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第6話「貴族令嬢とは」中
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そんなことがあってから、多分、ちょっとは使えるとでも思われている感がある。
お嬢様の代わりに勉強させてもらっているおかげで貴族の作法もわかってしまったのが、良かったのか悪かったのか。
身分が下の者から貴族に対しての礼儀と貴族から貴族に対しての礼儀は違ってくるので、覚える必要なんてないと思っていたのだが、思いの外、役に立つらしい。
ちょこちょこと夫人のお茶会で給仕していれば、ついにお嬢様のお茶会でも給仕するようにとアランさんに言われた。
使用人用の別館で軽めの夕食を取っていた時のことで、思わず伝えてきたアランさんをぽかんと見つめてしまった。
急に決まったお茶会の給仕に、何かあったのだろうかと首を傾げる。
普段、お嬢様が開くお茶会には、アンナとサーシャさんが付いていたはずだけれど。
そこでふと、使用人が集まる夕食時にもかかわらず、サーシャさんがいないことに気づく。
「あの、アランさん、まさか……、」
「昼間、お嬢様より解雇を言い渡されたそうです」
サーシャさんが解雇された。
さらに人手が減ってしまったことに、一緒に働いてきた仲間がこうもあっさり切り捨てられたことに、食堂に集まる皆の顔が暗くなる。
一年前くらいまでは解雇された後、人員の補充が行われていたのに最近は補充をしない。
アンナ一人でお嬢様のお世話って、大丈夫だろうか。
そもそも、何故お嬢様はサーシャさんを解雇したのか。
疑問に思って、アランさんに声をかける。
「ちなみに、理由は何だったのでしょうか?」
「最近お嬢様はよくお出かけしては高価なものをお買いになっておられました」
「……なるほど、」
アランさんの言葉で、サーシャさんが買い物を控えた方がいいのではと助言し、それに怒ったお嬢様が解雇を言い渡したのだろうと察する。
人員の補充がされないのは、多分、財政的によくないからだろうと財務に関わっていない私でも推測できる。
その財政が良くない中での高価な買い物なんて首を絞めるだけだ。
だからサーシャさんは忠告してくれたのに、お嬢様は相変わらず人の話を聞かなかったらしい。
「アンナ一人での給仕では難しい規模のお茶会のようですので、」
「わかりました、お手伝いします。その間、ジェーンさん一人での仕事になりますけど、」
お茶会は大体午後からではあるが、お茶会の準備は午前中から始める。
そうしないと、間に合わない。
飾り付けに、食べ物の用意など、特に食べ物の用意が時間がかかる。
普段は私とジェーンさんで午前中に屋敷の掃除や洗濯をしている。
「私は大丈夫だから、お茶会の方を頑張りなさい」
ジェーンさんはにっこり笑ってそういってくれたけれど、屋敷の掃除を一人で行うというのは難しくないだろうか。
かと言って、お茶会の準備はもっと忙しいだろうから、手伝えるかわからないし。
「あの、無理そうだったら、声をかけてくださいね」
「あら、私のことを年寄り扱いしないでくれる?」
「そ、そういうわけでは、」
「大丈夫よ、一人でも。貴方よりもうんと経験があるんですから」
気丈に笑うジェーンさんを心配しつつも、よろしくお願いしますと言って食堂を後にした。
お嬢様の代わりに勉強させてもらっているおかげで貴族の作法もわかってしまったのが、良かったのか悪かったのか。
身分が下の者から貴族に対しての礼儀と貴族から貴族に対しての礼儀は違ってくるので、覚える必要なんてないと思っていたのだが、思いの外、役に立つらしい。
ちょこちょこと夫人のお茶会で給仕していれば、ついにお嬢様のお茶会でも給仕するようにとアランさんに言われた。
使用人用の別館で軽めの夕食を取っていた時のことで、思わず伝えてきたアランさんをぽかんと見つめてしまった。
急に決まったお茶会の給仕に、何かあったのだろうかと首を傾げる。
普段、お嬢様が開くお茶会には、アンナとサーシャさんが付いていたはずだけれど。
そこでふと、使用人が集まる夕食時にもかかわらず、サーシャさんがいないことに気づく。
「あの、アランさん、まさか……、」
「昼間、お嬢様より解雇を言い渡されたそうです」
サーシャさんが解雇された。
さらに人手が減ってしまったことに、一緒に働いてきた仲間がこうもあっさり切り捨てられたことに、食堂に集まる皆の顔が暗くなる。
一年前くらいまでは解雇された後、人員の補充が行われていたのに最近は補充をしない。
アンナ一人でお嬢様のお世話って、大丈夫だろうか。
そもそも、何故お嬢様はサーシャさんを解雇したのか。
疑問に思って、アランさんに声をかける。
「ちなみに、理由は何だったのでしょうか?」
「最近お嬢様はよくお出かけしては高価なものをお買いになっておられました」
「……なるほど、」
アランさんの言葉で、サーシャさんが買い物を控えた方がいいのではと助言し、それに怒ったお嬢様が解雇を言い渡したのだろうと察する。
人員の補充がされないのは、多分、財政的によくないからだろうと財務に関わっていない私でも推測できる。
その財政が良くない中での高価な買い物なんて首を絞めるだけだ。
だからサーシャさんは忠告してくれたのに、お嬢様は相変わらず人の話を聞かなかったらしい。
「アンナ一人での給仕では難しい規模のお茶会のようですので、」
「わかりました、お手伝いします。その間、ジェーンさん一人での仕事になりますけど、」
お茶会は大体午後からではあるが、お茶会の準備は午前中から始める。
そうしないと、間に合わない。
飾り付けに、食べ物の用意など、特に食べ物の用意が時間がかかる。
普段は私とジェーンさんで午前中に屋敷の掃除や洗濯をしている。
「私は大丈夫だから、お茶会の方を頑張りなさい」
ジェーンさんはにっこり笑ってそういってくれたけれど、屋敷の掃除を一人で行うというのは難しくないだろうか。
かと言って、お茶会の準備はもっと忙しいだろうから、手伝えるかわからないし。
「あの、無理そうだったら、声をかけてくださいね」
「あら、私のことを年寄り扱いしないでくれる?」
「そ、そういうわけでは、」
「大丈夫よ、一人でも。貴方よりもうんと経験があるんですから」
気丈に笑うジェーンさんを心配しつつも、よろしくお願いしますと言って食堂を後にした。
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