轢き逃げ

12.

　今日あったなかで君が一番美しいよ。雨………。

　刑務所との社会の違い。

　甘い物が好きな時に食べられるかどうか。

　娑婆の価値とはそれぐらいしかない。

　勇気を出さなくても女子トイレに入れるようになった。

　カメラがあっても関係ないことを知る。

　秋の夕闇。闇夜に照らされた電信柱。

　そしてランプがまごうことなき傑作のようで。

　しーん、しーん、しーん………。

　つーん、つーん、つーん………。

　セミが抜け殻となる中、虫が鳴く。

　しーん、しーん、しーん。

　つーん、つーん、つーん。

　繰り返す音。安心する音。

　闇夜に照らされた。雨。雨がとっても綺麗。

　綺麗、という言葉では語れないほどに美しくて。

　黒長に伸び始めた影法師の髪の毛もすこしのびた。

　しーん、しーん、しーん。

　つーん、つーん、つーん。

　音の変化に身をゆだねて、今日もひねもす。

　翠のなかでの一番好きなもの。

　人ではない。人は好きになれない。

　自然が一番好きです。雨は汚れも穢れも流すんだよ。

　そんな人が人間でいますか？いませんよね。

　だから……。翠は雨が好きです。

　お母様のお給料日は貧乏くさくて嫌い。

　お寿司も鰻も無いんですもの。どちらかはあって欲しいわ。

　翠のお給料日は、豪勢過ぎてすぐに破産するからもっと嫌い。

　破産しない場所、何もしなくても食べていける場所。

　あの場所に戻りたいと思えたよ。

　掃除もみんな誰かがしてくれるしね。

　何もない一日はホントうにすごいよ！

　今日も昨日も毎日。100人以上の患者さんが病院へ向かう。

　翠は何もなくてつまんないの！と思ってたけど………。

　何もない日のほうがありがたいことを知るべし。

　闇があるから、光は輝けるんだね（ボソッ）

　今日も轢き逃げがんばってます！

　刑務所にいつでも戻る気が起きたら

　何も怖くなくなってしまった。

　ここ数日で自分の苦手な部分と得意な部分が理解できた。

　まず最初に、わたしはサイコパスではない。

　よって人は殺せないし、殺す価値がある人間に出会えていない。

　強盗は金がなくて犯すのではない。わたしの場合は……。

　少なくとも金銭が無いからできることではなかった。

　妙なことに、金は無くても、強盗はできるのだ。

　むしろお金が無ければ、強盗には入らない。

　感覚の違いだ。ニュースでは無職、不定が犯すものと判断されがち。

　無職であれば、住所が無ければ、強盗には入れないのです。

　何かを誰かを守りたいから強盗に入るのです。

　殺人も同じことです。誰かを愛しているから殺すのです。

　わたしには、不可能犯罪であるとわかりました。

　誰かを愛したことなどは無いのですから………。

　愛の無いところに殺人はおきえないのです。

　そして、痴漢ですが、これも人間に興味があるからするのです。

　わたしのように人間にまったく興味が無ければ過ちを犯せないと知りました。

　わたしが興味がある物事とは、自然であり、人ではありません。

　人を轢き逃げするのも似たり寄ったりですが、轢き逃げは異なります。

　道路交通法とは、ですから、言い得て妙なのでしょう。

　人を殺めたり傷つけたりとは、道理に適ったことだと思って参りました。

　しかし、実際は、そうではなく、

　法律に準拠しているとは「ほんにまあ」おかしな話でございます。

　たった六年で人とは変わるものですね………。

　できあがった女性だった人が、デブで鈍間な。

　デプンチキンになられましたから。隣で痩せ続ける男性もいるのに。

　あれでは、抱けないわね……。

　女子高校生たちから「あの人」は『おねえ』だと言われたわ。

　おねえじゃなくて、本物のオカマですしのにね。