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第四話 迷走ディルドはどこに向かう?

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「ちょ、ケイツ様、一体どうされたというのですか?」
 
 行き先はいつも二人で眠っていた寝室だった。
 ケイツ様は私をベッドに突き飛ばし、立ったまま俯いていた。

「…………ぜだ?」
「……ケイツ様?」
「――らか?」

 酷く苦しそうに溢れる言葉は、上手く聞き取れない。
 ただ、ケイツ様が今、何かにすごく傷ついていることだけはその様子から察することができた。

「ケイツ様、一体……」

 そう問いかけた私に、憎々しげな低音の声は掠れる。

「……結局は、貴女も一緒だったのか、あの女達と」
「……へ?」

 その言葉に私は眉を寄せる。

「――使えなかったから、合わなかったから」

 その瞬間、ケイツ様の頬に光るものを見てしまった私は狼狽えた。

「待って下さいケイツ様、私は……」

 だけど、私の声は侮蔑に満ちた言葉に上書きされた。

「――だから、あんな男に、乗り換えたんだろう」
「は……?」

 そう言い放ったところでケイツ様は顔を上げて、はっ、と無理に笑って私を蔑むように睨みつけた。
 
「……あいつとどんなことをしたの?私にしてくれたこと?」
「…………」
「それとももう、受け入れたの?…あいつ、よかった?」
 
 侮蔑を含んだ視線に胸が苦しくなった。
 だけど、心当たりのない私には答える術もない。
 
「わかっている、これが私の八つ当たりだってことも、私の気持ちなんて、どうせ君は知らないんだ、だから……」
「……ケイツ様?」
「……我慢なんて、しなければよかったんだ」
「……な、にを?」
「その方が、……優しくだって、出来たかもしれないのに」

 そう呟いたケイツ様は悲しく顔を歪めた。
 
「……愚かだな私は、ひよりから貰った好意が立場を省みず嬉しくて、その快楽がいつの間にか毒のように全身に広がっていることにも気付かなかったなんて」
「ケイツ、様?」

 立ち尽くしていたケイツ様は、ベッドに膝を立てて、黙ったまま私をそこに押し倒した。

 正直、ここまでされてもケイツ様が何にこんなに怒っているのか理解できない。

 でも、ひとつだけわかるとしたら……

 ―――完全に、キレてる!

 ケイツ様の冷たい指先が私の頬を掠め、手のひらがそれを包み込む。
 口角を少しだけ吊り上げたケイツ様は、まるで呪いをかけるように薄暗い瞳で呟いた。
 
「……、ひより」
「……え?」
 
 意味がわからず、ケイツ様を見上げる私にケイツ様は、暗示をかけるように低い声でもう一度言葉を発した。
 
「私だって、ちゃんと入れるはずだよ、――
 
そう言って腰をスッと撫でられた私はぶるっと身悶えた。
 
「ケ、ケイツ様?」

 あまりの言葉に私の声は裏返った。
 だけど、いつもは凪いだその瞳は、今はまるで獣のようににこりともせず真っすぐに私を捕らえている。

「最初はすごく痛いかもしれない、きっと私は君を苦しめるだろう、だけど大丈夫、私達はちゃんと繋がれる……」

 陰りを帯びた瞳は、そう言った瞬間、獰猛な光を宿した。

「――君にはしっかりとその痛みの意味も受け取ってほしい、痛みの後に、君の中に私の居場所を得たら、あの男とは比べ物にならないくらいこの私があなたに快楽だけを与え続けてあげるから…」
「なっ……」

 そして私は大きな体に抱きすくめられた。

――ケイツ様に抱きしめられている?
 
「あぁ、ひより、もう、君が私だけでいいと、他に何もいらないと思うくらいに君に私の全てを捧げ尽くしたい……」
 
 悲壮な面持ちのケイツ様がギラギラした瞳を宿して私を捕らえる。
 
「どうか許して欲しい、私はもう、ひよりじゃなきゃダメだから…」

 ――私じゃなきゃダメ?

「やっと理解したんだ、もう全てどうでもいいんだと、だけど、どんな手段を使ってでも、ひよりの唯一にならなければ気がすまない」

 ――なんて、投げやりで利己的な言い分だろう、だけど
 
「そ、それって――」

 ―――

 まるで、そう言われているようで愕然とする。

 だけど、まさかそんな筈はない。
 私の恋は、ところから始まったのだから。
 私はこの世界で恋をすることを思い出せた。
 その片想いを、でも、納得いくまで成就させる。
 それが、私に残された最大限の望みのはずなのだ。

「ひより……」

 ――え?

 気づけば、唇をやわらかく吸われ、うちから痺れるような波が湧き上がっていた。
 宝石のような淡い瞳が欲を宿して間近で私を覗き込む。
 
 ケイツ様からの初めてのキス、それは余りにも突然であまりにも甘い口付けだった。
 
 一気に心拍が早まった私は勘違いしそうで怖くなる。


「ダメ……」

 吐息に紛れた拒否はと、自分に向けたものだった。
 だけど、その言葉に傷ついたように微笑むケイツ様に胸が痛くなる。
 この人は泣きそうな時ほど笑おうとするから。

 ――どうして、今?
   どうして今なの?

「……ひより無駄だよ、拒んでも逃すつもりはないから」
 
 少し怖いくらいの真剣な表情で私を見下ろすケイツ様の真意がわからなくて、私はやり切れなさに顔を歪めた。
 
「こ、拒んでいるのはケイツ様でしょ」
 
 泣きそうになるのを懸命に我慢して睨みつける私に対して、ケイツ様はぞっとするほどの不遜な笑みを浮かべて答えた。
 
「この私が、あなたを拒む?まさか――」
 
 そして、完全に私を捕らえるように覆い被さったケイツ様は私の耳元で囁いた。
 
「拒むとしたら、別れの言葉だけだ……」

 そう言って唇が再び重ねられた。そして、私を手繰り寄せるように抱き寄せたケイツ様は切なげに私の名前を呼んで、耳たぶにくちづける。

「ひより……」

 ケイツ様の手により、ドレスの布が滑り落ちて背中が露になった。

「はぁ、白くて綺麗だね、まるで真珠のようだ……」

 ケイツ様は正面から私を抱いたまま、顕わになった背中を摩るように撫でながら、首筋に唇を這わせた。

「あっ……」

 突然のチクンとした甘い痺れに私は声をあげた。
 ケイツ様は痺れたその箇所をうっとりと見つめていた。

「……ほら、ひより、君の雪のような肌に、私の印が刻まれたよ」

 どこか高揚したようにそう呟くケイツ様の声に、私の胸は熱くなりドクンドクンと心臓が高鳴る。

 「ケイツ様……」

 赤く染まった顔で恥いるように、そう呼ぶとケイツ様は少しだけ頬を緩めた。

 「ひより……」

 そういって、またふにゃりと触れるだけのキスをしかけるケイツ様は、私に強請るように言った。

「ひより、もっと私の名前を呼んでくれないか?」
「ケイツ様……」
「もっと……」
「ケイツ様……」
「もっと、もっと呼んで」
「ケイツ様」

 そう言った瞬間、堪らないとばかりに抱きしめられて、食むように唇を塞がれた。
 やがてねっとりとした舌で懇願するように唇をこじ開けられる。
 
 「はぁ、ひより、君を誰にも渡さない……」

 そして、宥めるようにベッドに押し倒された私は、ケイツ様の噛みつくようかキスを無我夢中で受け入れた。    
 そのキスはやがてねっとりと深くなり、まるで食べられてしまうんじゃないかと思うくらいに私の口内の至る所を蹂躙する。

 「はっ……、苦し……」

 朦朧とする頭で、吐息に紛れた拒否をする私を見つめ返したケイツ様は、私から唇を離した。
 そして、空気を求めて呼吸を繰り返す私の喉元に這わされた薄い唇は、またその場所で甘い痺れを私にもたらした。

「あぁ、ひより、まるで濃い芳香のように、君の香りが深まってくるね……」
「やっ……」

 ケイツ様は、まるで酔ったように私の鎖骨に唇を這わせながら、焦れた様子で室内用のドレスの布を取り去った。

「あっ、ケイツ様……」

 白い乳房がまろびでると、私は羞恥でケイツ様から目を逸らした。

「あぁ、ひより、なんて美しいんだ――」

 そう愛し気に囁いたケイツ様は、恐る恐るという様子で私の両の乳房にしなやかな指先を伸ばした。
 その指先が私の柔肌に埋もれてはじき返されたその瞬間、ケイツ様は感嘆の息を漏らした。

「あぁ、こんなにも柔らかく温かいとは……」

 恍惚の表情を浮かべるケイツ様に私は羞恥で居た堪れなくなる。

「……そんなふうにみつめられると恥ずかしいです」
「……はぁ、すまない、私としたことが、いくら感極まったとはいえ、無作法をしてしまった」


 興奮を何とか押し込めたような艶のある低音の声でそう言って、ケイツ様は上着を脱ぎ捨てた。

「っ……」
「だけど、やはり見ないなんて無理だ…」
 
 上品かつ精悍な顔の下には、私が予想していた以上に逞しい身体が存在した。
 そう、今気づいたが、私はケイツ様のチン○は咥えた事があっても裸すら見たことがなかったのだ。
 
 太い腕、傷跡のある厚い胸板は彼が戦いに身を置いてきた騎士であり、今も鍛錬を怠っていないことを如実に物語っている。

 「それに、ひより、申し訳ないが、私の理性はもう限界だと覚悟してほしい……」

 そう言ったケイツ様は私に覆いかぶさった。
 まるで獲物を見つけた獣のように光を放つその瞳に、私はぶるっと身悶えた。

 「――君を私のものにする、そして誰にも渡さない」

 「ケイツ様?」

 「そして、私はもう、――生涯、

 美しい切れ長の瞳は細めらたまま、今、まるで何かと決別するかのように激しい眼光を放った。

 報われなくてもいいと思うのに、どうしたって惨めになる恋だった。
 
 ――そのはずだった

 だけど次の瞬間、私は信じられない言葉を聞いたのだ。

「だからひより、私のになってくれ、私を君のとして欲しい」

 私は目を見開いたまま、ケイツ様の顔を凝視した。
 するとケイツ様は、我に返ったように、はっと、息を呑んだ。
 
 少しだけ決まりの悪い顔をしたケイツ様は、おそるおそるといった風情で私に問いかけた。

 「……嫌、だろうか?」

 その瞬間、ぐちゃぐちゃだった感情ごと表情が崩れて涙が溢れた。

 「ひより、そんなに困らせたか?それでも私は……」

 狼狽を顔中に漂わせて、必死に次のなにかを伝えようとするケイツ様に私は泣きながら首を振った。

 「……違います」
 「どうしても……、へ、違う?違うとは?」

 きっと私の気持ちなど測りきれていない不器用なケイツ様に、私はこの状況を説明しなければならない。

 相手の気持ちを測りきれない不器用さは私も同じだったのかもしれない、と自嘲しながら……

「……嬉しくて、涙がでるんです」
「……嬉しい?――それでは」

「私も、ケイツ様とずっと一緒にいたいです、ケイツ様に私だけの夫になってもらいたいです」

 ――もうすれ違いたくないから
 ――言葉はやっぱり大切だと知ったから

「……ほ、ほんとうか?」

「はい、何を勘違いされてるのかわかりませんが、私は、元よりケイツ様だけをお慕いしています」

「ひより……」
「…あんなことをするのも、好きな人だけです」

 その瞬間、ケイツ様の顔がまるでサプライズのプレゼントを貰った子供のように驚きから喜びに代わり輝いた。
 
「ひよりっ!信じていいのか?」
 
 そして、苦しいくらいに抱擁される。
 予想の斜め上をいく子供みたいな喜び方に私の心は温かくなった。
 
「ちょっと、苦しいです!」
 
 だけど、その苦しさが心地よかった。
 この無邪気な喜びがケイツ様の言葉が本心だと確信できるようだったから。

 やがて、瞳と瞳を絡め合った私達はどちらからともなく唇を重ねた。
 
 「はっ、ひよりっ……」
 「ケイツ、さまっ……」

 互いが互いを求めあうように深く絡みついた舌が、静寂な室内に水音を響かせる。
 うっとりと見つめ合ったまま、唇を離せば、銀の糸が二人を結び、やがてプツンと途切れた。
 そして、私は僅かな羞恥で瞳を逸らした。
 今、私に覆いかぶさるケイツ様の剛直がその存在を主張しているからだ。

 「ひより……」

 まるで熱に犯されたような余裕のない瞳が何を欲しているのか嫌でもわかる。
 だからといって、じゃあすぐにどうぞと受け入れられるようなではないことは実証済みだ。
 
 私は、オズオズと剛直に手を触れた。

 「うっ……、ひより……」

 それはそのままにしておくには余りにも苦しそうで、私は起き上がって、ケイツ様の下履きのなかからギンギンになった大きなイチモツを取り出した。

「苦しそう……」
「ひより……」
 
 助けてくれとばかりに苦しそうなケイツ様と瞳が合わさった。

 私は目尻を下げてヌメヌメと迸った液体を根本まで滴らせた大きな幹にそっと唇を寄せて舌を這わせた。
 その瞬間、ケイツ様がうぅ、っと声をあげて体を震わせた。
 私は、熱くて太い陰茎を色んな角度から舐め上げて、やがてちゅぱっと大きなその先端を口に含んだ。

 「あぁ……、くぅ……」

 全部が口に収まるはずも無くて、私は両手でケイツ様の陰茎の根本を包み込んで扱きながら、そこからはみ出た大きな先端を懸命にジュルジュルと音を立てながら咥えて奉仕を繰り返した。

 「うっっ……、あぁぁぁ、ひより、気持ちいい……」

 そんな波のなかでケイツ様の大きな掌が、まるで私を押さえつけるように後頭部に置かれた。
 そして、ケイツ様はよがりながら、私の後頭部を労うように愛おし気に撫でた。
 いつもは遠慮がちに引っ込めてしまっていた手が本当は何をすることを欲していたのか、ようやく理解出来た気がして、私の胸はじわじわと熱くなった。

 「あぁぁ、ひより、す、すまない出る……」

 やがて一際大きくなったケイツ様の剛直は私の中でドクドクと激しく弾けた。
 野獣じみた匂いが広がるも、それがもたらす現実味が嬉しくて私はそれを飲み下した。

 「また、……飲んでしまったのか」

 息が上がったままのケイツ様が、私の頭を抱き寄せる。

 「はぁぁ、ひより……」

 そう溜息をつくように私の名を口にしたケイツ様は、まだ淫臭の残る私に唇を重ねて、再び深く舌を絡ませる。
 驚く事に、ケイツ様の剛直はすぐに大きく回復した。
 その勢いに驚いて目を見張る私に、ケイツ様は悪戯っぽい微笑を浮かべて囁いた。

 「今度は、ひよりのなかでイカせてほしい……」

 羞恥に顔を染めた私の唇にやわらかなキスを落としたケイツ様は、そのまま両手で包み込むように私の胸を持ち上げた。
 そして、壮絶な色気を醸し出して私の双丘をもみしだく。

 「…っ…ああっ!」
 
 湿り気のある肌にケイツ様の赤い舌が這わされる。
 視覚情報だけでも憤死しそうな私をケイツ様は執拗に責め立てる。

 「はぁ、ひより、可愛い、それにすごく柔らかい」

 ケイツ様の指の動きによってぷっくりと盛り上がった乳房の先端をねっとりと赤い舌で舐められる。

 「はぁぁ、ん……」

 「ふふっ、ひより、気持ちよさそうだね、こっちも同じようにしてあげようね」

 そう言って濡れそぼった片方の先端をコリコリと転がしながら、もう一方の先端に這わされる桜色の舌の動きに私は翻弄される。

 「ああっ、ん……、ケイツ様、ダメ、刺激が強すぎて、はぁ……」

 息も絶え絶えな私に、ケイツ様はまた一つ唇を重ねる。

 「大丈夫だよ、ひより、私の前でだけは、どんな痴態を晒したっていいからね……」

 そう言ってケイツ様は、私を抱き上げるようにして、私を自らの上に跨らせ今度は深く唇を重ねながら、汗ばんだ私の双丘の先端を口に含んだ。
 
「は、あぁぁん……」
「はぁ、ひより………」

 ぎゅっと私を抱きしめたケイツ様は、そのまま私をくるりと反転させて座ったまま後ろから抱きしめ直した。
 そしてケイツ様は私のうなじに顔を沈める。

 「……はぁ、もう、君の匂いでどうにかなりそうだ」

 そう言ったケイツ様は、首の後ろに唇を這わせて甘い痺れの跡を残した。

「は、ぁ……」
「――こうしてると、どんどんきみが私のモノになっていくようだね」

 そう愉悦を帯びたため息とともに耳たぶに優しいキスが落とされる。

 「ふぁ……」
 「……ひより、好きだよ」

 顔をねじるようにして深く交わされるキスの間に、やわやわと乳房を揉みしだいていたケイツ様の掌はやがて脇腹を這い、下腹を撫でて、ドレスの裾から太腿を優しく撫で上げる。

「あっ…………」
「ひより……」

 何度も太腿の内側を行き来する温かい手にうちから痺れるように切ない何かが湧き上がる。
 下腹部の奥がジンジンと熱くなる。

 「ひより……」

 もう一度、許可を乞うように耳元に口付けられたと同時に、ケイツ様の指先が私の下腹部から茂みを掻き分けた。

 「はぁ、、ん……」

 そう声を上げた瞬間私の尾骶骨の後ろで存在を主張しているケイツ様の剛直も大きく反応した。

 「はぁ、ひより……」

 チュプン、とケイツ様の指を誘う蜜口が期待に震える。そして、ケイツ様の声も、息遣いもどこか余裕のない湿り気を帯びていた。

 「っ、……あっ……」

 クチュリとぬかるんだ泉を滑った指先が、女性の一番敏感な部分を掠めた瞬間私は艶のある声を漏らしてしまった。触られてもいなかったそこは既にヌルヌルに濡れそぼっていた。

 「ひより……」

 それに気づいたケイツ様は、喜色を帯びた様子で、耳元で囁いた。

「すごい、こんなにドロドロだ……」
「い、言わないで、恥ずかしいから……」
「どうして?私は、とても嬉しいよ」
 
 そう言ってゲイツ様は再び耳たぶにくちづける。

「は、そ、それでも……っ!あぁぁ」

 愉悦の笑みを浮かべたケイツ様は、私の蜜口を二本の指を使い責め立て始めた。

「あっ、あっ、あっっ、はぁぁん……」

 慣れない刺激に翻弄されながら、私は涙目になって悟る。少しの経験はあるつもりになっていたけれど、まるで時を巻き戻されたように若くなっているこの身体は、きっと男など知らないのだ。

「やっ、あっ、あっ、ケイツ様……、待って……」

 そう口にしたのも束の間、ケイツ様の長い指が蜜壺の中にツプンと押し入った。

「はぁぁん……」
「痛い?」
「痛くは、ないけど……」
「よかった……」

 そうしている間にも、蜜はどんどん奥から溢れ出て、いつの間にか蜜壺に出し入れされる指の数も二本に増やされている。苦痛と紙一重の快感の中で私は声を上げ続けるしかなかった。

「はっ、やっ、ケイツ様、ダメっ……」

 軽く意識が飛びそうになったところでケイツ様は私をシーツの上に横たえた。
残っていた衣類を全て取り除いたケイツ様は私の上に覆いかぶさり、そっと優しい瞳で唇を重ねた。

「ケイツ様……」

 そのまま私の内腿に唇を這わせたケイツ様は、私の両の膝を開くように持ち上げた。

「ひゃ……、ダメ……」

 ぱっくり開いたままだろう女陰がケイツ様の目に晒されていると思うと、恥ずかしさに肌が戦慄いた。

「あぁ、ひより……」

 だけどケイツ様から漏れ出たその声はかつてないほど甘い響きを帯びていた。

「綺麗だ……、もうじきだね……」

 そう言ったケイツ様は吸い寄せられるように私の淫らな場所に顔を埋めた。

「ちょ、ダメ、ケイツ様、そんなところ、汚いから……」
「ふふっ、君がそれを言うの?汚くなんてない、人を愛する事は汚くない、君が私にそう教えてくれたんだ」
「ああっ!あっ……、ダメっ、ダメっ、はぁ……っ!!」

 あれから蠢く舌の感触に性感帯のあらゆる場所を翻弄され続けた私はもう限界を迎えていた。
 やがてケイツ様は、尖った舌先で私の一番敏感な場所を責め立てながら三本に増やした指を私のなかに押し入れた。

「やっ、ああ……!!」

 怖いくらいの異物感に私の身体は慄いた。

「やっぱり、キツイね……」

 ケイツ様は、荒くなった息を整えながら、私の敏感な部分を舌で刺激する、強すぎる快感に私は嬌声をあげる、だけど次の瞬間、私は身体をしならせた。

「ひゃ!ああ!?」

 その反応を見たゲイツ様は、再び同じ場所に刺激を与えた。

「や、やぁぁ!」
「ここだね、きっとひよりが一番感じる場所……」

 そう呟いたケイツ様は私に口をつけて少しだけ意地悪な顔で微笑んだと思ったら再び股の間に顔を埋めて、花芯を舌でクリクリと刺激しながら、二本の指を出し入れして、さっきの場所を擦り始めたのだ。
 
「ひっ、きゃ、ダメっ、ダメぇぇ、怖い、ケイツ様!」

 だけどケイツ様はどんなに私が泣き濡れても、その手と舌の動きを緩めてはくれなかった。
 涙を流しながら追い詰められた私は、限界のなかで悲鳴をあげて力尽きた。

 つま先が痙攣したように震えて、心臓がバクンバクンと音をたてる。一瞬意識が飛んだようにも思えた。

「ひより……」

 汗ばんだケイツ様が私を見下ろしていた。

「ケイツ様……」
「あっ……」

 その時、蜜口に熱くて大きなモノが押し当てられていることに気づいた。

「ケイツ様」

 その瞬間、期待に体が震えた。

 ――ケイツ様が自ら、自分の意思で

 前の世界では当然だったその行為はここでは意味が違う。私は泣きたくなった。

 ケイツ様が苦しげに腰を押し進める。

「はっ……」
「ひ、より、大丈夫?」

 ケイツ様が心配そうに問いかける。

「だ、大丈夫です、だからそのまま……」
「うん……」

だけど、次の瞬間、想像以上の激痛が押し寄せた。

「っ……」
「ひより……」

 繋がりかけた結合部分を見た瞬間、ケイツ様は眉を寄せた。きっと血が滲んでいることに気づいたのだろう。

「…………やめようか?やはり君を傷つけたくない」
「いやっ!!!」

 私は泣きそうな思いでケイツ様を睨みつけた。
「絶対にやめない」

 ―――この先もずっと一緒にいたいから
 
 愛したいし、ただ一人と愛されたいから。
 それは体だけじゃないとわかってても、繋がりたい、ひとつになりたい、誰よりも私が一番あなたに近い存在だと実感したい。

「お願い、やめないで……」
「でも、このままじゃ、裂けてしまいかねない」
 
 ――裂ける?

 その時、私は、一人の男のおちゃらけた言葉を、まるで天啓のように思い出したのだ。

《治療してくれよぉ!ひより、なんたって俺には、聖女様がついてるし最強じゃん!?》

 「……ゼバ、天才」

 そう他の男の名前をつい呟いた瞬間、ケイツ様の顔はまるで鬼神のように固まった。
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