ぬくもりとすれちがい

ぬくもりとのすれちがい

うす暗い街中を通り過ぎる。

うす暗い中にも華はある。

赤ちょうちんやカラオケ。

のみやとよばれる酒場を


風のように、歩いて行く。


マンションから浴衣姿の女性

パッとそこだけ花が開花したような。

空気という名の右象無像。


その中に可憐に咲きほこるは、

強き風。そのいでたちは美しい。


ぶつかりそうになりあわてて避けた。

よくととのえられた烏の濡れ羽色。

シャンプーとコンディショナーの

香り佇む。サッサッと伸ばし羽は、

闇夜にたなびく。まるで白鳥のようだ。

かおりという名のおとしもの。

「あっ、すみま、せーん。」

女性が私の方へ頭を下げた。

博田なまりの鶴の一声。

夜景に塗料をサッサッとのばしたような。

しながわ百景。

闇夜に消失した、うるわしの君。

人身御供に、私利私欲。

ぴゃっどこぴゃっどこ。

ぴーひゃらぴーひゃら。

気品高く色気も兼ね備えた大人の女性。

好きか嫌いかと問われれば、

好きだろうと答えよう。

たった、一言だったが、

女性とは何たるかを思い知る。

彼女が残したイントネーション。

その言葉に思いを馳せる。

最近は子供の相手ばかりに励む。

我が生涯とは何たるかを思いみる。

時には、大人の女性と、

イントネーション

その言葉に思いを馳せる。


そろそろ、一服しようか。


関夜の道を抜けると、風立ちぬ。

道標は広けて大道理へと出る。

秋の夜空は、幾許か。

ぼんやりとした星空キラリッ。

大空（たいくう）にて苛静広がる。

公園を抜けるとUターンが待っている。

薄闇がかった大空が暗転して

明朝を迎へようとしていた。