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一章 目覚めと出会い編

第4話 帰還

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 で1ヶ月後。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 俺は、7つの扉クリアし、7体の怪物と契約を結ぶことに成功した。

「やっと、だ」

 扉の中と現実には、時間の差が生じている。中にいたによると、時空間の風向きが違うとかなんとか……

 俺は実に4年間、門の中で“試練”を受けていた。

 最初に入ったのは「地獄の門」の言葉がお似合いの、黒炎渦巻く門だった。そこの試練を突破するのに、実に1年と3ヶ月の時を要した。

 他の試練に比べて比較的シンプルなこの試練に時間がかかったのは、ひとえに最初の試練であったからだ。
 後の試練では、前の試練で得た肉体や武具、力を使うことができるが、この時はまだ何もなかったからな。

 地獄の門をクリアして出てきた後、急いで部屋に戻ってスマホを見た時に1週間しか経ってなかった時は、夢かとも思った。

 次に入ったのは、7色で彩られた、目がチカチカする虹の門。

 ここでは、“鬼ごっこ”をやったわけだが……もう2度とやりたくない。

 ついで凶器の門、水の如く静寂の門、ハートの門と続き、最後は木の門と黄金の門をクリアして、俺は帰ってきた。

「肉体は……やっぱ4年で、4週間分しか経ってないな」

 俺は、自分の体を確認する。門の中では成長しなかったが、こっちでも同じようだ。やはり1年が1週間となっている。

「じゃあ、今日から2学期か? なんとか間に合ったっぽいな……」

 俺はコツ、コツと階段を上がっていく。

 目の前の出口の光。何年待ち望んだだろうか。
 俺は振り返って、閉ざされた7つの門に向かって頭を下げた。

「──ありがとう」

 中の様子はわからないが、心の通じた7人が、それぞれ反応を返してくれたように感じて、俺は実に体感4年ぶり(実際には1ヶ月)に、地上へ出た。

 カ────ッッ!!!!

 再びあの時のような光が部屋に満ち……ダンジョンに通ずる階段は、完全に消滅していた。


 本来ダンジョンは、攻略を禁じられている。ダンジョンは国の資源そのものだからだ。
 最も、攻略されたダンジョンなどほとんどなく、そもそも最下層までいける探索者がほぼいない。

 俺の家に発生したダンジョンは跡形もなく消えた。これで報告しなかっただのなんだのっていう厄介ごとには巻き込まれないようになるはずだ。

「えっと……!?」

 俺は安堵の息を吐いて、時計を見て──固まった。

  9/1、朝10時15分。

 始業式は終わっているだろう。

「まっず!?」

 俺は急いで支度して、学校に向かう。
 卒業できなければ探索者にはなれない。まあ、下級探索者にならなれるが、それでは

 俺が目指すのは当然、極級探索者……いや、“王級”探索者だ。

 だから、学校を退学になるわけにはいかない。

 俺は全速力で学校へと走る。

「うおっ!」

 ギュウンッ! と体が押し出される。常人では目に負えないほどのスピードだ。ちゃんと修行して培った身体能力はそのままのようだ。

 ……あの地獄も生ぬるい地獄が無駄だったらと思うと、死にたくなるわ。

 本来自転車で30分の学校にも、たった1分でたどり着けた。
 ほんとにバケモンみたいになってるな、俺。

「はぁ、はあ」

 俺は急いで学長室に向かう。

 門の中で、出た時用にもらった魔石を用意する。
 まだ体育館で始業式はやってるらしい。
 もう終わりのようだが。

 急いで向かうと、学長室の前に大きな袋を持った、一人の先生を見つけた。

 担任の鈴木だ。
 生徒達から集めた8月分の魔石を持っているのだろう。

「学園長、失礼しま──」

「ちょっと待ったアアアアア!!」

「なっ!?」

 俺は、なんとか鈴木が学園長室の扉を開ける瞬間、鈴木を止めることに成功した。
 だが、勢い余ってそのまま……

 ガシャアアアン!!

「「あ……」」

「騒がしいですよ! どうしたのです、か……」

 学園長室の扉に突っ込んだ俺と鈴木先生は持っていた魔石を盛大にぶちまける。それを見た学園長の言葉が、小さくなってゆく……


 やベェ。退学だけはなんとかして阻止せねば……!!


~~~~~




「……おもしれぇ。あいつ、まさか全部の門を攻略するとはな」

 ちよの力への渇望に、「」はフッと息をついた。



~~~~~

「何してるんですか?」

「いえ、あのですね……」

「あ! お前は! 魔石を持って来ず欠席していた宝晶千縁じゃないか!」

 学園長の言葉に、俺が弁明をしようとするが……鈴木がそれを邪魔する。

「ん? そうなのか? 魔石を持って来なければこの学校にはいられないと入学式で言ったはずだが……」

 学園長の目が据わる。

「いえ! 違いますよ! ほら、これです!」

 俺は持ってきたマジックバッグから直径が指ほどある翡翠色の魔石を5つ取り出した。

「……!?」

「グリフォンの魔石です…魔石値は235。5つで1000を超えますよね?」

 マジックバッグとは、皆の思う通りダンジョンで稀に算出される、見た目の何倍も物が入る鞄だ。

 まあこれはだが、それはどうでもいい。

「退学は勘弁してください! 遅刻してしまったことは謝ります! なんでもしますのでどうか……」

「がっ学園長……」

「……」

 学園長は言葉を発さない。よほど怒ってるのだろう。だが、まだ退学とは言われていない。まだチャンスはある……!

「これもつけますから! 退学だけは!!」

 俺は懐から拳大の赤い魔石を取り出した。

「……は?????」

 なんか鈴木がガクッと気を失った。
 学園長から発される怒気のオーラにでも当てられたのだろうか。
 俺に感じられないのは、俺が未熟すぎるからか……強すぎて感じないかだな。まあを乗り越えたんだし、前者ってことないと思うけど……驕りは最もやってはいけないことだ。

「えっと……千縁君だっけ? これ、どこで……」

 学園長が指をプルプルさせながら赤の魔石を指差した。

 まさか、盗んできたと疑われてる!?
 いやでも確かにそうか。このサイズの魔石を手に入れれる生徒がいたら覚えてるはずだもんな。てか、この学校に入ってないかもしれない。

 どうやって俺が夏休みに修行したことを伝えるか……

「えっと、夏休み一日中ダンジョンで修行をしまして。その時になんとかして倒したんですよね。おかげでかなり強くなれた気がします。どうか退学だけは!」

「わ、わかった……君が倒したんだな?」

「はい!」

 学園長は胸に手を当て、ふぅと息を吐くとキリッとした顔をした……気がする。
 俺今土下座してるから学園長の顔わからんし。てか顔知らんわ。始業式でも1番後ろの席だったから見えなかったもんな。

「わかった……なら試験を受けてもらう。それに合格できたら、2学期から学校に戻ることを許そう」

「……!! ぜひ! ぜひやらせてください!!」

 あぶねええええええ!! どうやら、試験に受かれば復学できるようだ。
 探索者学校の試験といえば、身体能力試験。スキルを持つ場合はそっちも見られるわけだが……はあんまし見せたくないんだよな……。

「……どんなスキルを持ってるのかな?」

 これには明確な、用意した答えがある。俺の上がった身体能力も誤魔化せるし一石二鳥よ!

「身体強化系です!」

 身体強化系。魔物を倒し魔力を吸えば勝手に肉体が強化されるため不遇とも言われるスキルだ。だが、一般的に魔力を吸って強くなった状態から更に、身体強化を発動できるということは汎用性が恐ろしく高いことを表している。

「……じゃあ、これを握ってくれるかな?」

 そう言って学園長が取り出したのは、握力測定器だった。
 握力か!!

「……これは、150kgある。これを最大まで片手で握れたら復学を許可しよう」

 おお、思ったよりも簡単だ!! まあ、ちゃんと魔石も出したし、ちょっと遅刻しただけだもんな、うん。これくらいが落とし所だろう。
 私学っちゃ私学だからワンチャン退学食らうかもと思ったがなんとかなったかな。

「ありがとうございます! でも、先生……」

「ん? 150kgくらいはいけるはずだができないとでも……」

 俺は焦って身体能力を全開にし、握力測定機を
 だがそんな焦ってる様子を見せないように、ゆっくりと言った。

「いえ、学園長、150kgは、舐めすぎですよ」
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