輝夜坊

行原荒野

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第二章 小さな画伯

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 その晩、亮次が風呂から出ると坊の姿が見えなくて、亮次は慌てて狭い部屋の中を見回した。ふと部屋の北側にあるサッシ戸の方を見ると、カーテンがふわりと揺れている。
「外に出たのかよ」
 舌打ちをしてカーテンを開くと、坊が土の上に降りてぼんやりと佇んでいた。
 そこは庭と呼ぶにはあまりにもささやかだが、一階の住人だけに与えられた半坪ほどのスペースになっている。隣家との仕切りもあるし、通りからも見えない程度の塀があるので、気軽に洗濯物を干したりすることも出来た。
 坊は亮次が傍に立っても振り返ることはなく、黙って夜空を見上げていた。
 天には眩しいほどに輝く月があり、それを静かに眺めている姿は、まるで本当に月を恋しがるかぐや姫のようだ。
 その背中はとてもちいさくて、未成熟すぎる感じがどこか痛々しかった。
 三月も後半に入ったとはいえ、夜はまだまだ寒い。
「冷えるぞ、中に入れ」
 亮次が静かに声を掛けると、坊はゆっくり振り返った。
 その表情はまるで人形のようで、大きな瞳は、月の光に煌めくガラス玉のようだ。
 最初に坊を見た時、宇宙人みたいだと感じたのは、この表情の無さが原因だったのだろう。
 声が届いているのかどうかも判らず、亮次は何故だかとても不安な気持ちになり、その腕をそっと掴んで中へと引き入れた。
 温めたミルクを出してやると、坊は子供のように両手でカップを持ち、コクコクと飲んだ。それからケプとちいさく喉を鳴らす。
 頭を撫でてやると、坊は微かに心地良さそうな気配を見せて目を閉じた。可愛い頭の感触に、亮次の口許も自然と緩む。
 六畳ほどの狭い部屋に薄っぺらいせんべい布団を敷き、その横に普段亮次が布団の下に敷いて使っているマットレスを並べる。シーツ代わりにタオルケットをその上に被せて、坊のための寝床を作った。  
 掛布団は一枚しかないため坊に貸してやり、自分は厚手のダウンジャケットを着て、大判のバスタオルを被って寝るのだ。
 昨夜は坊も疲れていたのかすぐに眠ったようだったが、今夜は部屋の明かりを消してもいつまでも坊が起きている気配がした。
 亮次が寝返りをうち、隣の布団を見ると、坊がタオルケットの上にぼんやりと座っているのが見えた。
 月が明るすぎるせいだろうか。部屋の明かりを消しても、薄いカーテン越しに洩れ入る月明かりで、坊の表情まで判るほどだ。
「俺は明日早いんだ。早く寝ろ」
 だが坊は布団に入らず、ずっとこちらを見ている。なんとなく一緒の布団に入りたがっているような気がして、仕方なく坊の寝床から掛け布団を引っ張り、自分の上に掛けてから坊に向かってめくってやると、坊は猫のように密やかな動きで布団の中に入って来た。
「贅沢なヤツだな。布団貸してやったのにこっちのがいいのかよ」
 亮次が苦笑すると、坊は亮次の腕のなかに潜り込むようにしてすっぽりと収まった。改めてその小ささに驚く。そして温かい。
 何故か胸が掻きむしられるような感覚を覚え、亮次は無理やりのように目を閉じた。
 
 翌朝仕事に出掛ける支度をしていると、坊がじっと亮次の動きを目で追っていて、いよいよ玄関を出る頃になると、まるで捨てられるかのような目ですがった。
「今日は早く帰るから。おとなしく待ってろよ。外には絶対出たらダメだぞ。いいな」
 テーブルのうえには菓子パンと紙パックの牛乳を置き、寒くないように上着も多めに着させた。
 昨夜坊が出ていたサッシ戸は施錠したが、出ようと思えばいつでも出られる。坊が大人しくしていることを祈るしかなかった。
 表情がないのに不安そうなのが伝わってきて、亮次はなんだか堪らない気持ちになったが、振り切るようにして家を出た。
 たった二日一緒にいただけなのに、あの小さな存在を守りたいと思っている自分に気付き、亮次はうろたえた。
 庇護欲など自分が持ち合わせているとは思わなかった。きっと自分に甘える弱い生き物に、ほんの少し同情しているだけだ。
 もしそうじゃないとしても、自分には愛情を持つことなど許されないと、亮次にはよく判っている。


加賀見かがみ、今のうち休憩入っとけ」
「はい」
 客の流れが一段落したところで、店長の佐藤さとうに声を掛けられて、亮次は昼食をとるためにスタッフルームに入った。
 コンビニの弁当を食べながら、坊はちゃんとパンを食べただろうか、一人で外に出ていないだろうかと心配になる。
 午前中は車が入ってきたのに気付かなかったり、注文を聞き違えたりして佐藤に怪訝な顔をされた。普段の亮次ならそんなミスはしないからだろう。 
「今夜のデートのことでも考えてんのか」
 佐藤にからかわれて亮次は小さく笑った。
「なんすかそれ」
 デートどころか子守りだと考えてまた小さく笑う。
 だがつまらないデートなんかより、よっぽど自分が浮わついていることに、亮次自身は気付いていなかった。
 現在亮次は週一日の休み以外は、ガソリンスタンドと警備のアルバイトをして生活している。
 高校を出るとすぐに、亮次は千葉にある実家を出て上京した。それから数年間はフラフラした生活をしていたが、今から三年前、ある出来事をきっかけに、生活を改めた。
 主にガソリンスタンドで働き、夜は週に二、三度夜間工事などの警備で道路に立つ。出来るだけ早くまとまった金を貯めるためだ。少なくとも四百万は貯めるつもりだった。 
 毎月十万は貯金をするため、生活はひどく質素だ。侘しい生活だったが、目標がある今は、この生活を惨めだとは思わなかった。
 
 亮次には三歳年上の享一きょういちという兄がいた。優しくて、優秀過ぎる兄だった。
 本当に幼い頃は、自慢の兄貴だったけれど、成長するに従って比較される悔しさと惨めさに亮次の心は次第に歪んで行った。
 亮次たちの父親は大学の教授で、とても厳しい人だった。理想が高くて、周りがそれに追いつかないことを、いつも嘆いているようなところがあった。
 一方の母親もそんな父を懸命に立ててはいたが、内心では息苦しい生活に不満を持っているのがみえみえだった。 
 享一は二人の自慢の息子だった。というより、享一に意識を集中することで、夫婦のバランスを保っているようなところがあった。
 亮次は両親に顧みられないことに傷つきながら、そんな彼らを軽蔑することで辛うじて自己を保っていた。
 高校に入ると亮次はいっそう反抗的になり、両親と口を利くこともほとんどなくなっていた。
 兄はよく、そんな亮次と両親との間に入って、自ら緩衝材の役割を果たしてくれていた。
 けれど嫉妬と憎しみに目が曇っていた亮次は、そんなスマートでさりげない兄の気遣いですらひどく癇に障り、ただひたすらに疎ましく思っていたのだ。
 そんな兄が死んだのは二十一の時だ。あまりにも呆気ない死だった。
 文武両道、眉目秀麗、人望も厚く、見せ掛けでない誠実さと温かさを持っていた兄は、本当に完璧な男だった。
 だがそんな完璧さを壊すように、心臓の病が唐突に兄を襲った。兄が大学三年生になったばかりの春のことだった。
 大学を休学し、入院生活に入っても、兄は兄のままだった。一度だけ母に強く乞われて見舞いに行ったことがある。
 病室で兄はもうすぐ亮次の誕生日だな、と言い、それまでには退院するよと言った。
 曖昧に返事をし、ほとんど会話らしい会話もしないまま亮次は病室を出た。
 原付バイクを停めた駐車場まで来て、亮次はなんとなく兄の病室がある方を振り返った。すると享一は窓から顔を出して亮次を見ていた。
 すっと兄の手が窓の外に伸びて、空を差したのを目で追うと、淡い虹が出ていた。兄に目を戻すと、兄は微笑んで亮次に手を振っていた。
 亮次は思わず俯き、それからフイと背を向けてバイクで走り出した。
 兄は完璧な男だ。きっと心臓の病などすぐに治して戻ってくる。
 そんな言葉を亮次は頭のなかで呪文のように繰り返していた気がする。
 兄は約束通りに、亮次の誕生日がある八月には退院してきた。大学にも復学し、激しい運動は禁止されていたものの、それ以外は少しずつ以前のリズムを取り戻しつつあるように見えた。
 そして季節は秋になった。その日は日曜日で、十一月に入ったばかりだというのに、ひどく冷え込む日だった。
 気温のせいか、兄は少し体調を崩し、自室のベッドで休んでいた。両親は法事で家を空けるため、享一のことは亮次に託された。
 だが亮次には友人との約束があり、享一が眠っているのを確かめると、八時には帰ると置き手紙をして家を出た。
 享一が朝からおかしな咳をしていたことが少し気になったが、ただの風邪だろうと思い、深刻には考えていなかった。
 だがその晩、八時を随分過ぎてから家に帰ると、兄はベッドのうえで冷たくなっていた。
 そこからのことはよく憶えていない。慌ただしいサイレンと赤い光が目の前を過り、冷たく白い病院の廊下に、母の泣きわめく声が響くのをぼんやりと遠くに聞いていた。
 すべては夢の中の出来事のようだった。
 葬式が終わると、家のなかは怖いほどの静寂に包まれた。
 両親が亮次を責めることはなかった。だがそれは彼らが亮次の心情を慮ったからではない。亮次が目に入っていなかったのだ。
 それだけ彼らの失望は激しかった。
『ねえ、……俺が死ねば良かった?』
 兄が逝ってひと月ほどしたある夜、亮次は通夜のような食卓で向かい合う父と母に尋ねたことがある。だが彼らが亮次の問いかけに応えることはなかった。
 それからはもう両親と話すこともなくなり、卒業と同時に亮次は家を出た。
 上京し、適当に金を稼いでは、酒や賭け事に溺れる荒れた生活を繰り返していた。
 亮次は背が高く、享一とはタイプが違うものの、十分に人目を引く容姿をしているせいか、言い寄ってくる女も少なくはなかった。
 亮次はそんな女達とただれた関係を結びながら、クズのような数年間を過ごした。
 そして今から三年前の春に、美里が仕事のために上京してきた。
 彼女は亮次たち兄弟の幼馴染で、享一の恋人だった。
 二人は本当に仲が良かった。
 美里には何故あの日享一が死ぬことになったのか、その本当の理由を伝えていない。
 それを知ったら美里は亮次をどれだけ詰るだろう。
 本当ならもう彼女に会うべきではないし、今みたいに世話になるなんてことはもってのほかなのだ。
 だが美里はいつも、惣菜を作って亮次を訪れるのはいい気晴らしになるし、亮次といると、享一も傍にいるみたいで嬉しいと言う。 
 だから亮次は美里の来訪を拒めずにいた。
 こうして彼女と会うことはきっと、亮次にとっての「罰」なのだ。
 兄をいつまでも忘れないために。
 その罪を決して忘れないために。
 そうして今、亮次は一人の罪びととして、兄が生前夢見ていたことを叶えるために、ひたすら金を貯める日々を送っているのだ。


 坊をアパートに連れてきてから十日ほどが過ぎた。相変わらず喋らないが、亮次といることにも随分慣れたように見える。
 亮次は坊の歯ブラシや服、肌触りの良いパジャマなどを買って与えた。
 美里も坊が好きそうな食べ物を作っては、頻繁にアパートを訪れるようになった。美里の料理の優しさに触れたせいか、坊も美里を見て怯えたりすることはなくなった。
 坊は左利きらしく、スプーンも箸も左手で持つ。箸使いは拙かったが、ゆっくりとした食べ方にはどこか品があった。
 もしかして喋らないのは声が出ないからではないかと美里が言うので、ノートとペンを与えてみたら、坊は文字ではなく絵を描いた。それもかなり上手い絵だ。
 どうやってそんな技術を身に着けたのかと思うほどに、坊の絵は精緻で完成度が高かった。
 左手に持ったペンや鉛筆をさらさらと白い紙の上で踊らせる。
 絵を描くときは、普段のぼんやりした姿が嘘のように、高い集中力を見せた。
 筆致はあくまで滑らかで、彼の頭の中にあるイメージを、そのまま写し取っているような迷いのなさだった。
 遠くを飛ぶ鳥や、晴れた夜の月、どこかの庭に置かれた睡蓮が浮かぶ鉢、ロウソクが並んだ可愛いケーキ、どこかの屋敷の門に向かって去ってゆく、誰かの小さな後ろ姿を描いたものもあった。
 亮次はこれらの絵に、坊の過去に関するヒントがあるような気がした。
「坊、凄いよ。天才だよ!」
 美里は手放しで坊を褒めた。亮次も坊はある種の天才かもしれないと思った。
 美里が自分を描いて欲しいと頼むと、坊はものの数分で初めて人の顔を描いた。
 だがそれはどう見ても亮次で、美里は文句を言いながらも、楽しそうにその絵を部屋の壁に飾った。
 絵の中の亮次は少し眉を顰めながら、困ったような、心配そうな、けれどどこか優しい顔をしていた。それは自分でも初めて見る表情だった。
「坊は亮次のことをよく見てるんだね。亮次の気持ちが判るみたい」
 美里が壁の絵を見つめながら、穏やかな声で言った。
 亮次は何も言わなかったが、確かに坊は、亮次が思っている以上に、亮次の心を読み取っているのかもしれないと思った。
 描くものを与えておけば、亮次が仕事で留守の間も大人しくしているのではないかと思い、ノートの他にスケッチブックや画用紙、色鉛筆なども買い与えた。
 仕事から帰宅するといつも大量の絵が床に散らばっていて、亮次はそれらを拾い上げ、一つひとつ丁寧に見てから、食事の支度をするのが日課になった。
 夜は風呂に入れてやり(坊は確かに男だった)、同じ布団で眠る。
 昨日は新しい布団を買った。湯上りのつやつやした綺麗な坊を、薄くてどこか湿ったような薄い布団に寝かせるのがなんだか嫌になったからだ。
 今までは貯金に手を付けたくなくて、生活の道具や日用品などに気を遣うことなどなかったが、坊のためだと思うと、貯金を切り崩すことにも不思議と迷いがなかった。
 買った布団は一組だけだ。金を惜しんだ訳じゃなく、自然とそうしていた。
 夜、ふかふかの清潔な布団に入った坊が、亮次の隣でどこか心地良さそうな溜め息をつくのを見ると嬉しくなった。
 
 以前は夕食のあと、例の公園までぶらりと歩き、池のほとりでぼんやりと煙草を吸うのが日課だったが、最近は坊を連れて宵の散歩に出るようになった。亮次が留守の間、坊をずっと独りで部屋に閉じ込めているのが可哀そうになったからだ。
 坊は散歩のとき、いつも亮次と手を繋ぎたがった。初めて逢った日に手を繋いだことが、坊にとって印象的だったのかもしれない。
 小柄とはいえ、幼児でもない坊と手を繋いで歩くのは恥ずかしかったが、坊はいつまでも諦めないので仕方なく繋いでやる。そうすると、坊の嬉しげな気配が伝わってきた。
 坊は相変わらず愛想笑いの一つもしないが、この頃はそれもあまり気にならなくなっていた。
 坊は感情がないわけではなく、単にその表し方が分からないのではないかという気がしていた。
 感情表現が他人との関わり合いの中で育まれるものだとすると、坊はほとんどの時間を誰とも触れ合わずに、独りきりで過ごしてきたのではないかと思えてならない。
 だがそんなことが果たして可能だろうか。どんな環境で育てば坊のような人間になるのだろう。
 静かな住宅街の中を通り抜け、川沿いの散歩道を辿り、なだらかな坂を登って近所の神社までの道をゆっくりと歩く。
 雨の気配を孕んだ春の夜風が、ふわりと二人の間を吹き抜けるのが心地良かった。
 そう言えば昔はよく、こうやって兄貴と手を繋いで歩いたと、亮次はふと思い出す。
『あらぁ、お兄ちゃんと一緒でいいわねぇ』
 近所のおばさんがニコニコ笑って、優しく声を掛けてくれたことまでが鮮明に浮びあがり、亮次は懐かしさと、その日々のあまりの遠さに、しばし沈黙した。
 坊は亮次の手を握ったまま、時折亮次を見上げた。大きくて澄んだ目は、最初の頃よりもしっかりと焦点を結び、どこか物言いたげな様子を見せる。
「…なんだ、俺になにか言いたいのか」
 亮次が頭を撫でながら言うと、坊は僅かに口を開けて、微かに、ぁ、と言った。
 亮次は驚いてかがみ込み、坊の両腕を掴んだ。
「おい、今喋ったか? もう一回言ってみろ。亮次って呼んでみろ」
 坊はちいさな唇をなおもぱくぱくと動かしたが、それ以上その口から音が洩れることはなかった。
 亮次はひどくがっかりしたが、それでも坊が何かを自分の中から吐き出そうとしたことは大きな進歩だ。
「いつかちゃんと声を聞かせてくれよ」
 亮次はまた坊の頭を柔らかく撫でて、今度は自分からその手を握った。
 ぽつぽつと雨が降り出したので、亮次は坊の手を引いて駅前の商店街まで早足で行くと、坊のために小さな黄色い傘を買った。
 驚いたことに、坊は傘の使い方を知らなかった。亮次が傘を開き、柄を握らせてやると、坊は不思議そうに傘の内側を眺めた。
「そうだ。そうすれば濡れないだろう?」
 傘の中から坊が亮次を見上げる。
 黄色い傘を差した坊は、とても絵になり、とても可愛かった。
「傘はおまえを雨から守ってくれるんだ」
 坊が亮次の分はないのかと目で問うている気がした。
「俺はいいんだ。大した雨じゃないし。家にもあるからな」
 それでも坊が動こうとしないので、亮次は仕方なくもう一本、自分用にビニール傘を買った。さすがに坊の傘に一緒に入るのは恥ずかしかったし、第一身長が違い過ぎるので並んで入っても坊が濡れてしまうだろう。
 亮次が傘をさすと、坊は満足そうにちいさな息を吐き出した。そんな仕草が可愛くて、また自然と頬が緩んでしまう。
 坊と出逢ってから、亮次はずいぶんと笑うことを思い出したような気がした。

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