってもよく分からないけど、便利グッズみたいな物と考えていれば間違いないのかな?)
兄であるレオンから貰った認識阻害の魔導具も凄いし、結構ハイテクな世界なのかもとレイナは思う。
リーネの知識は本やレオンから聞いた話だけだ。
箱入り娘? の知識では詳しい事までは分からない。
「ああ、そうだ。うちの国では魔導具作製に力を入れているよ」
「そうなんですね!」
(ん? うちの国。イブライン王国? 最近何処かで聞いたような……)
レイナは疑問を感じ頭を捻る。
「イーサンも確かイブラインって言ってなかったっけ?」
「ん? ああそうだな」
「レイナ嬢。イーサン様はイブライン王国の第一王子であらせられます」
「えっ!?」
護衛のラウルがレイナに言う。
ゲームの世界かよ! とレイナが言いたくなるのも無理はない。
(盗賊から助けてくれた人物が王子とかありえなくない?)
レイナが困惑するのも当然だ。
そして問題はまだある。
(だ、第一王子! そんな人に私はなんて言葉遣いをしてしまっているのか!)
名前も呼び捨てにしており不敬罪で処罰されてもおかしくない。
でもイーサンがそうしてくれって言ってたとレイナは記憶を辿る。
だがこの事態に対処する方法にレイナは辿り着く。
「し、失礼いたしました。イーサン・イブライン王子殿下! 数々の無礼お許しください!」
「ははは、やめてくれよレイナ。今まで通りで全然構わないよ」
「でも、でも」
「俺がそうして欲しいんだ、頼むよ」
「そ、そこまで言うなら……今まで通りにさせて貰います」
(まあ、私も今更って感じだしイーサンもいいって言っているからいいよね)
レイナは自分を納得させる。
「でも人前ではダメですよね?」
「もちろんです! 我々だけでしたら構いませんが、お控えください」
代わりに護衛のラウルが答えた。
(ですよねー)
一国の王子と追放された娘が砕けた話し方をしていたら外聞も悪いだろうし不敬罪で罰せられてもおかしくはない。
「分かりました。以後気を付けます」
数日後、肩の痛みも癒えてきたレイナ達は馬車でイブライン王国に向かう事になった。
「凄いですねこの馬車。全然揺れませんね」
イーサンとラウルが隣同士で、レイナは二人に向かい合う形で座っている。
荷馬車の時は結構揺れていたので大変だったが、この馬車は違う。
レイナはその事を口にする。
「ああ、足回りに魔導具を使用して揺れを抑えているんだよ」
「そうなんですね!」
振動が殆どないので快適だ。
荷馬車と違い尻が痛くならない。
現代の自動車並みかもしれないとレイナは思う。
「これもイーサンの国の技術なのですか?」
「ああ。生活に必要な技術は日々向上しているから色々な物が作られている」
イーサンは誇らしげに胸を張る。
「凄い国なんですね」
レイナは素直に感嘆する。
「ああ。……しかし兵器の魔導具も作製している。自国の為とは言え戦争の道具を作るのは余り褒められたものじゃない。国の王子としては複雑な想いがあるよ」
イーサンは色々な葛藤がある様で顔に影を落とす。
「そうですか……でも、そういう考え方を出来る王子様がいる国なら、きっと良い国なのでしょうね」
イーサンとラウルさんは驚いたような複雑そうな表情でレイナを見つめる。
(えっ、何? 私何か変な事言った?)
不安になりレイナは聞いてしまう。
「ち、違うのですか?」
「……いや、そうだな良い国だと思うよ」
「はい。とても良い国です」
二人は自分達に言い聞かせる様に答える。
(何だろう、何だか気まずい雰囲気)
触れてはいけない部分なのかもしれないと察したレイナは話題を変える事にした。
「こ、今度ご迷惑でなければ魔導具の工房を見学させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ、それは構わないけど興味があるのか?」
「はい。このネックレスも不思議ですし、どの様に作っているのか興味があります。将来商人になる時にも活かせそうなので」
もしかしたら魔導具も扱うかもしれないから準備はしておきたいとレイナは考える。
「分かった。手配しておこう。ラウル頼む」
「はい。手配いたします」
「ありがとうございます。ラウルさんよろしくお願いします」
つい、笑顔になってしまうレイナ。
盗賊に襲われた時はどうなる事かと思ったが、二人と知り合えたのはレイナとしては運が良かった。
今考えると一人旅の準備が足りな過ぎて、自分の無謀さにレイナは驚いてしまう。
あの時は何とか出来ると信じていたし選択肢も無かった。
仕方がなかったが、考え無しだったのは否めないとレイナは反省する。
今この恵まれた環境を活かして出来る事はなんでもやっていこうとレイナは思うのであった。
そう言えば何処に行くのか、レイナはまだ聞いていなかった。
あまりアンブロウ王国から近い所だと嫌なので確認しておきたいと思いレイナは質問する。
「ああ、まだ言ってなかったね。イブライン王国ってところだよ」
イブライン王国? レイナはリーネの記憶を探る。
(んん、おー結構大きな国ね)
レイナが住んでいたアンブロウ王国より国土は大きい。
しかも距離が離れているので、これなら安心だろうとレイナは考える。
「結構大きな国ですよね。確か魔導具の生産が盛んなところだとか?」
(魔導具といってもよく分からないけど、便利グッズみたいな物と考えていれば間違いないのかな?)
兄であるレオンから貰った認識阻害の魔導具も凄いし、結構ハイテクな世界なのかもとレイナは思う。
リーネの知識は本やレオンから聞いた話だけだ。
箱入り娘? の知識では詳しい事までは分からない。
「ああ、そうだ。うちの国では魔導具作製に力を入れているよ」
「そうなんですね!」
(ん? うちの国。イブライン王国? 最近何処かで聞いたような……)
レイナは疑問を感じ頭を捻る。
「イーサンも確かイブラインって言ってなかったっけ?」
「ん? ああそうだな」
「レイナ嬢。イーサン様はイブライン王国の第一王子であらせられます」
「えっ!?」
護衛のラウルがレイナに言う。
ゲームの世界かよ! とレイナが言いたくなるのも無理はない。
(盗賊から助けてくれた人物が王子とかありえなくない?)
レイナが困惑するのも当然だ。
そして問題はまだある。
(だ、第一王子! そんな人に私はなんて言葉遣いをしてしまっているのか!)
名前も呼び捨てにしており不敬罪で処罰されてもおかしくない。
でもイーサンがそうしてくれって言ってたとレイナは記憶を辿る。
だがこの事態に対処する方法にレイナは辿り着く。
「し、失礼いたしました。イーサン・イブライン王子殿下! 数々の無礼お許しください!」
「ははは、やめてくれよレイナ。今まで通りで全然構わないよ」
「でも、でも」
「俺がそうして欲しいんだ、頼むよ」
「そ、そこまで言うなら……今まで通りにさせて貰います」
(まあ、私も今更って感じだしイーサンもいいって言っているからいいよね)
レイナは自分を納得させる。
「でも人前ではダメですよね?」
「もちろんです! 我々だけでしたら構いませんが、お控えください」
代わりに護衛のラウルが答えた。
(ですよねー)
一国の王子と追放された娘が砕けた話し方をしていたら外聞も悪いだろうし不敬罪で罰せられてもおかしくはない。
「分かりました。以後気を付けます」
数日後、肩の痛みも癒えてきたレイナ達は馬車でイブライン王国に向かう事になった。
「凄いですねこの馬車。全然揺れませんね」
イーサンとラウルが隣同士で、レイナは二人に向かい合う形で座っている。
荷馬車の時は結構揺れていたので大変だったが、この馬車は違う。
レイナはその事を口にする。
「ああ、足回りに魔導具を使用して揺れを抑えているんだよ」
「そうなんですね!」
振動が殆どないので快適だ。
荷馬車と違い尻が痛くならない。
現代の自動車並みかもしれないとレイナは思う。
「これもイーサンの国の技術なのですか?」
「ああ。生活に必要な技術は日々向上しているから色々な物が作られている」
イーサンは誇らしげに胸を張る。
「凄い国なんですね」
レイナは素直に感嘆する。
「ああ。……しかし兵器の魔導具も作製している。自国の為とは言え戦争の道具を作るのは余り褒められたものじゃない。国の王子としては複雑な想いがあるよ」
イーサンは色々な葛藤がある様で顔に影を落とす。
「そうですか……でも、そういう考え方を出来る王子様がいる国なら、きっと良い国なのでしょうね」
イーサンとラウルさんは驚いたような複雑そうな表情でレイナを見つめる。
(えっ、何? 私何か変な事言った?)
不安になりレイナは聞いてしまう。
「ち、違うのですか?」
「……いや、そうだな良い国だと思うよ」
「はい。とても良い国です」
二人は自分達に言い聞かせる様に答える。
(何だろう、何だか気まずい雰囲気)
触れてはいけない部分なのかもしれないと察したレイナは話題を変える事にした。
「こ、今度ご迷惑でなければ魔導具の工房を見学させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ、それは構わないけど興味があるのか?」
「はい。このネックレスも不思議ですし、どの様に作っているのか興味があります。将来商人になる時にも活かせそうなので」
もしかしたら魔導具も扱うかもしれないから準備はしておきたいとレイナは考える。
「分かった。手配しておこう。ラウル頼む」
「はい。手配いたします」
「ありがとうございます。ラウルさんよろしくお願いします」
つい、笑顔になってしまうレイナ。
盗賊に襲われた時はどうなる事かと思ったが、二人と知り合えたのはレイナとしては運が良かった。
今考えると一人旅の準備が足りな過ぎて、自分の無謀さにレイナは驚いてしまう。
あの時は何とか出来ると信じていたし選択肢も無かった。
仕方がなかったが、考え無しだったのは否めないとレイナは反省する。
今この恵まれた環境を活かして出来る事はなんでもやっていこうとレイナは思うのであった。
11
お気に入りに追加
3,301
あなたにおすすめの小説
精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが
天色茜
ファンタジー
普通の女子高校生、朝野明莉沙(あさのありさ)は、ある日突然異世界召喚され、勇者として戦ってくれといわれる。
だが、同じく異世界召喚された他の二人との差別的な扱いに怒りを覚える。その上冤罪にされ、魔物に襲われた際にも誰も手を差し伸べてくれず、崖から転落してしまう。
その後、自分の異常な体質に気づき...!?
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
元聖女だった少女は我が道を往く
春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。
彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。
「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。
その言葉は取り返しのつかない事態を招く。
でも、もうわたしには関係ない。
だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。
わたしが聖女となることもない。
─── それは誓約だったから
☆これは聖女物ではありません
☆他社でも公開はじめました
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜
黄舞
ファンタジー
侯爵令嬢である主人公フローラは、次の聖女として王太子妃となる予定だった。しかし婚約者であるはずの王太子、ルチル王子から、聖女を偽ったとして婚約破棄され、激しい戦闘が繰り広げられている戦場に送られてしまう。ルチル王子はさらに自分の気に入った女性であるマリーゴールドこそが聖女であると言い出した。
一方のフローラは幼少から、王侯貴族のみが回復魔法の益を受けることに疑問を抱き、自ら強い奉仕の心で戦場で傷付いた兵士たちを治療したいと前々から思っていた。強い意志を秘めたまま衛生兵として部隊に所属したフローラは、そこで様々な苦難を乗り越えながら、あまねく人々を癒し、兵士たちに聖女と呼ばれていく。
配属初日に助けた瀕死の青年クロムや、フローラの指導のおかげで後にフローラに次ぐ回復魔法の使い手へと育つデイジー、他にも主人公を慕う衛生兵たちに囲まれ、フローラ個人だけではなく、衛生兵部隊として徐々に成長していく。
一方、フローラを陥れようとした王子たちや、配属先の上官たちは、自らの行いによって、その身を落としていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる