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21.建前※微(カイ)

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 カイに横抱きにされ庭園に来ている。熱があるみたいで頭がぼーっとする。前みたいに降ろせと暴れる気力もない。ベンチにゆっくりと座らせてくれた。カイもその隣に座り、俺のフラフラしていた頭を自分の肩に寄せる。

「魔力が暴発しかけてるんだ。ちょっと落ち着けば治る。それにしても、ナオトがあんな風に怒るなんて意外だな。」

 俺はカイの手をぎゅっと握る。さっき目を覆われたとき、ゴツゴツと感じたのは剣豆があるからだ。
「今だってあいつの言葉を思い出すとイライラする。この手、アルベルトと似てる・・・。こんなになるまで剣を振るってる人に対して価値がないなんて言うのは、許せない。」

 感情と一緒に魔力も再燃しそうになる。体がさらに熱くなっていき、額からは汗が流れる。

「あーもう。このままだとナオトの体が持たねぇよ。ほら、いい子だから落ち着け。」
 カイはもたれ掛かっている俺の頭をポンポンと撫でる。
「子供扱いするなよ!」
 ぶわっと、コントロール出来ていない魔力が飛散する。俺はカイへの少しもの抵抗として頭を横に振る。しかし両頬を掴まれ阻止された。オリーブ色の瞳が近づいてくる。

「・・・えっ、っん、カイ?」

「バーカ、子供にこんな事しねぇだろ。魔力が暴発しかけてるなら自力で落ち着かせるか、それが出来ないなら無理やり移行させるのが手っ取り早い。応急処置だ。ほら、もう一回、口開けろ。」

 カイは俺を抱き上げ体勢を変える。俺はカイの足を跨ぐように膝立ちにさせられる。

「カイ、まっ・・・、はぁ、あっんっ。んー。」

 塞がれた口に息が苦しくなりカイの隊服を掴む。俺が魔力をコントロール出来ないせいなのか?体の中で渦巻いて、どうしようもなかった魔力が自然とカイの方へ流れていく感じがする。何度も舌が絡めとられる。

「俺が嫌なら目ぇ瞑って他のヤツのこと考えてろ。もう少し落ち着いたら、あいつのとこ連れてってやるから。」

「はぁ、あっカイ、んっ・・ふぁ、カイぃ。ごめっ、こんなことさせて・・・。」

 少し熱が下がり楽になったが、恥ずかしさと申し訳なさで視界が霞む。カイはそれをなだめるように頬にもキスをする。
「はぁ?本当に嫌ならこれ使ってとっくにあいつ呼んでるっての。」

 カイはそう言って自分の右耳を指差す。無線がきているのか、俺には微かにノイズ音が聞こえる。

「はぁ、さっきからうるせぇなぁ。今だけは邪魔させねぇから。」
 カイはそれを外し握り潰す。その手から炎が出たかと思ったら、さっきまでイヤモニの形をしていたものは灰になり風に飛ばされた。

「ナオト、やっぱりさっき言ったこと無しにしてくれ。今は俺の事だけ考えろ。」

 いつもは見上げるだけの顔が、今は俺を見上げている。カイの鋭い視線から目が離せない。ゴツゴツとした手が頬を撫でる。少しの優越感と、罪悪感を誤魔化すようにカイの手を握り今度は俺から唇を重ねた。
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