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64.節度

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「じゃんけんか……」

 なるほど。
 ちなみにじゃんけんのルールはこちらの世界でも同じだった。
 だれか日本人が昔に来て広めたとかそんな感じだろう。

「じゃんけんに勝ったものが決められるのか?」
「そうですわね。勝者が一人部屋か二人部屋を選べますわ!」
「ああ、分かった」
「ネネもいいですわね!」
「はい。シーナ様、本気でやらせていただきます!」

 …………。

 ……結局じゃんけんは俺が勝った。
 シーナとネネが一緒の部屋で、俺は別の部屋で寝ることとなった。

「仕方ありませんわね……」
「そうですね……」

 二人はしぶしぶ納得してくれたみたいだ。

「じゃあ、おやすみ!」
「おやすみなさいませ!」
「おやすみなさい!」

 俺達は『浄化』で身体を綺麗にしてから床についた。

***

「おはよう!」
「おはようございますわ」
「おはようございます」

 あっという間に朝になった。

「二人共ゆっくり眠れたか?」
「はい。一般の宿は初めて泊まりましたけれど快適で楽しいですわね」
「はい。私もよく眠れました」

 あーそういえばシーナは王女様だったな。
 街の宿なんて今まで泊まることはなかったのだろう。
 俺もこの世界に来てから宿泊は初めてだ。
 『ハコニワ』が作ったベッドも良かったけど、ここの物も悪くはない。

 何処かに出かけて現地で泊まるみたいな、わくわく感もあった。
 よく寝た感じがする。
 シーナとネネも疲れていたのかよく眠っていたようだ。

「今日はどうなさいますかレンヤさん」
「そうだな。とりあえず朝飯を食べてから街を見てみようか」
「シーナとネネも色々と興味あるだろ?」
「そうですね。楽しみですわ」
「武器屋にも行ってみたいですね。あっ、でもレンヤさんに作っていただいた物が嫌と言う訳ではありませんよ」

 急いで訂正するネネ。
 俺に気を使ったみたいだ。

「ああ、構わないよ。俺もこの街の武器に興味があるし後で行ってみよう」
「魔法ショップもあるみたいですわ」

 シーナは部屋に置いてあるガイドブックを見ながらいう。

「そうなのか。新たな魔法があるかもしれないな」

 シーナとネネが覚えられるものもあるかもしれない。

「スキルを教えてくれるところはあるのか?」
「ええっと、スキルスクロールのお店があるみたいですわ」
「それはいいな」

 スキル獲得のチャンスだ。
 属性のコンプリートもできるかもしれない。

「あとはギルドだったな」
「はい。登録はした方がいいのでしょうか?」
「うーん。どうだろうな」

 異世界物では結構分かれる案件だ。
 登録すれば色々な恩恵があったりと便利。
 でも責任も発生して街の危機には率先して駆り出される。
 そんなイメージだ。

 義務を果たしヒーローを目指す者は前者。
 自由を愛し、のんびりしたい者は後者。
 そんな感じだろうか?

 俺たちは今のところ定住する気は無いので、登録しない方が無難なのかもしれない。
 まあとりあえず話を聞いてみたいとおもう。

「わたくしたちもこの街を楽しみたいですわ」
「はい。無理に登録する必要もないですしね」
「そうだな」

 俺達は着替えて一階に降りる。

「おはようございます」

 フロントの人間が声を掛けてくる。

「おはよう。食堂で朝食を食べたいのだけど」
「はい。そちらの通路から併設する食堂へ行くことができます」

 どうやら外に出ないで行けるようだ。

「ありがとう」

 フロントに鍵を預けて向かう。
 食堂はビュッフェ形式のようだ。
 コックが切り分けてくれる料理もある。

 俺は結構このタイプの食事は好きなので嬉しい。
 シーナとネネも楽しそうに取り皿に料理を取っている。
 食べ過ぎるんだよなこれ。

 周りを見ると冒険者が結構な数いる。
 食べていると隣の会話が耳に入ってきた。

「街道の魔獣の話、聞いたか?」
「ああ、なんでも輸送路で荷物の搬送を邪魔しているみたいだな」
「そうだ。商人達が困っているみたいだ」
「ギルドに依頼は出されていないのか?」
「いや、出してはいるみたいなんだけど討伐できないらしい」
「そんなに強い魔獣なのか?」
「ああ。この前も壊滅させられたパーティーがいたようだ」
「マジか……」

(これアヤメが言っていた依頼だな)

「どうしましたレンヤさん?」
「ん? ああ、アヤメに頼まれていた依頼を思い出してな」
「ああ。お隣のお話ですわね」

 シーナも隣の話が聞こえていたみたいだ。

「そうだ。たぶんその魔獣のことだとおもう」
「ずいぶんと強力な魔獣みたいですね」

 ネネも聞いていたな。

「そうだな。しっかり準備した方が良さそうだな」
 
 武器はいいとしても、情報と回復薬みたいな備品も必要だろう。
 毒消しとか売っているのかな?

「そうだ二人に渡したいものがあったんだ」

 俺はそれを取り出す。
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