高嶺の花の秘密の性癖

たまりん

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知らない幸せ

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ようやくこの地に帰ってきた。

俺の名前はシルベスト。
この帝国の 公爵家の長男にして、今は王国軍第二騎士団の騎士団長を務めている。

将来は帝国軍の頂点に立ちこの国の安全の要になる男だと自負している。

数年前、まだ若くして出兵した俺は戦地での戦でそれなりに評価される結果を残し帰国した。

そして戦勝祝いの夜会を迎えている。
軍を讃える宴だ。

だが、俺の心はここにあらずだった。
多くの男女から声をかけられるのをそれなりに笑顔と社交辞令でかわしながら、目は愛しい一人の女の姿を探す。

その女の名はリズベリーナ。
彼女とは幼馴染で従兄妹どうしの関係でもある。

(リズ…どこだ?)

焦燥感が今にも破裂しそうだった。

俺の愛しい人。

彼女と引き裂かれたの7年前。
物心ついた頃から温めてきたほのかな恋心は、その後消える事なく、心の支えとなり、過酷な毎日で俺を生かしてきた。

戦地に何度も送られてきた俺の名入りの白いハンカチ。
それが俺の心の拠り所だった。

いつの日か必ず武勲をたて、お前を迎える。眠れぬ夜、何度あの笑顔を思い浮かべて、そう違ったことだろう。

ようやく帰還が叶い、凱旋パレードで間遠に彼女を見かけた時、その美しさに俺は目を疑った。

《社交界の高嶺の花》と呼ばれるほどに美しく育っている事は知っていた。

でもまさか、これ程だとは…。

あの時俺は彼女の成長と無事を心から喜び、同時に激しい嫉妬を覚えた。

他の男の前に身を置かせるには美しすぎる。しかも、自分はあんなにも美しい想い人を一人にしていたのかと…。

薄暗い独占欲に支配された瞬間だった。

(リズベリーナ、俺は必ずお前を手に入れる。天が与えたこの機会に…)

だが、そんな風に意気込む俺はこの後知ることになる。

それはどんなに困難を極める願いであるのかを。

俺が愛した唯一の女は、世の男がどう接していいのかわからない程の不毛な性癖の持ち主だったのだ。
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