人生とは九割がたの虚偽と一割のホントから生成されている。

疑心暗鬼 盲目と耳が不自由な男

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男は盲目である。さらに耳も不自由で、かすかな音や会話の断片を頼りに、日々を生きている。彼の世界は、闇と静寂が支配しているが、それでも一つだけ、彼の心をかき乱すものがある。それは、絶え間なく鳴り響くゲームの音だった。

そのゲーム音は、彼にとって日常の一部だったが、同時に苦痛の種でもあった。毎月、毎月、郵便受けには支払い用紙が溢れ、彼の手に触れるたびにその重さを感じた。彼はその支払いにうんざりし、疲れ果てていた。そこで母親と同居することで、なんとか支払いを避けようとしたのだが、これが新たな悩みの種となる。

母親との同居は、確かに経済的な負担を軽減してくれた。しかし、それと引き換えに、男は新たな誘惑に引きずり込まれていく。彼は女性に入れ込むようになり、その出費が彼をさらに苦しめる。女性たちが使用する金額は、彼の懐を空にするだけでなく、その心にまで暗い影を落とした。

やがて、男の中で何かが変わり始めた。盲目であり耳が不自由である彼にとって、世界は制約だらけであったが、その中で唯一自由になれる場所があった。それは、心の中だった。彼の心には、次第に黒い感情が芽生え始めていた。無力感と苛立ちが膨れ上がり、ついには殺意へと変わっていった。

女性たちの存在が、彼にとっての救いであると同時に、最大の敵にもなり得た。彼らを愛することで、自分の存在意義を見出そうとしたが、逆にその愛が彼を呪縛し、追い詰めていったのだ。

支払いを避けるために選んだ道が、皮肉にも男をさらに深い闇へと誘うことになった。そして、その闇の中で男は、自らの手で何かを終わらせようと決意する。疑心暗鬼の中で、盲目と耳が不自由な男は、果たして何を選び、どのような結末を迎えるのか。

その結末は、まさに闇と静寂の中でしか知ることができないのかもしれない。

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男の人生は、まるで悪夢のような記憶に縛られていた。彼の過去には、密室殺人、巧妙なトリックを駆使した詐欺、そして人里離れた山荘での殺人事件が絡み合い、いくつもの犯罪が織りなす闇があった。これらは単なる記憶ではなく、男の歪んだ性格と結びつき、彼の生き様を象徴するものだった。血にまみれた日々の中で、男は自らが何者なのかを知ることなく、ただ日々を過ごしていた。

彼の精神は深く傷つき、その支えとなっていたのは医師から処方される薬物だけだった。薬物対処法は一時的な安定をもたらすものの、そこには決して消えることのない副作用が伴った。視界はますます曖昧になり、耳に届く音はまるで遠い雷鳴のように曖昧で、現実感が失われていく中で、男は自分自身との戦いに立ち向かっていた。

彼の問いは常に一つだった。人生とは何なのか。答えは得られないまま、男の結論は次第に固まっていった。『この世は地獄だ』と。彼の瞳には見えないものがあっても、その心には絶え間ない苦痛と絶望が渦巻いていた。世界が地獄であるという認識は、彼の生きる希望を根底から覆し、彼の願いとは裏腹に、全く異なる結末へと誘われていく。

もがくようにして生きている男にとって、日々の苦痛は耐え難いものであった。それでも、彼は諦めずに生き続けた。もはや生存本能などという言葉では片付けられないような、ある種の執念が、彼をこの世に繋ぎ止めていたのかもしれない。しかし、その執念が男を救うことはなく、彼の望む結末とは異なる方向へと、運命の歯車は静かに、しかし確実に回り始めていた。地獄を生きる男が、最終的にどのような道を歩むのか、それは誰にもわからない。彼の選択が光をもたらすのか、それともさらなる闇へと導くのか。

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男にとって、犯罪は単なる行為以上の意味を持っていた。それは彼が生きていることを実感できる唯一の手段であり、殺人という極限の行為に身を委ねることでしか、彼は快楽を得ることができなかった。血の匂い、生命が消える瞬間、そしてその後に訪れる圧倒的な静寂—それらは彼にとって禁断の安らぎであり、逃れられない魅惑であった。

だが、その罪深い行為を帳消しにするために男が頼ったのは、酒と煙草、そしてドラッグだった。これらの依存は一時的な逃避を提供したが、同時に彼を深い泥沼へと引きずり込んでいった。現実から目を背け、責任を放棄することで、男はかろうじて自分を保っていた。

そんな彼の心のよりどころは、小説を書くことだった。筆をとり、物語の中で自らの感情を解放することで、男は自身の罪と向き合っていた。小説を書く時間は、彼にとって唯一の救いであり、世界と自分をつなぐ唯一の糸だった。しかし、最近ではその糸さえも断ち切られようとしていた。視力が衰え、文字を読むことも、書くことも次第に困難になっていった。そして、その代わりに聴力が鋭敏になり、周囲の些細な音までもが彼の精神をかき乱した。

彼を悩ます病、それは視力の喪失と聴力の過敏症だった。暗闇の中で生きることを強いられ、さらに音の洪水にさらされることで、彼の心は限界を迎えつつあった。小説を書くことで生きてきた彼にとって、その手段を奪われることは、まさに生きる理由を失うことに等しかった。

彼の世界は、ますます狭く、暗く、そして音に満ちた不快なものとなっていった。心の支えを失い、追い詰められた男は、再び犯罪という快楽に逃げ込むのか、それとも別の道を見つけるのか。彼の選択は、やがて彼自身の運命を決定づけることになるだろう。だがその時、彼が本当に望んでいたものは何だったのか—それは、誰にも、彼自身にさえもわからなかった。

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男は和歌山毒物混入事件にて、砒素をカレーやその他の料理が煮込まれたすべての鍋に混入させた。彼は人を殺害することに対して、冷淡でありながらも歪んだ楽しみを見出していた。殺人という行為をまるでゲームのように扱い、その快楽の延長として放火にも手を染めることになる。放火に興味を持ったのも自然な流れで、現住建造物等への放火のみならず、家の前に置かれた新聞紙やその他の小物に火をつけ、その音と燃え上がる火花を見るのが好きだった。ぼっと燃える音、メラメラと上がる炎、それらは男にとって刺激的で、異常なほど心地よい光景であった。

1998年当時、新宿署は男の事件を追っていたものの、男の逮捕には至らなかった。捜査の過程で、新宿署は男を泳がせ、証拠を得ることを優先とする戦略をとった。男の身柄は、新宿駅まで自由に動けるようにされ、その足で和歌山県へと向かった。そこでは、真夏の熱帯夜を思わせるような暑さの中、ビジネスホテルに滞在することになる。

和歌山では、偶然知り合った女性の家に居候することとなり、男の行動はますます大胆になっていった。事件後、男は練馬区に住む友人の家へと身を寄せる。友人たちが男を匿い、隠れ家のような環境を提供する中で、男は次第に犯罪と盗撮に溺れていく。彼の犯罪行為はエスカレートし続け、止まることを知らなかった。

男は犯罪を繰り返す中で、自らの行動がどれほどの影響を周囲に与えるのかを理解しつつも、その意識は薄れ、罪悪感は皆無だった。むしろ、そのスリルに魅了され、ますます犯罪へとのめり込んでいった。新宿署が男を追い詰める中で、彼は終わりの見えない逃亡生活を続け、和歌山から練馬区へと移り住むことで、その影をさらに深めていくのだった。

男の行動は、彼自身の破滅へと向かう一方で、彼の中に潜む暴力性と無関心は、誰にも止めることができないほどに増幅していった。犯罪を重ね、盗撮に耽る中で、男は自らの存在意義を見失い、ただ闇の中をさまよい続ける。しかし、その行為の果てに待つものが何であるのか、彼自身が気づくことはなかった。彼の選んだ道は、もはや後戻りのきかない深い闇へと続くばかりだった。

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