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第4話 生きていけるかもしれませんね

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 ノートンに紹介してもらった宿に着く。
 それほど大きくはないけど、おしゃれな宿だ。
 宿泊代が高くないのも良かったとレイナは思う。

 ノートンとは受付後お礼を言って別れた。
 また困った事があったら聞いてくださいと別れ際、笑顔でノートンは言う。
 そんな心遣いがレイナは嬉しかった。

 部屋に入りベッドに座って【インベントリ】から手鏡を取り出す。
 レオンから貰ったネックレスを外して鏡で顔を確認する。

 サラッとした銀色の綺麗な髪にルビーのような赤い瞳。
 リーネとしても気に入っていたし、凄い美少女だとレイナも思う。

 レイナはリーネとして生きてきたけど前世の『神木れいな』としての記憶もある。
 だからなのか客観的に自分を見てしまう。
 前世は普通の容姿だったのでリーネが自分なのが嬉しく思う。

 でも妾の子供である事と、この容姿でリーネは家族から、そして周りから忌み嫌われていた。
 他に銀髪の人間はいなかったので、気味が悪いと思われていた。

 一番上の兄に至っては毎日のように罵声や嫌味を浴びせてくる始末。
 だけどレオンだけは違ってリーネの容姿をいつも褒めてくれた。
 彼がいなかったらリーネはどうなっていた事か。
 リーネの拠り所はレオンだけだった。

 レイナとしてはリーネの感情と『神木れいな』としての感情が入り混じり頭の中の整理が難しい。
 その内に慣れてくるのだろうとレイナは前を向く。


 そんなことを考えていたらレイナはレオンお兄様に会いたくなってくる。
 リーネはレオンを慕っていたので『神木れいな』としても好感を持つのは自然な事なのだろう。
 生活基盤が出来て安定したら会いに行くのもいいかもと、寂しい気持ちをレイナは抑えるよう努めた。

 認識阻害のネックレスは付けて魔力を通すと容姿が変わる。
 茶色い髪に茶色の瞳。
 色彩を誤認させる不思議な道具だ。
 鏡に映る姿を自分で見ても変化が分かる。
 でも色が変わってもリーネの美少女っぷりは変わりない。

(これはこれでいいかも)

 やっぱり銀髪赤目は目立つから、普段はネックレスを発動させておく事をレイナは決めた。

 【インベントリ】の容量は魔力量に比例する。
 リーネの魔力量はかなり多い様で前にいた部屋の荷物も全て入ってしまった。
 まだまだ入りそうなので相当なものなのだろう。

 この事がリーネが妃候補になってしまった原因である。 
 優秀な後継者を産むために魔力量が多いリーネが選ばれた。
 まあ大勢いる中の一人でしか無かった訳だが、まさか追放までされるとはレイナは思いもしなかった。
 もしかしたら面白半分で候補に挙げられただけなのかもしれない。

 持っている資金は多少はある。
 だけど手持ちの資金が底を尽きる前に、お金を稼ぐ方法を考えなくてはならない。
 身を守る方法も必要だとレイナは考える。

 リーネが過去に身に付けた魔法は【インベントリ】と【ヒール】の二つ。
 攻撃魔法はない。
 でも【拒絶と吸収】という眠っていた力がある。
 これらを駆使して国境を越えて遠くの国を目指そう。
 そしてお金を稼ぎ自立する。

 そんなことを考えながら、レイナは眠りに落ちた。
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