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#18〜得手不得手の理由?〜
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「人の目を見て話す。話をちゃんと聞く。自分の言葉で話す。面倒ごとから逃げない。逃げるならちゃんと反撃のプランを立てる。無謀な事はしない。引くべき時は引く。考えて行動する事は大切、でも時には大胆さも必要。以上がとりあえずの目標として上がりましたが、このままでは達成出来ないでしょう」
「そだねー。全部喰ったら胃もたれしそう」
まぁ、当然ながら無理だろうな。全体的にまだまだ抽象的で具体案が無い。まだまだ憧れの域を出ていない。
「これをもっと小さくします。それこそ食べ易く、程々に、少しづつ食べられる様にしていきましょう」
「ルイルイ~どうやって細かくすんの?」
僕も知りたい。このままだと水槽の魚を狙う猫だ。目の前に食べられる物があるのに、どうやって取れば良いかがわからない。
「それ程難しい事ではありません。安達さん、『人の目を見て話す』のは難しいですか?」
「難しいです」
これは即答できる。僕にとって目を見て話すのは、野生の生き物と対峙しているのと同意義だ。目を合わせれば攻撃される。
「それはなぜ難しいのでしょうか? 安達さんの理由があるはずです。過去に何かあったのでしょうか? 初めから苦手では無かった筈です」
グイグイ来るなぁ~。何かあったかと聞かれれば、昔心無いギャル達に散々言われたからだけど。
「人の得手不得手に、理由が無いなんて事はありません。得手、得意な事の理由については、特に問題はありません。問題は不得手、つまり苦手な事の理由です」
「はぁ……」
「何が問題な訳?」
「はい。これは例えるなら、『武器』と『鎧』です。それらで守る者は自分の心です。『武器』は得意な事、『鎧』は苦手な事です」
「ん~イマイチ話が見えねぇ~」
僕には大体の予想が出来た、つまり。
「つまり、苦手な事を苦手として残しておくと、そこに逃げ道が出来ます」
そう言う事だ。苦手を苦手のままにしておけば、頼まれたり、行動しようとした時に『苦手だから出来ない』と逃げる事が出来る。自分が傷つく事無く、問題を回避出来ると言う事だ。
「そして、苦手意識に無理矢理向き合おうとすれば――」
「『鎧で守られていた生身をそのまま晒すことになる』ですか?」
「安達さん‼︎ ご明察です‼︎」
そして武器は、得意な事は無闇矢鱈にひけらかせば、他人を傷付ける事になる、か。成る程、良い例えだ。
「生身で避ける事無く向き合えば、傷付き、倒れるのがオチです。苦手意識と言うものは、それ程までにデリケートな事なのです」
「オーケー。そこまではわかった。んで、問題はどう噛み砕くかじゃね? 『人の目を見て話す』にしろ、モロ苦手意識じゃん?」
「キラさんの仰る通りです。なので、今回の目標として、全力で逃げに入ります」
「はぁ?」
「逃げ……ですか……」
逃げて良いものなのか? 小学生の頃から『自分の壁から逃げるな』と教わって来た、否、刷り込まれて来た僕にとって、『逃げる』何て考えられなかった。いや、克服しようともせず、行動しようともせず、苦手をそのまま鎧として使っていた事は十分な逃げだ。中途半端な逃げだ。
「世間と戦うのに、武器と鎧で真正面からぶつかる必要はありません。もう一つ、有効な手段があるでしょう?」
有効な手段? ちょっと考えろ、何か引っかかる。もうすぐ思いつきそうだ。最小限の労力で、最大限の利益を得る方法。
「戦術……」
「早い‼︎ 流石です‼︎ 安達さんは思考の回転が早いです。それは立派な『武器』ですね」
RUIさんがそう言って笑ってくれた。天にも登る気持ちだ。褒められるのはこんなに嬉しい事なのか。RUIさんに褒められたからだろうか。多分そうだろう。
「安達さんが仰った通り、今回目標として身に付けるのは『戦術』です。苦手意識を克服するわけでも無く、そのままにする訳でも無い。完璧な逃げです。でも、効果は絶大だと思います」
「具体的にはどーすんの?」
さっきから斎藤さんの合いの手が上手すぎて気になる。欲しい所に欲しい合いの手をくれるな。
「簡単ですよ。安達さん、斎藤さんに自己紹介をして下さい。顔も目も見なくて良いです。向かい合う必要すらありません。ただ、言葉の最後の一瞬だけ、顔を見て微笑んで下さい」
「え? そんだけ?」
「はい。それだけです」
「まじかぁ~、散々引っ張っておいてそれかぁ~。大丈夫か? そんなんでさぁ」
僕も斎藤さんに一票。確かに、最後の一瞬顔を見る位なら無理なく出来るが、本当に何か変わるのか?
「ものは試しです。一度やってみて下さい」
「はぁ……」
「とりあやってみんべ。ほら、自己紹介してみ」
僕は斎藤さんの横に並び、自己紹介をする。最後の一瞬だけ顔を見て、微笑む事を忘れずに。
「僕は……安達 勇と言います。よろしくお願いします」
『ます』の部分で顔を見て微笑んだ。直ぐに顔を正面に向け、下を向く。
「うっわ……これ反則だわ……」
「ね? 効果絶大でしたでしょ?」
「……うん。まじヤベェ。めっちゃ可愛かった。印象180度変わるわ……」
おいおいマジかよ。女神マジックだよ。誰もこんな事思いつかないぞ。それともあれか? 斎藤さんがノッてくれているのか? たったこれだけで印象180度変わるか?
「無理に顔を見て話そうとせず、今みたいに時々チラッと笑顔で相手の顔を見る。これを見に着けて習慣化出来れば、苦手意識なんて克服しなくて良いですよね?」
「確かに……これなら出来そうです。RUIさん、ありがとうございます」
「……‼︎‼︎」
『ございます』部分だけRUIさんの顔を見て微笑んだ。RUIさんの体が『ビクッ』となり、顔が赤くなった。どうしたのだろう、疲れたのだろうか。
「と……とりあえず、これで一つ目標が出来ましたね。この調子で他の目標も決めてしまいましょう‼︎」
「おー‼︎」
この様に、『逃げ上等』の思考で、僕達は僕の目標について話し合った。
「そだねー。全部喰ったら胃もたれしそう」
まぁ、当然ながら無理だろうな。全体的にまだまだ抽象的で具体案が無い。まだまだ憧れの域を出ていない。
「これをもっと小さくします。それこそ食べ易く、程々に、少しづつ食べられる様にしていきましょう」
「ルイルイ~どうやって細かくすんの?」
僕も知りたい。このままだと水槽の魚を狙う猫だ。目の前に食べられる物があるのに、どうやって取れば良いかがわからない。
「それ程難しい事ではありません。安達さん、『人の目を見て話す』のは難しいですか?」
「難しいです」
これは即答できる。僕にとって目を見て話すのは、野生の生き物と対峙しているのと同意義だ。目を合わせれば攻撃される。
「それはなぜ難しいのでしょうか? 安達さんの理由があるはずです。過去に何かあったのでしょうか? 初めから苦手では無かった筈です」
グイグイ来るなぁ~。何かあったかと聞かれれば、昔心無いギャル達に散々言われたからだけど。
「人の得手不得手に、理由が無いなんて事はありません。得手、得意な事の理由については、特に問題はありません。問題は不得手、つまり苦手な事の理由です」
「はぁ……」
「何が問題な訳?」
「はい。これは例えるなら、『武器』と『鎧』です。それらで守る者は自分の心です。『武器』は得意な事、『鎧』は苦手な事です」
「ん~イマイチ話が見えねぇ~」
僕には大体の予想が出来た、つまり。
「つまり、苦手な事を苦手として残しておくと、そこに逃げ道が出来ます」
そう言う事だ。苦手を苦手のままにしておけば、頼まれたり、行動しようとした時に『苦手だから出来ない』と逃げる事が出来る。自分が傷つく事無く、問題を回避出来ると言う事だ。
「そして、苦手意識に無理矢理向き合おうとすれば――」
「『鎧で守られていた生身をそのまま晒すことになる』ですか?」
「安達さん‼︎ ご明察です‼︎」
そして武器は、得意な事は無闇矢鱈にひけらかせば、他人を傷付ける事になる、か。成る程、良い例えだ。
「生身で避ける事無く向き合えば、傷付き、倒れるのがオチです。苦手意識と言うものは、それ程までにデリケートな事なのです」
「オーケー。そこまではわかった。んで、問題はどう噛み砕くかじゃね? 『人の目を見て話す』にしろ、モロ苦手意識じゃん?」
「キラさんの仰る通りです。なので、今回の目標として、全力で逃げに入ります」
「はぁ?」
「逃げ……ですか……」
逃げて良いものなのか? 小学生の頃から『自分の壁から逃げるな』と教わって来た、否、刷り込まれて来た僕にとって、『逃げる』何て考えられなかった。いや、克服しようともせず、行動しようともせず、苦手をそのまま鎧として使っていた事は十分な逃げだ。中途半端な逃げだ。
「世間と戦うのに、武器と鎧で真正面からぶつかる必要はありません。もう一つ、有効な手段があるでしょう?」
有効な手段? ちょっと考えろ、何か引っかかる。もうすぐ思いつきそうだ。最小限の労力で、最大限の利益を得る方法。
「戦術……」
「早い‼︎ 流石です‼︎ 安達さんは思考の回転が早いです。それは立派な『武器』ですね」
RUIさんがそう言って笑ってくれた。天にも登る気持ちだ。褒められるのはこんなに嬉しい事なのか。RUIさんに褒められたからだろうか。多分そうだろう。
「安達さんが仰った通り、今回目標として身に付けるのは『戦術』です。苦手意識を克服するわけでも無く、そのままにする訳でも無い。完璧な逃げです。でも、効果は絶大だと思います」
「具体的にはどーすんの?」
さっきから斎藤さんの合いの手が上手すぎて気になる。欲しい所に欲しい合いの手をくれるな。
「簡単ですよ。安達さん、斎藤さんに自己紹介をして下さい。顔も目も見なくて良いです。向かい合う必要すらありません。ただ、言葉の最後の一瞬だけ、顔を見て微笑んで下さい」
「え? そんだけ?」
「はい。それだけです」
「まじかぁ~、散々引っ張っておいてそれかぁ~。大丈夫か? そんなんでさぁ」
僕も斎藤さんに一票。確かに、最後の一瞬顔を見る位なら無理なく出来るが、本当に何か変わるのか?
「ものは試しです。一度やってみて下さい」
「はぁ……」
「とりあやってみんべ。ほら、自己紹介してみ」
僕は斎藤さんの横に並び、自己紹介をする。最後の一瞬だけ顔を見て、微笑む事を忘れずに。
「僕は……安達 勇と言います。よろしくお願いします」
『ます』の部分で顔を見て微笑んだ。直ぐに顔を正面に向け、下を向く。
「うっわ……これ反則だわ……」
「ね? 効果絶大でしたでしょ?」
「……うん。まじヤベェ。めっちゃ可愛かった。印象180度変わるわ……」
おいおいマジかよ。女神マジックだよ。誰もこんな事思いつかないぞ。それともあれか? 斎藤さんがノッてくれているのか? たったこれだけで印象180度変わるか?
「無理に顔を見て話そうとせず、今みたいに時々チラッと笑顔で相手の顔を見る。これを見に着けて習慣化出来れば、苦手意識なんて克服しなくて良いですよね?」
「確かに……これなら出来そうです。RUIさん、ありがとうございます」
「……‼︎‼︎」
『ございます』部分だけRUIさんの顔を見て微笑んだ。RUIさんの体が『ビクッ』となり、顔が赤くなった。どうしたのだろう、疲れたのだろうか。
「と……とりあえず、これで一つ目標が出来ましたね。この調子で他の目標も決めてしまいましょう‼︎」
「おー‼︎」
この様に、『逃げ上等』の思考で、僕達は僕の目標について話し合った。
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