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1.召喚の儀

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 白い光に包まれた。あまりにも眩しいので、咄嗟に瞼を閉じる。なぞの浮遊感。徐々に大きくなる喧騒。やっと地に足が着く感じがして目を開けると・・・


「は・・・?」
 絢爛豪華けんらんごうかな室内。呆然と立ち尽くす俺を、18世紀の西洋風な貴族達が囲んでいる。訳がわからない。痛くもない頭を抑え記憶を辿たどってみる。

 俺は確か職場のオーナーと飲みに行った。最初は憧れの人とのサシ飲みに浮かれ、今日こそは想いを伝えるぞと思っていたのに。いい頃合いに酒が回ってきた時、オーナーが長年付き合っていた彼女と結婚すると話だした。俺は言いたくもない祝福の言葉を並べた。オーナーは薄赤く染まった頬を緩めて、にへらと笑う。まるで俺の気持ちなんか気づいていなかったようだ。そして大事な仕事仲間にその話がしたかったんだと言い残し、婚約者のいる自宅へ帰って行った。そのあと俺は浴びるように酒を飲み、自尊心を保とうと必死だった。だが、元来アルコールには強く酔いきれず、傷心の気持ちを癒せぬまま誰もいない自宅に帰りベッドにダイブした。あれ?結構覚えてんじゃん。

 じゃあまだ夢の中なんじゃないかと、戸惑う俺を無視して方々から、
「本当に成功した!」
「神子様だ!神子様がご降臨された!」
 という声が上がっている。

 しばらくすると、王座らしきところに立っていた壮年のやんごとなき人物は、持っていた王笏おうしゃくをコンコンと2回床に打ちつけた。先ほどの喧騒が嘘のように静寂が漂う。

「驚かせてしまって申し訳ない、ようこそおいでくださった。私はこの国を治める国王、リチャードという、其方の名前を聞いても良いか?」
「・・・葉山 直人と申します。」 
 俺は、状況に思考が追いついていかないが、なんとか返事ができたのは、リチャード国王という人物から醸し出される聡明さや、穏やかな表情があるからだろう。まるで、敵ではないからどうか安心してくれと落ち着かせてくれているようだ。
「ナオトと呼んでも?」
「・・・はい。」
「ナオト・・・。我が国は小さいが海や山、気候に恵まれた非常に豊かな国だ。ただ、二つの国と面する包領の国でもある。近年、隣国の王が代替わりし領土を増やそうと、我が国を巡って国政は緊張状態にある。いつこの均衡が崩れるか・・・。そこで、代々言い伝えられていた『召喚の儀』を取り行った次第である。伝承には、『召喚の儀』により異世界から転生された者は能力を持って国を救い導いてくれるという。」
 言葉が出ない。俺がこの国を救う?能力って?

 リチャード国王は、無言のままの直人を気遣わしげに見据える。

「余計に混乱させてしまったようだ。国政についてはまだいっときの猶予はある。しばらく休養し、この国について知って欲しい。当面の間、護衛と教育係をつけよう。」
 情報処理が追いつかず、緊張が限界を超え俺は再び目の前が真っ白になった。
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