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16.陶酔※(アルベルト)

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 アルベルトは自室の扉を閉め「はぁ。」と深い溜息をつく。
「私は、あとどれだけ嫉妬すればいいのだろう。」
「・・・なんかごめん?でもクリス殿下には、あんまりやきもち妬かないんだな。カイの時はもうちょっと怒ってた気がするけど。」
「クリス殿下に関してはナオトが選ぶなら仕方ないと思う。決して良い気はしないが・・・。」
 アルベルトはそう言うと俺を抱きしめた。俺もアルベルトの腰あたりに手を回し、首元に顔を埋める。雨で冷たくなった肌が気持ちいい。

 アルベルトがそっと離れて着替えを取りにクローゼットの方へ行ってしまった。もっと触っていて欲しいと思ったのに・・・。


「アルベルトってその、抱きたいほう?」
「・・・・っ!・・・そうだな、私はナオトを抱きたい。でも。心の準備はまだなんだろ?ほら、風を引かないうちに着替えてくれ。」
 顔を背けながら着替えを渡される。アルベルトが離れようとするから慌てて手を取り引き止めた。
「でも少しでもアルベルトの気持ちに答えたいと思うし、抱きしめられるだけじゃなんだか物足りなくて・・・・。そのくらい俺はアルベルトが好きなんだ。」


 アルベルトが隊服のボタンをカチカチと外しながらベッドの方へ俺をいざなう。肩に手を置かれたかと思ったが、その途端押し倒されていた。
「わっ!んっ・・・。あっ。」
 アルベルトの手が雨で濡れた服の下を這う。腹部からゾクゾクと全身の神経を伝うような感覚に陥る。思わず声が出たことが恥ずかしく、自分の口を手で塞ぐ。それに気づいたアルベルトは一度手を止める。
「本当に良いのか?」
 色欲に満たされた瞑色の瞳は刺すように俺を見る。頷くことしかできなかった。口を塞いでいた両手はアルベルトによって、頭の上に持っていかれる。片手で抑えられているのに、びくともしない。もう片方の手は胸部を愛撫し、舌と手が這う感覚に耐えられず身をよじらせる。羞恥よりも与えられる快感を受け入れることでいっぱいいっぱいだ。

「はぁ、ふぅ、アルベルトっ。好きだ、大好き。」
「私もだ。ナオト・・・。やっと・・・。」

 俺は目を閉じて少し顎を上げキスをせがむ。何度も息継ぎをしながら繰り返し、脳が溶けそうなほど熱がこもる。胸部を触れていた手が下がってくる。
「あっ、、やぁっ・・・。まだ・・・。」
「待てない。脱がすぞ。」
 そう言うと俺の服を剥ぎ取り、アルベルトも隊服を脱ぎ捨てた。肌と肌が吸い付くように抱きしめ合う。アルベルトの筋肉質な腕にしがみつき何度も求め合うようにキスをする。その快楽に気を取られていると足を開かれ、香油を纏った指がゆっくりと下に入っていく。
「あっ、ダメっ!んっ・・・・・ふぁ。」
 思わず声が大きくなりそうだったが、その声はキスに溶けていく。

 二本三本と増える指に快楽よりも違和感が勝ってしまう。でも、下腹部に当たっているものが今から自分の体に入るかと思うと期待と不安で混乱する。指が抜かれて、代わりにぬるりと入口を撫でたそれは、俺の中をこじ開け入ろうとする。俺は、届かない手で抵抗するがそれも意味をなさないまま進んでいく。
「ゆっくりして!あぁっ!ダメ俺その、初めてだから・・・。」
 半分ほどのところで止まる。入っているものがビクッと存在感を増す。
「うっわぁっ。なんでおっきくなってるんだよ!」
 今まで感じたことのない質量と熱が押し上げてくる。
「初めてなのか?」
「自分がどっちなのか分からなくてまだこういうのは、したことないんだよ。」
「大事なことだろ言っといてくれ。嫌じゃないか?」
 壊れ物を扱うように俺を抱きしめる。肩で息をするアルベルトは、俺のために待ってくれていることを思うと堪らなく愛おしくて下半身が疼く。
「やっ嫌じゃないっ、から、早く動いて。」
「っ・・・あまり煽ぐな。優しくできない。」
 ゆっくりと出し入れされる律動に合わせて声が漏れる。
「うっ、はぁ、あっ・・・・。」
 同時に前も触られ頭が真っ白になる。最初にあった違和感も快楽に変わっている。ひたすらアルベルトにしがみつく事しか出来ないし、多分爪を立ててしまっているが、気にしている余裕は俺にはない。
「ナオト、気づいてるか?全部入ってる。」
「へっ?やばっ、あっ・・・気持ちぃ。アルベルト」
 徐々に早く強く打ちつけてくる。室内が卑猥な音に満たされていく。
「あっ、んっやばい、なんかおかしっ。」
「痛いか?」
 アルベルトが動きを止め、心配そうに上から見つめてくる。
「はぁ、あぁ・・初めてなのにこんな気持ちいのおかしぃ・・。」
「・・・・ナオト、愛してる。」
 それを皮切りにより激しくなる。ずっと耳元で囁かれる愛の言葉も激しくても気遣うような動きもこの世界に来なければ知らなかったことだ。
「あっ、アルベルトっ好きだ。はぁ、ぁんっ、もうイキそ。」
「・・・っ私もだ。」
 腹部に二人分の熱いものがかかる。陶酔感に浸るように、お互いに息を整えるあいだ見つめ合い軽いキスをする。
 俺は目を閉じ意識を手放した。
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