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初日⑤
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「何だ? もう女同士の話は終わったのか?」
店に戻ると、義彦が不満そうな表情を浮かべて美希に話しかけた。
「こっちは男同士の会話をしておったと言うのに。のぉ、店長」
義彦からパスされた話題に、勇気は苦笑いしながら答えた。
「と、言っても、義彦さんが上の空で、あまり会話は続かなかったですけどね」
「ば‼︎ 馬鹿者‼︎ 言うでないわ‼︎」
わし、恥ずかしい……と、顔を真っ赤にしながら俯いた。
その様子を見て笑う美希と、笑顔になる未来。その笑顔は先程とはうって変わり、とても自然で、輝く様な笑顔だった。その笑顔を見て、もう大丈夫だと美希は確信する。もし、過去の自分がフラッシュバックしたとしても、未来なら乗り越えられると。
「やっぱり、3人分用意してくれたのね。嬉しいわ」
未来からテーブルに目をやり、満足そうに微笑む美希。
「お前の考えている事など、百も承知。当然だ」
と、踏ん反り返って腕を組む義彦。美希はそんな義彦を見て、幸せそうに笑う。そして、美希は未来に座る様に言った。
未来は勇気の顔をチラリと見る。勇気は笑顔で頷き、未来に座る様に促した。笑顔で美希の横に座り、まるで夫婦漫才の様な二人を見て、未来は何年か振りに心の底から楽しい気分になった。
「ねぇ、未来ちゃん。連絡先交換しない? 私最近メールを覚えてね、やりとりする相手がいなくてつまらなかったのよ」
「わしは?」
「あなたは別よ。いつも一緒なんだから、お話できるでしょ?」
「う、うむ。まぁな」
「未来ちゃん、良いかしら?」
未来はコクコクと頷き、エプロンのポケットからスマートフォンを取り出した。美希のメールアドレスと電話番号を登録し、早速メールを送る。
『先程はありがとうございました。気持ちがとても楽になりました』
それを見た美希はクスリと笑い、返事を送る。
『良いのよ^ ^ 一人で悩まないで、何かあったら直ぐに相談してね』
美希からの返事を受け取った未来は、その内容を見て笑顔になる。
『ありがとうございます。また相談させて頂きます』
「ふふふ」
「何じゃ⁉︎」
美希が急に笑い出し、義彦はビックリした声を上げた。
「いえ、何でもありませんわ」
美希はそう言うと、直ぐにスマートフォンに目を落とし、文字を打つ。
『そんなに堅くなくて大丈夫(^_^)v。私達、もう友達でしょ?(^o^)』
未来はその言葉に、顔を明るくした。
『ありがとう。とても心強い』
「おい‼︎ わしを置いてけぼりにするな‼︎ 二人して仲良くメールで話しよって‼︎ わしも仲間に入れてくれ‼︎」
義彦が立ち上がり、大声を上げた。その様子を未来と美希は笑顔で眺める。
「そう怒らないで。だって楽しいのだから仕方ないじゃない? ねぇ、未来ちゃん?」
未来は笑顔でコクコクと頷いた。義彦はわなわなと震え、拗ねた様に勇気の元へ向かった。
「もういい‼︎ わしらも男同士の話をするぞ‼︎ 内緒でな‼︎」
二人に向かってそう言い放つ。巻き込まれた勇気は、苦笑いしながら頭をかいた。
「どうぞ、ご自由にして下さい」
「な、なにぃ~……」
「だって、私は今、とても幸せなのよ」
「ふ、ふん‼︎ 勝手にせい‼︎」
「そうします」
そう言って美希はスマートフォンに目をやる。
義彦は完全に拗ね、勇気を引きずる様に別のテーブルへ連れて行き、無理やり座らせた。
スマートフォン越しにその光景を未来は眺めた。目の前に広がる光景、会話、その全てが輝いて写る。そして楽しそうに笑顔を作り、ニコニコと笑っていた。
“今”この瞬間、未来はとても幸せなだった。
店に戻ると、義彦が不満そうな表情を浮かべて美希に話しかけた。
「こっちは男同士の会話をしておったと言うのに。のぉ、店長」
義彦からパスされた話題に、勇気は苦笑いしながら答えた。
「と、言っても、義彦さんが上の空で、あまり会話は続かなかったですけどね」
「ば‼︎ 馬鹿者‼︎ 言うでないわ‼︎」
わし、恥ずかしい……と、顔を真っ赤にしながら俯いた。
その様子を見て笑う美希と、笑顔になる未来。その笑顔は先程とはうって変わり、とても自然で、輝く様な笑顔だった。その笑顔を見て、もう大丈夫だと美希は確信する。もし、過去の自分がフラッシュバックしたとしても、未来なら乗り越えられると。
「やっぱり、3人分用意してくれたのね。嬉しいわ」
未来からテーブルに目をやり、満足そうに微笑む美希。
「お前の考えている事など、百も承知。当然だ」
と、踏ん反り返って腕を組む義彦。美希はそんな義彦を見て、幸せそうに笑う。そして、美希は未来に座る様に言った。
未来は勇気の顔をチラリと見る。勇気は笑顔で頷き、未来に座る様に促した。笑顔で美希の横に座り、まるで夫婦漫才の様な二人を見て、未来は何年か振りに心の底から楽しい気分になった。
「ねぇ、未来ちゃん。連絡先交換しない? 私最近メールを覚えてね、やりとりする相手がいなくてつまらなかったのよ」
「わしは?」
「あなたは別よ。いつも一緒なんだから、お話できるでしょ?」
「う、うむ。まぁな」
「未来ちゃん、良いかしら?」
未来はコクコクと頷き、エプロンのポケットからスマートフォンを取り出した。美希のメールアドレスと電話番号を登録し、早速メールを送る。
『先程はありがとうございました。気持ちがとても楽になりました』
それを見た美希はクスリと笑い、返事を送る。
『良いのよ^ ^ 一人で悩まないで、何かあったら直ぐに相談してね』
美希からの返事を受け取った未来は、その内容を見て笑顔になる。
『ありがとうございます。また相談させて頂きます』
「ふふふ」
「何じゃ⁉︎」
美希が急に笑い出し、義彦はビックリした声を上げた。
「いえ、何でもありませんわ」
美希はそう言うと、直ぐにスマートフォンに目を落とし、文字を打つ。
『そんなに堅くなくて大丈夫(^_^)v。私達、もう友達でしょ?(^o^)』
未来はその言葉に、顔を明るくした。
『ありがとう。とても心強い』
「おい‼︎ わしを置いてけぼりにするな‼︎ 二人して仲良くメールで話しよって‼︎ わしも仲間に入れてくれ‼︎」
義彦が立ち上がり、大声を上げた。その様子を未来と美希は笑顔で眺める。
「そう怒らないで。だって楽しいのだから仕方ないじゃない? ねぇ、未来ちゃん?」
未来は笑顔でコクコクと頷いた。義彦はわなわなと震え、拗ねた様に勇気の元へ向かった。
「もういい‼︎ わしらも男同士の話をするぞ‼︎ 内緒でな‼︎」
二人に向かってそう言い放つ。巻き込まれた勇気は、苦笑いしながら頭をかいた。
「どうぞ、ご自由にして下さい」
「な、なにぃ~……」
「だって、私は今、とても幸せなのよ」
「ふ、ふん‼︎ 勝手にせい‼︎」
「そうします」
そう言って美希はスマートフォンに目をやる。
義彦は完全に拗ね、勇気を引きずる様に別のテーブルへ連れて行き、無理やり座らせた。
スマートフォン越しにその光景を未来は眺めた。目の前に広がる光景、会話、その全てが輝いて写る。そして楽しそうに笑顔を作り、ニコニコと笑っていた。
“今”この瞬間、未来はとても幸せなだった。
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