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66.ギルド

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 腕輪型のマジックバッグは二人に好評だ。
 街を歩きながら二人は物を出し入れしている。
 歩きながらやらない! と親がいれば怒られそうだ。

「レンヤさんこれは食べ物は入れていいのでしょうか?」

 おもちゃを与えられた子供のように、キラキラした目でシーナは聞いてくる。
 そんな目をされたら答えるしかない。

「ああ、大丈夫だ」

 生物以外は入れるだけならできる。
 以前作った寝具とは異なるものだ。
 寝具は人間が入れるからな。

「でも時間経過はするので入れっぱなしだと腐るぞ」
「そうなのですね」

 イメージとしては入口が狭くて中が広い倉庫だ。
 放置しておけば腐ってしまう。

「でも共有スペースは時間経過しないみたいだから長期間食べ物を入れたければ使うといいよ」
「まあ。じゃあ食べ物はそこに入れておきますわ」

 全体を時間経過なしにすればいいと思うけど、そうしてはいないようだ。
 『鑑定』の結果によるとそういうことらしい。
 『ハコニワ』が作った物なので何か理由があるのかもしれない。
 
「外観はおしゃれですけれど防具として使用できるのでしょうか?」
「ああ。魔獣の素材で出来ているみたいだからしなやかで、その上硬い」

 叩くとコンコンと硬い音がする。

 頑丈な魔獣の外殻と外皮を使っているので普通の攻撃ではビクともしないだろう。

 さらに魔力を込めれば強度も増す。
 防具としても優秀な性能をもっている。
 盾として装備した者を守ってくれるはずだ。
 
「話は変わるけどシーナとネネの国に獣人はいたのか?」

 先日も見かけたけど、この街にたくさんの獣人が歩いている。
 この世界では普通のことなのかもしれないと思い聞いてみた。

「ええ。色々な獣人と共存してましたわ」
「はい。私も獣人の知り合いがいます」

「そうなのか。敵対とかは無かったのか?」

「ええ、この街と同じで一緒に生活してましたわ」
「外見は違いますけど中身は人間と変わりませんね」

 異種族間のわだかまりが無くて良かった。
 二人の話を聞く限り上手く共存できているみたいだ。

 ケット・シーのアルルも友好的だったし表面上は皆、仲良くしているみたいだ。

 そんな話していたら目的地の一つであるギルドに到着した。

「ここがギルドか」
「そうみたいですわね」
「そうですね」

 鎧を着けた男達が建物に入っていく。
 武器も装備しているので彼らは冒険者なのだろう。

 入口の少し重い扉を押して俺達も中に入る。
 店内は明るく広い。
 奥に受付があり冒険者達が並んでいる。

「初心者はあそこで話が聞けるみたいだな」

 受付を指差す。
 文字が読めるので『言語』スキルが仕事をしてくれているのだろう。

「そうですわね」

 新規登録受付とあるので間違いないだろう。

 俺達が近づくと受付の女性が声をかけてくる。

「おはようございます。新規登録でよろしいでしょうか?」
「いや、登録しようか悩んでいて話だけ聞ききに来たんだが……」
「ええ、構いませんよ。では当ギルドの仕組みを説明させていただきます」

 受付女性の説明を要約するとこんな感じだ。

 1.登録すると依頼を斡旋してくれる。
 1.冒険者ランクがあり、それぞれに合った依頼しかできない。
 1.達成すると報酬が渡される。
 1.討伐の魔獣引き取り価格も優遇される。
 1.基準をクリアするとランクが上がるけど、失敗が続くとランクは下がる。
 1.初心者講習あり、再講習もある。
 1.福利厚生割引がある。
 1.有事の際は召集される。

 等々。
 
「以上ですが何か質問はありますか?」

「未登録で依頼を受けることはできるのか?」
「はい。可能です。しかしあらゆる特典は受けられませんので、おすすめはしません」
「そんな人間いるのか?」
「たまにいらっしゃいます。当ギルドとしては登録をおすすめしておりますけど」

「依頼達成の証明はどうやって分かるんだ?」
「こちらのギルドカードを持っていればログが蓄積されますので、こちらに提出していただければ分かる仕組みになっています。ランク等必要な情報もこのカードに収められます」
 
 マジか! この世界意外にハイテクなんだな。

「未登録者の場合はどうするんだ?」
「報酬金額の三割を預けていただければ、仮のギルドカードを発行して依頼を受けることができます。依頼達成後、預かり金は返金いたします」

 三割か。たしかに未登録者への依頼はギルドとしてはリスクがある。
 失敗はギルドの責任になりそうだし。
 未登録者にかける保険としては妥当なところか。
 
「ある程度以上の討伐依頼はギルドランクが高い者しか挑戦できません」
「なるほど」

 登録のメリットはかなりあるということだな。
 まあ俺たちの目的は冒険者になることではないので登録にこだわる必要もない。

「デメリットの説明をお願いしますわ」

 シーナが聞く。

「はい。やはり一番大きいのが有事の際にギルド権限で強制的に召集されることだと思います。魔獣の進行や戦時には積極的に参加していただくことになります」

「断ることはできないのか?」
「はい。登録時の契約となりますのでギルド側に強制力があります。拒んだ場合はペナルティが発生します」
「どんなペナルティなんだ?」
「ギルドの強制解約となりますので冒険者としての信頼はなくなります」
「なるほど」

 強制解約というレッテルが貼られるので仕事ができなくなる。
 実質の失業ってことか。

「登録いたしますか?」
「いや、今はしない」

 受付女性の眉はピクリと上がり、部屋の温度も上がった気がした。
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