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合宿前夜
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夏フェスが終わり私の夏休みは最終日に近づいていた。
宿題もあらかた終わり苦手な国語と英語を残し最終日に向かって日数だけが進んでいた。
そんな中で夏休みの前半、話していた合宿の件が先日れいにぃから説明され明日からまた三日間合宿のため家を空ける事となっている。
ピンポーン
「姉ちゃ~ん!お客さ~ん!」
「は~い!今行くー!…うわっ!」
ドタバタドタドタ…ゴンッ!
慌てて下に降りようと階段を降りると足を滑らせ勢いよく転落していった。
「またか…」
「大丈夫か?」
「いつもの事ですから気にしないでください!葉山さん、それより今日はどのようなご要件で?」
「今日はお姉さんに合宿の話と君達にこれ…」
期待に満ち溢れた眼差しの雪の弟妹である
優と夢の前にシュークリーム入の可愛いらしい箱を差し出す。
「うわぁ!可愛い!この中身なーに?」
「シュークリーム」
「やったー!私が一番先に食べる!」
「あ、こら!夢、お礼も言わずに持ち去るな!」
嬉しそうにシュークリーム入の箱を持ってる居間に走っていった夢に注意をしつつ慌てて葉山に向き直る。
「すみません、葉山さん!毎度、僕達のためにわざわざ手土産ありがとうございます…」
「いいよ、いいよ。俺が好んでしてる事だし…それにあの雪の弟と妹だからね」
優しい瞳で見つめる葉山に、優は嬉しそうな顔を向けた。
「僕達も葉山さんの事、お兄さんみたいで会えるだけで嬉しいです」
「おー、言うねー。さすが雪の弟だ」
撫で撫でと子犬を撫でるように優の頭を撫でる。
「あ、でも優くんは雪よりしっかりしてるなぁ…」
「あの姉の弟ですから」
未だに床で痛そうにお尻を摩る雪を見ながらそう言う優に苦笑いが零れた。
「あははは…」
「お兄ちゃーん!シュークリーム早く食べないとなくなっちゃうよ!」
優は、夢の声が聞こえすかさず踵を返し居間へと走っていく。
「しっかりしててもやっぱりまだ子供だな…」
「当たり前でしょ、まだ小学生なんだから」
お尻を摩り終わった雪が苦笑いを浮かべる葉山に答えながら玄関先に近づいた。
「まぁな…でもお前よりはガキじゃねぇな」
「ムッ…何よそれ!私の方が優より大人ですー!」
「大人じゃねーだろ。森の中で迷子になるわ、まんまと人に流されるわ…散々振り回してくれてるのに大人とはいえないよな?」
「うっ…そ、それは…」
図星を刺されて押し黙る雪の様子が余りにも可愛く見えついそのふわふわな髪に手が伸びる。
「ちょっ…何すんの…やめっ…」
嫌がる顔もまた可愛いな…
そんな事を思いながらわしゃわしゃと撫でる手をやめないでいると抵抗しても無駄だと諦めたのか半睨みで大人しくされるがままになる雪に思わず吹き出す。
「ふっ…あはははっ!」
「もう…からかわないでよ!」
「悪い悪い、そう膨れるなって…後で宿題手伝ってやるから」
「え!?いいの?」
途端に笑顔になる雪にまた吹き出しそうになるのを堪えながらも”ただし”と条件を突き出す。
「ただし、高菜おにぎり付きな?」
「あー、はいはいわかりました。作りますよ…背に腹は変えられない」
「なら、宜しい」
まんまと葉山のペースに乗らされた雪にしめしめとニヤつく顔を隠すこと無く雪の顔を見るとそれが癪に障ったのか益々不機嫌そうに顔をしかめる。
「いいから早く入って!いつまでも玄関先にいる訳にはいかないでしょ?合宿の話もあるだろうし…」
「ああ…お邪魔します」
何だか妙な気持ちだな…
前世とは言え妹である雪の家にわざわざお邪魔しますという感覚に違和感を覚えつつも一軒家の老化寸前のボロボロの家に足を踏み入れる。
床が軋む音や水漏れの音が微かに響く中、二階にある雪の部屋と階段を登り上がっていく。
キシキシ…
「結構がたきてんな、この家」
「まぁね。元から多少はがたきてたんだけど改築するお金もないしやばいとこはガムテープとかで補強するしかない状態なんだ」
「なるほどな…俺が工面してやろうか?」
「そういうのいらないから大丈夫。人にお金関係で頼りたくないの…いくられいにぃでもね」
「相変わらずだな、そういう頑固なとこ…」
「せめて、真面目って言ってよね」
たわいない話をしながら雪の部屋に着くとあまりの物の少なさに驚く。
「お前、こんなに部屋物少ないのか!?前世ではもっと…」
「だ~から!お金がないからこれがベストなんだって」
「お金がないからってこれは…」
変わりすぎだろ…
前世での雪…かなの部屋は沢山の可愛らしいぬいぐるみや小物で埋め尽くされていた。
だが、現在の雪の部屋は如何にも質素で必要最低限の物しかなかったのだ。
「ぬいぐるみとか前世では好きだったろ?」
「ぬいぐるみは今でも好きだけどそういうのあるなら全部夢にあげたいし、そういう買えるぐらいのお金があるなら生活費に全部回すよ」
葉山少しの間押し黙り何かを思いついたように再度口を開く。
「かな、お前の誕生日いつだっけ?」
「え?十一月十一日だけど…」
「ふ~ん…」
「な、何?」
「何でもねぇよ…」
素っ気なくそう言い座布団の上に座ると不服そうに頬を膨らませる雪に隣に座るよう促す。
「ほら、宿題するんだろ?」
「っ…馬鹿」
雪は、小さく悪口を言うと悔しそうな顔で流されるように葉山の隣に座る。
「フッ…」
その様子ににやにやとしているとそれに気づいた雪がムッとした表情で頬に手を伸ばす。
「痛っ!」
頬を引っ張る自分より小さな手が躊躇なく強く引っ張り続け降参とばかりに両手を上げるとゆっくりと引っ張る手を離す。
「眼鏡の下で変な顔してた気がしたからつい…」
「変な顔って…俺の顔はまともだって」
「まともならイケメン顔にならない」
真顔でそう言うとすくっと立ち上がり勉強机から宿題を取り出すと座布団の真ん中にある小さな机の上にそれらを広げる。
「国語と英語…お願いします」
少し照れたように俯きながら言う雪が可愛らしくつい悪戯心が湧く。
多分、妹だからでもあるのだろうな…
微笑気味に心の中でそう思いつつ机の上に片肘を付き雪の顔を覗き込むと不敵な笑で問いかける。
「…もう一度」
「っ…馬鹿!」
バシッ
っ~~~~!!
見事に平手打ちをくらい頬を摩るが真っ赤になっている雪の様子を見たら代償としては価値があると満足感が湧いた。
「ほら!始めるよ!」
「ああ…いくらでも教えてやる。お兄ちゃんが…」
その言葉の枷を俺はまだ外すつもりはない。
宿題もあらかた終わり苦手な国語と英語を残し最終日に向かって日数だけが進んでいた。
そんな中で夏休みの前半、話していた合宿の件が先日れいにぃから説明され明日からまた三日間合宿のため家を空ける事となっている。
ピンポーン
「姉ちゃ~ん!お客さ~ん!」
「は~い!今行くー!…うわっ!」
ドタバタドタドタ…ゴンッ!
慌てて下に降りようと階段を降りると足を滑らせ勢いよく転落していった。
「またか…」
「大丈夫か?」
「いつもの事ですから気にしないでください!葉山さん、それより今日はどのようなご要件で?」
「今日はお姉さんに合宿の話と君達にこれ…」
期待に満ち溢れた眼差しの雪の弟妹である
優と夢の前にシュークリーム入の可愛いらしい箱を差し出す。
「うわぁ!可愛い!この中身なーに?」
「シュークリーム」
「やったー!私が一番先に食べる!」
「あ、こら!夢、お礼も言わずに持ち去るな!」
嬉しそうにシュークリーム入の箱を持ってる居間に走っていった夢に注意をしつつ慌てて葉山に向き直る。
「すみません、葉山さん!毎度、僕達のためにわざわざ手土産ありがとうございます…」
「いいよ、いいよ。俺が好んでしてる事だし…それにあの雪の弟と妹だからね」
優しい瞳で見つめる葉山に、優は嬉しそうな顔を向けた。
「僕達も葉山さんの事、お兄さんみたいで会えるだけで嬉しいです」
「おー、言うねー。さすが雪の弟だ」
撫で撫でと子犬を撫でるように優の頭を撫でる。
「あ、でも優くんは雪よりしっかりしてるなぁ…」
「あの姉の弟ですから」
未だに床で痛そうにお尻を摩る雪を見ながらそう言う優に苦笑いが零れた。
「あははは…」
「お兄ちゃーん!シュークリーム早く食べないとなくなっちゃうよ!」
優は、夢の声が聞こえすかさず踵を返し居間へと走っていく。
「しっかりしててもやっぱりまだ子供だな…」
「当たり前でしょ、まだ小学生なんだから」
お尻を摩り終わった雪が苦笑いを浮かべる葉山に答えながら玄関先に近づいた。
「まぁな…でもお前よりはガキじゃねぇな」
「ムッ…何よそれ!私の方が優より大人ですー!」
「大人じゃねーだろ。森の中で迷子になるわ、まんまと人に流されるわ…散々振り回してくれてるのに大人とはいえないよな?」
「うっ…そ、それは…」
図星を刺されて押し黙る雪の様子が余りにも可愛く見えついそのふわふわな髪に手が伸びる。
「ちょっ…何すんの…やめっ…」
嫌がる顔もまた可愛いな…
そんな事を思いながらわしゃわしゃと撫でる手をやめないでいると抵抗しても無駄だと諦めたのか半睨みで大人しくされるがままになる雪に思わず吹き出す。
「ふっ…あはははっ!」
「もう…からかわないでよ!」
「悪い悪い、そう膨れるなって…後で宿題手伝ってやるから」
「え!?いいの?」
途端に笑顔になる雪にまた吹き出しそうになるのを堪えながらも”ただし”と条件を突き出す。
「ただし、高菜おにぎり付きな?」
「あー、はいはいわかりました。作りますよ…背に腹は変えられない」
「なら、宜しい」
まんまと葉山のペースに乗らされた雪にしめしめとニヤつく顔を隠すこと無く雪の顔を見るとそれが癪に障ったのか益々不機嫌そうに顔をしかめる。
「いいから早く入って!いつまでも玄関先にいる訳にはいかないでしょ?合宿の話もあるだろうし…」
「ああ…お邪魔します」
何だか妙な気持ちだな…
前世とは言え妹である雪の家にわざわざお邪魔しますという感覚に違和感を覚えつつも一軒家の老化寸前のボロボロの家に足を踏み入れる。
床が軋む音や水漏れの音が微かに響く中、二階にある雪の部屋と階段を登り上がっていく。
キシキシ…
「結構がたきてんな、この家」
「まぁね。元から多少はがたきてたんだけど改築するお金もないしやばいとこはガムテープとかで補強するしかない状態なんだ」
「なるほどな…俺が工面してやろうか?」
「そういうのいらないから大丈夫。人にお金関係で頼りたくないの…いくられいにぃでもね」
「相変わらずだな、そういう頑固なとこ…」
「せめて、真面目って言ってよね」
たわいない話をしながら雪の部屋に着くとあまりの物の少なさに驚く。
「お前、こんなに部屋物少ないのか!?前世ではもっと…」
「だ~から!お金がないからこれがベストなんだって」
「お金がないからってこれは…」
変わりすぎだろ…
前世での雪…かなの部屋は沢山の可愛らしいぬいぐるみや小物で埋め尽くされていた。
だが、現在の雪の部屋は如何にも質素で必要最低限の物しかなかったのだ。
「ぬいぐるみとか前世では好きだったろ?」
「ぬいぐるみは今でも好きだけどそういうのあるなら全部夢にあげたいし、そういう買えるぐらいのお金があるなら生活費に全部回すよ」
葉山少しの間押し黙り何かを思いついたように再度口を開く。
「かな、お前の誕生日いつだっけ?」
「え?十一月十一日だけど…」
「ふ~ん…」
「な、何?」
「何でもねぇよ…」
素っ気なくそう言い座布団の上に座ると不服そうに頬を膨らませる雪に隣に座るよう促す。
「ほら、宿題するんだろ?」
「っ…馬鹿」
雪は、小さく悪口を言うと悔しそうな顔で流されるように葉山の隣に座る。
「フッ…」
その様子ににやにやとしているとそれに気づいた雪がムッとした表情で頬に手を伸ばす。
「痛っ!」
頬を引っ張る自分より小さな手が躊躇なく強く引っ張り続け降参とばかりに両手を上げるとゆっくりと引っ張る手を離す。
「眼鏡の下で変な顔してた気がしたからつい…」
「変な顔って…俺の顔はまともだって」
「まともならイケメン顔にならない」
真顔でそう言うとすくっと立ち上がり勉強机から宿題を取り出すと座布団の真ん中にある小さな机の上にそれらを広げる。
「国語と英語…お願いします」
少し照れたように俯きながら言う雪が可愛らしくつい悪戯心が湧く。
多分、妹だからでもあるのだろうな…
微笑気味に心の中でそう思いつつ机の上に片肘を付き雪の顔を覗き込むと不敵な笑で問いかける。
「…もう一度」
「っ…馬鹿!」
バシッ
っ~~~~!!
見事に平手打ちをくらい頬を摩るが真っ赤になっている雪の様子を見たら代償としては価値があると満足感が湧いた。
「ほら!始めるよ!」
「ああ…いくらでも教えてやる。お兄ちゃんが…」
その言葉の枷を俺はまだ外すつもりはない。
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